な、なんだこれは・・・!!?
エモーショナルライティング・・・!
ボーン、自身の中にあふれ出た感情を“言葉”として紡ぐつもりね・・・!
なんだ、このタイピング音のリズムは・・・!?
軽やかでいて、そして情熱的な・・・。
片桐さんのタイピング音が、まるで音楽のように聞こえてきます・・・!
ふふふ。
そう聞こえるのはね、ボーンが今、ムツミさんが書いた文章を感情を込めてリライトしているからよ。
感情・・・!?
ええ。
人の心を動かすためには「感情」が必要だから。
・・・!!
!?
!?
な、なんだ今の音・・・!?
あっ!!!
・・・!
ム、ムツミのPCのキーボードが・・・!!
壊れた・・・。
エモーショナルライティングにおけるボーンのタイピングの強さは、楽器をpp(ピアニッシモ)で奏でるかのように優しかったはず・・・!
おそらくは、あのノートPCの筐体が薄すぎたのね・・・!
え・・・。
お・・・俺のPCが・・・。
まだ11回もローンが残っているのに・・・。
はぁぁぁぁぁああああああああ!!!
!!?
ボーン、何をするつもり・・・!?
そのPCのキーボードはもう・・・!
CPUはまだ死んではいない。
音声入力!!?
なるほど!
その手があったわね!!
『ペラペラペラ・・・今、国内の主な観光地には、海外から多くのお客さまがお越しになることはご存じだと思います・・・ペラペラペラ』
お、おっさん、急に何か話し始めたぜ・・・!?
どうされたのかしら・・・!?
も、もしかして、ノートPCを壊してしまったショックでおかしく・・・。
ふふふ。
ボーンが持っているノートPCの画面を見てみなさい。
・・・!
す、すごい・・・!!
片桐さんが話すのと同時に、文字がどんどん入力されていきます・・・!!
音声入力ってあんな正確に文章が入力できたのか!!
シッ!
大きな声をあげると、あなたたちの声も入力されてしまうわよ。
あっ・・・。
りょ、了解。
『ペラペラペラ・・・素敵な人生の1ページを当館でお過ごしいただけるとうれしいです』
音声入力コンプリート。
お・・・終わったのか・・・!?
・・・。
ボーン、見事ね。
音声入力の場合、変換の精度を考え、どうしても平易な言葉を選ぶことにはなってしまうが、そこそこ読める文章にはなっているだろう。
・・・?
ふたりとも、ボーンが書いた文章を見てみて。
お、おう。
!!?
・・・す、すごい・・・!!
さっきの音声入力でこんな文章が入力されていたなんて・・・。
栃木の温泉旅館の選び方
(※このページは2016年9月20日に更新されました)
「都会を離れ、心からリラックスできる温泉旅館を探している」
この記事はそんな方へ向けて書いています。
はじめまして。
私は栃木の須原にて「みやび屋」という旅館を営んでいる、若旦那の宮本ムツミと申します。
栃木に生まれ、幼い頃から、この地で旅館を営む両親の背中を見て育ちました。
栃木のいいところは、東京から“ほどよい距離”にあるということ。
都心からわずか二時間ほどで都会の喧噪を離れ、山川に広がる四季折々の豊かな自然を満喫できます。
川のせせらぎ、森の音に耳を澄ませば、心からリラックスできるでしょう。
また、何といっても、栃木は関東最多の温泉を誇る県。
那須塩原や鬼怒川、日光といった歴史ある名湯・秘湯が多く、全国からは湯巡りの楽しみを求める温泉ファンが集います。
そんな栃木には、200を超える温泉旅館があることをご存じでしょうか?
この記事では、栃木の温泉旅館の中から、いくつかの旅館をエリア別にご紹介します。
旅館を営むプロならではの視点で、ガイドブックには書かれていないようなこともお話ししようと思います。
あなたの素敵な旅行の一助となれば幸いです。
それではまいります。
■目次
- 独自の宿泊プランを展開している旅館
- エリア別の旅館紹介
- 須原エリア
- 鬼怒川・川治・湯西川・川俣エリア
- 塩原・矢板・大田原・西那須野エリア
- 那須・板室エリア
- 日光・霧降高原・奥日光・中禅寺湖・今市エリア
- 宇都宮・さくらエリア
- 佐野・小山・足利・鹿沼エリア
- 馬頭・茂木・益子・真岡エリア
1、独自の宿泊プランを展開している旅館
先ほど、栃木には200を超える温泉旅館があるとお話ししました。
どの旅館もそれぞれの特徴があるため、あなたの希望に合った旅館がきっと見つかると思います。
ただ、「数が多すぎて、どの旅館がいいか選びきれない」という方のために、まずは独自の宿泊プランを展開している旅館をいくつかご紹介します。
1、湯守田中屋さんの『お一人様限定プラン』
最初にご紹介したいのは、塩原温泉にある旅館「湯守田中屋」さんが展開している『お一人様限定プラン』です。
このプランは次のような方にオススメです。
「日頃の忙しさから解放されて、たまにはひとりで優雅にのんびりしてみたい」
「大自然に囲まれた空間に身を置き、ひとりきりでじっくり考え事をしたい」
田中屋さんには、日本三大渓流露天風呂のひとつとして有名な野天風呂があり、その野天風呂から眺める景色はまさに絶景。
とくに「河原湯」は川まで手を伸ばせば触れる距離にあり、自然と一体になる気分を味わえます。
そして、その温泉体験をさらに忘れられないものにしてくれるのが、野天風呂へ向かうまでに下る320段の大階段。
大階段を一歩また一歩と降りるたびに、視界に広がる木々の風景ときらめく水面にちょっとした高揚感がかき立てられます。
そんな優雅な空間をあえてひとりきりで味わおうというプランが、田中屋さんの『お一人様限定プラン』。
ひとりだからこそ、何の気兼ねもなく、贅沢な時間を味わえます。
日々の疲れを癒やすのもよし、仕事のアイデアを考えるのもよし、非日常の空間があなたに心地よい安らぎを与えてくれるでしょう。
ちなみに、田中屋さんの温泉は、その昔、「効き目非ずは返金す」がうたい文句だったとか。
それくらい温泉の効能には自信があるということで、温泉療養を目的とする方には“薬いらずの湯”として親しまれてきました。
四つに分かれた野天風呂はすべて源泉かけ流し。
忙しい日常から離れ、名湯にゆったりと浸かるのはいかがでしょうか。
●3つの特長
- 日本三大渓流露天風呂のひとつとして有名な野天風呂がある
- 記憶に残ること間違いなしの320段の大階段
- 選び抜かれた地元・栃木の食材を使った炉端料理
●湯守田中屋さんの「お一人様限定プラン」に関する情報
客室:和室(Dタイプ客室)
料金:平日お一人様16,667円~(税別)
料理:2食付き
温泉:天然温泉・掛け流し。野天、渓流露天、館内展望風呂バラエティ豊かな源泉巡りOK
期間:通年
●湯守田中屋さんの所在地と連絡先
住所:〒329-2921 栃木県那須塩原市塩原6
TEL:0287-32-3232
※この情報は2016年9月20日時点での情報です。
詳細は公式サイトのチェック、もしくは旅館に問い合わせてご確認ください。
2、みやび屋の『親孝行プラン』
そして、ふたつ目にご紹介するのは、須原の温泉旅館「みやび屋」が展開している『親孝行プラン』です。
私が営む旅館で恐縮ですが、ほかの旅館にはないちょっと変わったプランです。
この『親孝行プラン』では、50歳以上のお客さまの場合、通常のお食事やお部屋がランクアップするほか、当館からの特別なプレゼントを差し上げています。
そのほか、このプラン限定の特別なアロマトリートメントもお受けいただけます。
このプランは次のような方にオススメです。
「日頃、親孝行がなかなかできていないので、自分の親に素敵な旅行をプレゼントしたい」
「心配りの行き届いた場所で、心おきなく羽を伸ばせる時間を自分の親に過ごしてほしい」
山々に囲まれた静かな温泉郷である須原にて、みやび屋は大正15年に創業しました。
みやび屋には、須原の地で三指に入る「美人の湯」と呼ばれる“お肌に優しい泉質”の温泉があり、女性のお客さまだけでなく、お子様やお年寄りの方からも愛されてきました。
そんなみやび屋が『親孝行プラン』に力を入れ始めた理由、そこには、私と女将である姉の姉弟ふたりの“ある思い”がありました。
実は私たち姉弟には両親がおりません。
みやび屋を営んできた尊敬する両親は、半年前、この世を去りました。
私たち姉弟を、優しく、そして時に厳しく育ててくれた両親。
その両親へ「そろそろ恩返ししたいな・・・」、そう思っていた矢先の出来事でした。
「孝行のしたい時分に親はなし」ということわざがあります。
これは、人生で親孝行ができる時間は限られているという意味のことわざです。
「私たちができなかった親孝行。みやび屋にご宿泊いただくお客さまにその機会を贈りたい」
その思いで始めた『親孝行プラン』。
素敵な人生の1ページを当館でお過ごしいただけるとうれしいです。
●3つの特長
- 「美人の湯」と呼ばれる、お肌に優しい泉質の温泉
- 男性にもご利用いただける極上のアロマトリートメントで心も身体もリフレッシュ
- 地元産のお野菜をふんだんに使った、ヘルシーで彩り鮮やかなお料理
●みやび屋の『親孝行プラン』に関する情報
客室:和室、和洋室
料金:平日お一人様16,000円~(税別)
料理:2食付き
温泉:天然温泉・掛け流し。露天風呂、高齢者のお肌にも優しいアルカリ性単純温泉
期間:通年
●みやび屋の所在地と連絡先
住所:〒329-0001 栃木県須原市須原3
TEL:0290-23-4567
※この情報は2016年9月20日時点での情報です。
詳細は公式サイトのチェック、もしくは旅館に問い合わせてご確認ください。
~以下略~
マジかよ・・・。
音声入力していただけなのに、コーディングまでされちゃってるぜ・・・。
ふふふ。
ボーンは音声入力を極めすぎて、音声入力でHTMLのタグ打ちまでできてしまうの。
(音声入力でタグ打ち・・・!?
やはり時給500万のWebマーケッターは次元が違う・・・!)
・・・・。
この文章、スラスラ読めちゃいます・・・!
まるで“生きている”みたい・・・。
生きている?
は、はい、心の中にスッと入ってくるというか、血が通っているというか・・・。
ふふふ、そう感じたのはね、ボーンが“感情”を注ぎ込んだからよ。
どんなものも感情を宿せば、生命をもつわ。
それが、あなたがボーンの文章を“生きている”と表現した理由かもね。
感情を・・・宿す・・・?
ボーンが先ほど書いた文章はね、次の3つのポイントを意識して書かれたものなの。
- 感情表現を入れ、自分事化による“共感”を誘発する
- 伝えたいことがきちんと伝わるよう、“見やすさ”や“わかりやすさ”にこだわる
- ファーストビュー(冒頭文)で、伝えたいことをまとめる
3つのポイント?
そうだ。
ひとつずつ説明してやろう。
■ポイント1
感情表現を入れ、自分事化による“共感”を誘発する
まずはポイント1。
「感情表現を入れ、自分事化による“共感”を誘発する」だ。
お前たちに聞くぞ。
“共感”という言葉の意味はわかるか?
えっ?
共感・・・ですか?
共感・・・共感・・・。
いろんなところで聞く言葉だけど、いざ意味を考えると、パッと説明できないな・・・。
だろうな。
なぜなら、“共感”という言葉ほどわかりづらい言葉はないからだ。
えっ・・・!?
共感とは“相手の感情を自分事として感じること”だ。
相手の感情を・・・。
自分事として感じる・・・!?
そう。
たとえば、あなたたちが何かの文章を読んでいて、その文章に共感したとするわ。
その理由はね、おそらく、その文章の中で紡がれていた感情を“自分事”として感じたからなの。
ボーンがさっきリライトした文章を振り返ってみるわね。
ボーンはあの文章の中で、いくつかの感情表現を入れていた。
■感情表現に当たる箇所
「栃木にはどんな温泉があるのか知りたい」
「都会を離れ、心からリラックスできる温泉旅館を探している」
「数が多すぎて、どの旅館がいいか選びきれない」
「日頃の忙しさから解放されて、たまにはひとりで優雅にのんびりしてみたい」
「大自然に囲まれた空間に身を置き、ひとりきりでじっくり考え事をしたい」
「日頃、親孝行がなかなかできていないので、自分の親に素敵な旅行をプレゼントしたい」
「心配りの行き届いた場所で、心おきなく羽を伸ばせる時間を自分の親に過ごしてほしい」
「そろそろ恩返ししたいな・・・」
「私たちができなかった親孝行。みやび屋にご宿泊いただくお客さまにその機会を贈りたい」
!!
これらの感情の中には、“話者”であるムツミさんの感情だけでなく、旅館に泊まる人たちの感情なども入っている。
いろいろな感情を入れることで、読み手が「ああ、この気持ちわかる、わかる」と共感できる箇所をたくさん用意していたの。
なるほど・・・!
この「」(カギ括弧)で囲まれた箇所がポイントだったんですね・・・!
そうだ。
話し言葉をカギ括弧で囲むことで、感情表現が視覚的にもわかりやすくなる。
また、ボーンは共感を誘発するために、もうひとつテクニックを入れているの。
それが“話者の宣言”よ。
話者の宣言・・・?
■話者の宣言に当たる箇所
私は栃木の須原にて「みやび屋」という旅館を営んでいる、若旦那の宮本ムツミと申します。
栃木に生まれ、幼い頃から、この地で旅館を営む両親の背中を見て育ちました。
「この感情は誰が発したものか?」
それがわからないと、感情は読み手にうまく伝わらない。
この文章の書き手、すなわち話者がどういう人間なのかを最初に伝えておくことで、読み手はその話者を想像しながら感情に触れることができる。
感情は人に紐づく。
“誰”がその感情を発しているかで、その感情のニュアンスは変わってくる。
つまり、話者を明らかにすることで、読み手の共感を助ける効果があるのだ。
読み手の共感を助ける効果・・・!
ちなみに、読み手にとっての共感ポイントが増えれば増えるほど、文章は読まれやすくなる。
なぜなら、“自分事”として感じる要素が増えるわけだからな。
“自分事”として感じる要素が増えれば、「この文章は自分にとって関係がありそうだ」という気持ちになり、つい読み進めてしまうのだ。
へええ・・・。
そうそう、ふたりとも、「カクテルパーティー効果」って聞いたことないかしら?
カクテルパーティー効果・・・?
ええ、「カクテルパーティー効果」とは、お酒の席でたくさんの人が談笑していたとしても、自分が興味のある話や聞き覚えのある話に関しては自然と耳に入ってくる現象のことを指すの。
たしかに、飲み会とかで、誰かが自分の知っている話題について話していると、その会話の内容が耳に入ってくることは多いな・・・。
ボーンが文章の中に感情表現を入れ、共感ポイントを多く配置したのも、その効果を狙ってのことよ。
自分にとって共感ポイントの多い文章は、つい続きが気になって読み進めてしまうのよ。
たとえば、日本でいえば、「2ちゃんねるのまとめサイト」や「ガールズちゃんねる」といったサイトは人気よね。
あれはね、いろいろな人の感情的なコメントが集まっていて、読み手の共感ポイントが多いからなの。
な、なるほど・・・!
オレもつい2ちゃんねるのまとめサイトは見ちゃうからな・・・。
その理由がようやくわかったぜ・・・。
ただし、そんな共感ポイントも、文章の中で目立つように演出されていないと見落とされてしまう。
だから、話し言葉をカギ括弧で囲んでわかりやすくしたってわけだ。
そうだ。
つまり、どんな文章表現も“見た目”の演出が重要といえる。
そこで次のポイント2だ。
■ポイント2
伝えたいことがきちんと伝わるよう、“見やすさ”や“わかりやすさ”にこだわる
どんな情報や感情も伝わらなければ意味がない。
そこで重要となるのが、“情報や感情の見せ方”だ。
情報や感情の見せ方・・・!
ああ。
とくにライティングについていえば、文章の“見やすさ”や“わかりやすさ”には細心の注意を払え。
文章の“見やすさ”や“わかりやすさ”・・・。
(そういや、オレ、そのあたりあんましこだわってこなかった気がするな・・・)
ここでお前たちに質問する。
“文章を読んでもらうために重要なこと”を3つ挙げてみろ。
文章を読んでもらうために重要なこと・・・?
ひとつ目はあれじゃねーか。
さっきボーンのオッサンが言った、“読み手にとって自分事になる感情を取り上げる”ってことじゃねーか?
そうだ。
それ以外はどうだ?
え・・・と。
たとえば、“思わず読み進めたくなるようなおもしろさとかワクワク感”でしょうか?
それも正解だ。
残りひとつはどうだ?
うーん・・・。
あ!わかった!
読まざるをえない状況にもっていくとか!?
たとえば、試験日前とか、イヤでも参考書を読んだりするもんな。
・・・たしかにそれも理由のひとつとは言えるが、ネガティブなアプローチだな。
よかろう。
お前たちの回答のうち、ふたつは正解していた。
あらためて、“文章を読んでもらうために重要なこと”を3つ教えてやる。
それはこの3つだ。
■文章を読んでもらうために重要な3つのこと
- 読み手にとって“自分事”になる感情や情報を取り上げる
- 思わず読み進めたくなるように、“適度な興奮”を感じさせる
- 読み手の脳の負担を減らす
“読み手の脳の負担を減らす”・・・!?
そうだ。
人は文章を読むとき、脳のエネルギーを消費する。
その脳のエネルギーをいかに消費させず、読み手にラクをさせられるかがポイントだ。
はぁああああああああ・・・!!!
えっ!!?
ま、またなんか技を出すのかよっ!!
ど、どうしよう!!
これ以上風圧が起きちゃうと、うちの旅館の柱が・・・!!
・・・。
って本を出しただけじゃねーか!!
2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者「ダニエル・カーネマン」氏の著書「ファスト&スロー」ね!
ダニエル・カーネマン氏の書いた「ファスト&スロー」は、人間がとる行動は直観的かつ感情的な要因によるものが大部分であるということを説いたベストセラー書籍である。
以下は出版社による解説の引用だ。
人間の我々の直感は間違ってばかり?
意識はさほど我々の意思決定に影響をおよぼしていない?
心理学者ながらノーベル経済学賞受賞の離れ業を成し遂げ、行動経済学を世界にしらしめた、伝統的人間観を覆す、カーネマンの代表的著作。
2012年度最高のノンフィクション。待望の邦訳。
お前たち、この本を読んだことはあるか?
えっ・・・?
こんな難しそうな本、読んだことねーよ・・・。
だろうな。
しかし、ライティングのスキルを上げるためには、読むべき一冊だ。
この本にはオレのライティングノウハウの原点が詰まっている。
えっ・・・!?
片桐さんのライティングノウハウの原点が・・・!?
この本に書かれているのは、“人間はどのように考え、行動するのか?”という本質的な概念だ。
著者の「ダニエル・カーネマン」氏はこう言っている。
人間の行動は、脳の と「システム2」というふたつの思考によって行われていると。
「システム1」と「システム2」・・・!?
な、なんだそりゃ、パソコン用語か何かの言葉か?
ヴェロニカ、説明を頼む。
OK、ボーン。
ふたりとも、「システム1」と「システム2」というふたつの思考について説明するわね。
■「システム1」と「システム2」の思考について
行動経済学に関する書籍「ファスト&スロー」の著者「ダニエル・カーネマン」氏によると、私たちの脳には「システム1」と「システム2」というふたつの思考があり、何かの情報を処理する際には、このふたつの思考が順に作動するといわれているの。
脳に入ってきた情報は、まず「システム1」という思考が処理する。
この「システム1」とは、物事を直観的に素早く判断するために自動的に高速で動く思考のこと。
たとえば、赤い標識を見たときに、それが注意や警告を表すものだとすぐに判断できたり、背が大きくて体格のいい人と出会ったとき、力が強そうに感じるのは、この思考によるものよ。
そして「システム1」で処理された情報は、次に「システム2」という思考へ移ることがある。
この「システム2」とは、「システム1」のあとからゆっくりと動き、物事を慎重に判断・計算しようとする思考のこと。
たとえば、数学の複雑な計算式や、難しい言葉がたくさん出てくる文章などは、その内容を理解するのにどうしても時間がかかる。
こうしたものは、「システム2」によって、ゆっくりと処理されるの。
な、なるほどです・・・!
(話が急に難しくなってきた気がすっけど、今のところはなんとか理解できてるぜ)
よし、ここからが本題だ。
これらふたつの思考の存在を理解できていれば、次のこともわかってくる。
“読み手の脳の負担を減らす”ためには、この「システム1」と「システム2」に配慮した文章を書かねばならぬ、と。
「システム1」と「システム2」に配慮した文章・・・!?
ああ、そうだ。
「システム1」に配慮した文章とは“心理的負担が下がるくらいに見やすい文章”。
そして、「システム2」に配慮した文章とは“論理的にわかりやすい文章”を指す。
まとめると次のようになる。
■「システム1」と「システム2」の思考の違い
●システム1
脳への負担を下げるために自動的に高速(fast)で動く思考。
物事を直観的に理解しようとする。
【システム1に配慮した文章】
心理的負担が下がるくらいに見やすい文章
●システム2
複雑な計算など、注意力を要する作業が必要な際に、慎重かつゆっくり(slow)動く思考。
物事を論理的に理解しようとする。
【システム2に配慮した文章】
論理的にわかりやすい(理解しやすい)文章
たとえば、オレは先ほどのリライトで以下のことに配慮した。
■先ほどのリライトで配慮したポイント
●システム1への配慮
- 改行と行間に気を配り、心地よいリズムを意識した
(句点(。)が出てくるたびに改行し、文頭を揃えた) - 漢字とひらがなの含有率を調整した
(漢字だらけの文章は難しく感じられる一方、ひらがなが多い文章は平易に感じられる。そのため、ちょうどいいバランスを意識した) - 「この」「その」「あの」などの指示代名詞を減らした
(文章を読み飛ばした際、主語を見失わないようにした) - 箇条書きを用いて、要点を整理した
(“数字”を用いた箇条書きを用いることで、読み手に「これだけ憶えておけばいい」と感じさせ、脳の負担を軽減させた) - 情報をカテゴライズして整理した
(どこに何が書かれているかが一目でわかるように、見出しなどを用いて、文章構成を整理した) - いらない言葉や表現はカットし、文章が不必要に長くならないようにした
(ただし、読み手の知的興奮につながるような文章はあえて残しておくほうがよい) - 感情表現を入れ、自分事化による共感を誘発した
●システム2への配慮
- 論理飛躍、論理破綻がないよう、論理的な文章を意識した
- 読み手にとってわからない言葉がないよう、言葉選びは慎重に行った
す、すごい・・・。
あの一瞬でこんなに細かな配慮が行われていたなんて・・・!
ひとつ目の“改行と行間に気を配り、心地よいリズムを意識した”って気になるな・・・。
ふふふ。
ムツミさん、ミュージシャンだから、“リズム”って言葉に反応したのね。
いいわ、教えてあげる。
さっきのボーンが書いた文章を例に説明するわね。
改行や行間が配慮されていない文章と、配慮された文章とを見比べてみて。
■改行や行間が配慮されていない文章
はじめまして。私は栃木の須原にて「みやび屋」という旅館を営んでいる、若旦那の宮本ムツミと申します。栃木に生まれ、幼い頃から、この地で旅館を営む両親の背中を見て育ちました。栃木のいいところは、東京から“ほどよい距離”にあるということ。都心からわずか二時間ほどで都会の喧噪を離れ、山川に広がる四季折々の豊かな自然を満喫できます。川のせせらぎ、森の音に耳を澄ませば、心からリラックスできるでしょう。また、何といっても、栃木は関東最多の温泉を誇る県。那須塩原や鬼怒川、日光といった歴史ある名湯・秘湯が多く、全国からは湯巡りの楽しみを求める温泉ファンが集います。
■改行や行間が配慮された文章
はじめまして。
私は栃木の須原にて「みやび屋」という旅館を営んでいる、若旦那の宮本ムツミと申します。
栃木に生まれ、幼い頃から、この地で旅館を営む両親の背中を見て育ちました。
栃木のいいところは、東京から“ほどよい距離”にあるということ。
都心からわずか二時間ほどで都会の喧噪を離れ、山川に広がる四季折々の豊かな自然を満喫できます。
川のせせらぎ、森の音に耳を澄ませば、心からリラックスできるでしょう。
また、何といっても、栃木は関東最多の温泉を誇る県。
那須塩原や鬼怒川、日光といった歴史ある名湯・秘湯が多く、全国からは湯巡りの楽しみを求める温泉ファンが集います。
読みやすさが全然違います・・・。
ふふふ、そうなの。
改行や行間を意識することで、文章にリズムが出てグッと読みやすくなるのよ。
ムツミさんならわかると思うけれど、音楽の世界に「休符」のない曲はないわよね。
休符のない曲は、聴いている側がしんどくなってしまう。
文章も同じ。
休符のない文章、つまり、行間のない文章は読む側を疲弊させてしまうのよ。
なるほど!
すごくよくわかるぜ。
そしてボーンは、句点(。)が出てくるたびに改行している。
そうすることで、文章は“頭”が揃って、一気に読みやすくなるの。
今、スマートフォンを使って文章を読む人が増えているわよね。
スマートフォンは幅が狭い分、1行あたりの文字数も少なくなるわ。
そうなると、文章の折り返しが頻繁に行われて、各文章の開始位置が分かりづらくなったり、自分がどこまで読んだかを見失いやすくなるのよ。
だから、ボーンはあえて句点(。)が出てくるたびに改行しているわけ。
へええ・・・。
たしかに、そっちのほうが読みやすそうだな・・・。
あっ・・・でも・・・。
毎回、句点(。)で改行していると、文章が縦に長くなりすぎちゃう気が・・・。
ふふふ、大丈夫よ。
スマートフォンを使っている人の多くは縦のスクロールの動きに慣れているわ。
縦読みのマンガとか、2ちゃんねるのまとめサイトとか、縦にすごく長いでしょ?
だから、ちょっとやそっとページが縦に長いからって心配しなくてもいいの。
ただ、注意しなければいけないことは、縦のスクロールに慣れている人たちは、画面をどんどんスクロールして文章を読み飛ばす可能性があるってことね。
そうなってしまうと、大切な文章も読み飛ばされるリスクがある。
だから、そうならないよう、ボーンは句点(。)のたびに改行して、文章の開始位置を左端に揃え、文章のかたまりが少しでも視界に入りやすいように工夫していたの。
そうだったんですね・・・!
理解できました!
ちなみに、ボーンがコンサルティングしているサイトの中には、滞在時間が10分を超えているページもあるのよ。
じゅ、10分・・・!!!
これがそのデータか・・・。
ほ、本当に10分読まれてる・・・。
でしょ?
多分、10分といえば、テレビのサザエさん1話分よりも長いわね。
つまり、長い文章だからといって、けっして読まれないわけではないってこと。
もちろん、必ずしも長ければ長いほどいいというわけではないけれど、長く読んでもらえるということは、そのぶん読み手との接触時間が増えるわ。
接触時間が増えるということは、相手の記憶にも残りやすくなる。
だから、文章が長いことにもきちんとメリットがあるのよ。
ただ、長い文章をきちんと読んでもらうためには、さっきボーンが話した“見やすさ”や“わかりやすさ”に配慮したライティングをおこなう必要があるけれど。
なるほど・・・。
音楽でいえば、“1曲丸々しっかり聞いてもらうためにはどうアレンジすればいいか?”ってことか。
いい例えね。
そのとおりよ。
あと、もうひとつ気になっていることがあるんだ。
ボーンのオッサンが挙げたポイントの3つ目さ。
“「この」「その」「あの」などの指示代名詞を減らした”ってのはどういうことなんだ?
それは説明するよりも実例を見てもらったほうが早いわね。
さっきボーンがリライトした文章の「みやび屋」の紹介文を読んでみて。
あの文章では、「みやび屋」という主語を使う際に、「この旅館」や「当館」などの指示代名詞を使っていないでしょ?
ボーンの書いた文章はすべて、「みやび屋」という固有名詞を含んだ表現に置き換えられている。
これは、読み手が“文章の途中から読んでも、主語が何を指しているのかをわかりやすくするため”なの。
■「みやび屋」の紹介文
山々に囲まれた静かな温泉郷である須原にて、みやび屋は大正15年に創業しました。
みやび屋には、須原の地で三指に入る「美人の湯」と呼ばれる“お肌に優しい泉質”の温泉があり、女性のお客さまだけでなく、お子様やお年寄りの方からも愛されてきました。
そんなみやび屋が『親孝行プラン』に力を入れ始めた理由、そこには、私と女将である姉の姉弟ふたりの“ある思い”がありました。
実は私たち姉弟には両親がおりません。
みやび屋を営んできた尊敬する両親は、半年前、この世を去りました。
私たち姉弟を、優しく、そして時に厳しく育ててくれた両親。
その両親へ「そろそろ恩返ししたいな・・・」、そう思っていた矢先の出来事でした。
そんなところにまで気を遣ってるんだ・・・。
細けえ・・・。
こんなのはまだまだ序の口だぞ。
「システム1」への配慮はこだわればこだわるほどに奥が深い。
そして、「システム1」への配慮と同様に重要なのが、「システム2」への配慮だ。
システム2への配慮・・・!?
その配慮とは、“論理的な文章を書く”ということだ。
論理的な文章!?
そうだ。
読みづらい文章というのは、見た目の読みづらさだけでなく、“論理的なわかりづらさ”が影響していることが多い。
論理的なわかりづらさ・・・?
論理的なわかりづらさとは、文章などを読んだ際に「なぜ?」という疑問が残ってしまう状況のことを指す。
「なぜ?」という疑問・・・?
たとえば、今からあなたたちにふたつの文章を見せるわ。
どちらのほうがわかりやすいか答えてもらえる?
●Aの文章
検索順位を上げるためには、ユーザー目線でコンテンツをつくる必要がある。
●Bの文章
検索順位はGoogleのアルゴリズムで決まっている。
そのGoogleのアルゴリズムは、Googleを使うユーザーを増やすために、検索ユーザーの満足度を高めるコンテンツを評価する。
つまり、Googleの検索結果で上位表示するためには、「Googleを使うユーザーがどんなコンテンツを求めているか?」を考えてコンテンツをつくるといい。
・・・。
「A」の文章のほうがわかりやすい気がするけど・・・。
私も「A」の文章のほうがシンプルでわかりやすいと思いました。
そうだと思ったわ。
じゃあ質問を変えるわね。
もし、“SEOに詳しくない人”がこれらの文章を見た際、どちらの文章がわかりやすいと感じるかしら?
SEOに詳しくない人・・・?
・・・えっと・・・。
おそらく、「B」の文章じゃないでしょうか?
SEOに詳しくない人の場合、検索順位が上がる仕組みをよくわかっていないと思うので、「A」の文章だと言葉が足りないような気がしました。
(・・・という私自身、片桐さんたちに教えてもらうまでは、SEOについて全然わからなかったんだけど・・・)
サツキさん、正解よ。
SEOに詳しい人は「A」の文章をわかりやすく感じ、詳しくない人は「B」の文章をわかりやすいと感じるでしょうね。
実は“わかりやすい文章”という定義はとっても曖昧なの。
文章を読む人によって、“何がわかりやすいか”の基準は変わってくるのよ。
・・・!
わかりやすい文章とは、読み手にとって「なぜ?」という疑問が残らない文章。
その文章を作るためには、書き手は読み手に対して、適切な「論理」を与えないといけない。
適切な論理・・・?
(うわああ・・・なんかまた難しくなってきやがった・・・)
あなたたち、今、ボーンが言った「論理」という言葉を聞いて、難しそうだと思ったでしょ?
あ・・・え、えと・・・。
・・・おう、「論理」という言葉が出てくるなんて、なんだか国語の授業を受けてるみたいだぜ・・・。
ふふふ。
そうだと思ったわ。
でも、安心して。
あなたたちが難しく感じている「論理」という言葉は、本当は全然難しくないから。
えっ!?
論理とは、“物事の法則的なつながり”であり、「人と人との間に築く“理解の架け橋”」のことを指す。
理解の架け橋・・・!?
そうだ。
論理的な文章とは、相手の心との間に“理解の架け橋”が築かれている文章を指す。
どんな主張も、相手の心との間に橋が架からないと伝わらない。
論理というのは、相手に理解してもらうために築く“言葉の架け橋”のことなのだ。
たとえば、論理が成立している文章の場合、相手との間に“理解の架け橋”が築かれるため、こちらの主張を相手に理解してもらえる。
しかし、論理が飛躍していたり破綻したりしている文章の場合、相手との間の“理解の架け橋”が足りず、こちらの主張を相手にうまく伝えられない。
逆に、論理がしっかりしている場合は、相手との間にしっかりとした“理解の架け橋”が築かれるため、こちらの主張を相手にスムーズに理解してもらえる。
・・・!
ということは、片桐さんは先ほどリライトされた文章で、その論理的な文章を意識されていたということでしょうか?
ああ、そうだ。
論理的な文章を書くということは、脳の「システム2」に配慮するということ。
どれだけ見やすい文章も、いざ読み始めたら論理飛躍や論理破綻が気になるようでは、最後まで読んでもらえない。
つまり、論理的なわかりやすさは、文章を完読してもらうために必要なことなの。
音楽にたとえるのなら・・・。
調性の合っていないメロディーやコード進行が続けば、聴く側が苦痛を感じ、最後まで聴いてもらえなくなる。
音楽における多くのメロディーは、感情的に作られているように見えて、実際は楽典という論理に沿って作られている。
それと同じだ。
・・・!
ちなみに、論理的な文章を意識していれば、「共起語」と呼ばれる言葉もたくさん入る。
共起語とは、“あるテーマについて語る際、自然と会話に登場しやすい言葉たち”のことだ。
この共起語が入っている文章はSEOにおいて評価されやすいといわれている。
つまり、論理的な文章を書けば、それがそのままSEOに強い文章になるのだ。
論理的な文章はSEOに強い・・・!
ここでもう一度、最初に伝えたことをおさらいしておくわね。
ボーンが行ったリライトは以下の3つのポイントを意識していたわ。
- 感情表現を入れ、自分事化による“共感”を誘発する
- 伝えたいことがきちんと伝わるよう、“見やすさ”や“わかりやすさ”にこだわる
- ファーストビュー(冒頭文)で、伝えたいことをまとめる
はい!
この3つのポイントのうち、「1」と「2」については理解できました。
あとは「3」が残ってるな。
よし。
ポイント3についても教えておいてやろう。
3つ目のポイント、“ファーストビュー(冒頭文)で、伝えたいことをまとめる”について説明しておく。
ありがとうございます・・・!
■ポイント3
ファーストビュー(冒頭文)で、伝えたいことをまとめる
3日前にオレがアドバイスした際、SEOに強いコンテンツで必要なのは“ユーティリティ要素”を意識することだと教えたな。
ああ。
ユーティリティ要素を意識するためには、“情報の見せ方”を工夫することが大事だってことも憶えてるぜ。
よし。
今から話すポイントは、まさにその“ユーティリティ要素”を高めるための方法だ。
記事を書く際は、読み手が最初に目にするエリア、すなわち「ファーストビュー」にて、読み手が必要としている情報を可能なかぎり掲載しろ。
読み手が必要としている情報を掲載する・・・!?
たとえば、オレがさっきリライトした文章の冒頭文を見てみろ。
この冒頭文では、記事のユーティリティ要素を高めるための演出が施されている。
何か気付くことはないか?
あっ・・・!
最初に(※このページは2016年9月20日に更新されました)という更新日の記載があります!
そのすぐ下には、この記事が誰に向けて書かれたものか?という記載もあるな。
あとは・・・。
最後に設置された「目次」を見ると、この記事にどんなことが書かれているのかが一目でわかります・・・!
ふふふ。
いい感じね。
よし。
オレが冒頭文で意識していたポイントをまとめてやろう。
■冒頭文で意識したポイント
- 記事の更新日を記載
(情報を求める人の多くは“新しい情報”を求めるため、記事の内容が新しい情報であることを明示する) - 記事が“誰に向けて”書かれた記事なのかを書き、読み手の“自分事化”を強める
- 記事に書かれている内容を簡潔に要約
(Webで記事を読む人たちは、その記事に自分がほしい情報があるかどうかがわからないとすぐに離脱する。そのため、その記事に何が書かれているのかを冒頭でわかりやすく伝える) - 記事にどんな情報が書かれているかがわかるように、「ページ内リンク」としての「目次」を設置
(情報量が多い記事の場合、「どこに何が書かれているのか?」がわからないとユーティリティ要素を担保しにくい。そのため、リンク付きの「目次」を使い、記事で扱う主要な情報を伝え、読み手が求める情報にすぐ移動できるようにする) - 話者を明らかにし、読み手が書き手の感情に“共感”しやすい状態をつくる
へええ・・・!
これがユーティリティ要素を意識するということ・・・。
ユーティリティ要素を意識するときはね、自分が読み手の気持ちになって、“どんなふうに情報が掲載されているとうれしいか?”を考え抜くといいの。
“どんなふうに情報が掲載されているとうれしいか?”・・・!!
たとえば、「更新日」の記載なんてカンタンに対応できることよね。
でも実際は、この「更新日」の記載について配慮されている記事は驚くほど少ないの。
更新日を記載することで、「この記事で扱っている情報はしっかり更新されている」という主張ができる。
自分が読み手の立場だったら、情報は常に更新されているほうがうれしいわよね。
もちろん、取り扱う情報のジャンルによっては、更新なんて必要のない情報もあるけれど。
でもね、人は数字の力に弱いの。
「更新日」の日付に意識が引っ張られてしまうのよ。
だから、古い更新日がずっと掲載されているようなら、いっそのこと、更新日の表記はとったほうがよかったりもするの。
なるほど・・・。
ちなみにこの「更新日」の記載、最近のゲーム攻略サイトなどでは、ページのタイトルなどにも積極的に入れられているわ。
更新日の表記を入れることで、検索結果上のタイトルのクリック率を上げようとしているみたいね。
つまり、それくらい、更新日を気にする検索ユーザーは多いってことよ。
へええ・・・!!
オレたちの説明はこれで終わりだ。
今後、何かの記事を書く際には、さっき教えたポイントを意識するんだな。
片桐さん、ありがとうございました・・・!!
すごく勉強になりました・・・!!
いやー、記事って奥が深いんだな。
オレも今後、記事を書く際には・・・って・・・。
ああああああ!!!
そ、そうだった!!!
おっさん、俺のノートPCを破壊しちまったんだ・・・。
・・・。
か、片桐さんも悪気があったわけではないし、そもそも、片桐さんのコンサルティング料って、ノートPCが何台あっても払えないくらいの金額なのよ。
それをサービスしてくださったんだから、ノートPCの一台くらい、だ、大丈夫じゃない?
・・・。
うちのホームページを更新してもらうときは、私のPCを使ってもらえばいいから。
ほら、ムツミ。
・・・。
・・・。
キーボードの破壊は不可抗力だった。
すまん。
・・・これを渡しておこう。
ボーンはそう言うと、脱いでいたジャケットの脇から、何かを取り出した。
これは・・・!?
外付けキーボードだ。
お前のPCのCPUは壊れていない。
このキーボードをつなげれば、普段の仕事もそれほど支障なくできるだろう。
(あのジャケットの脇にあんなキーボードが入っていたなんて・・・)
・・・な、なんだかイカツイキーボードだな・・・。
・・・!!?
むぐぎぎぎぎぎ!!
お、重てえええ!!!
なんだ、このキーボード・・・!?
言い忘れていた。
そのキーボードは10kgある。
10、10kg・・・!!?
な、なんでできているんだ、このキーボード・・・?
超硬合金だ。
その黒いフォルムの下は、弾丸をも跳ね返す超硬合金でできている。
超硬合金・・・!!?
10kgはそう重くはないと思っていたのだが・・・。
使えそうにないのなら、返してもらってもいいぞ。
ボーン、10kgといっても、今の若い子の筋力じゃ重いのかもしれないわよ・・・。
(くっ・・・、ここでなめられちゃあ、漢(おとこ)がすたる・・・!)
ヴェ、ヴェロニカさん!
このキーボード、ぜ、全然重くないですよ!
こんなの普段から重いギターを持ち歩いていたオレからすると、朝飯前です。
う、う~ん、この重量感気に入ったぜ!
ありがとよ!
じゃ、じゃあ、しばらくはこのキーボード使っておく・・・かな・・・。
なにーっ!!!!?
ボーンが、みやび屋のWeb集客のコンサルティングをしているだと・・・!?
は、はいっ・・・!!
まさかボーンのやつが関わっていたとは、私も驚きました・・・。
・・・く・・・くくくく・・・。
遠藤様・・・!?
(・・・わ、笑ってらっしゃる・・・?)
井上よ・・・。
こんなに楽しいことはないぞ。
あの憎きボーンに復讐するチャンスが巡ってきたのだからな。
遠藤様・・・!
フフフ・・・。
ボーン・片桐よ。
今度はうまくいかんぞ・・・!
旅行業界はすでに私の新会社「バイソンマーケティング」が制作したコンテンツでほぼ埋め尽くされている・・・!
バイソンマーケティングのコンテンツを目の当たりにし、私の真の恐ろしさを知るがよい・・・!!
ふははははは!!!
はーっはっはっはっは!!!
それにしても、一夜明けて読み返してみても、文章が大きく変わったよな・・・。
あのオッサン、結局、ページの文章を丸ごと変えちまったもんな・・・。
あの一瞬でここまでリライトするって、どんな脳みそもってるんだろ・・・。
ム、ムツミ!!
・・・?
アネキ、どうしたんだ?
予約が・・・予約が・・・。
よ、予約がどうしたって言うんだ?
予約が5件も入ってるの!!
予約が5件・・・!!?
ムツミはそう言うと、慌ててノートPCを開き、みやび屋のサイトのGoogle Analyticsを確認し始めた。
ほ、ほんとだ・・・。
何が起きたんだ・・・!?
・・・!?
この流入元・・・。
昨日ボーンのオッサンがリライトした記事経由じゃねーか・・・!
あのオッサン・・・ただ者じゃねー・・・!
グスッ・・・・、グスッ・・・。
あ、アネキ!!?
泣いてるのかよ・・・!?
だって・・・。
こんなにたくさんの人に予約していただけたのは久々なんだもの・・・。
アネキ・・・。
サツキちゃん、いるかい?
??
アネキ、誰か来たようだぜ。
?
あっ!
三桜館の旦那さん!
三桜館・・・?
うちの近所で昔から経営されているホテルさんよ。
以前から仲良くさせていただいているの。
おお、サツキちゃん。
いてくれてよかった。
三桜館の旦那さん、今日はどうされたんですか?
サツキちゃん・・・。
実はなあ・・・。
うちのホテル、閉めることにしたんだ。
えっ・・・!?
最近、このあたりはめっきり観光客が減ったじゃないか。
しかも、近くにあんなに立派なレジャーホテルができてしまったとあっちゃ、うちみたいな古いホテルは商売上がったりだよ。
そのレジャーホテルって、もしかして・・・。
タパホテル!?
ああ、まさにそのタパホテルさ・・・。
この須原の地は東京から離れていて、東京オリンピックの恩恵をあまり受けられない。
須原全体の観光客が減っているっていうのに、あんな立派なレジャーホテルができてしまっちゃあ、太刀打ちできないよ。
うち以外も危なそうだし、サツキちゃんところも大変かもしれないけれど、あんなホテルなんかに負けないでおくれよ。
旦那さん・・・。
くそーっ!!
あのヤン・タオとかいうやつ、この須原をどうするつもりだってんだ!?
本当にわけわかんねえ・・・!!
もしかすると、ヤン氏が須原にホテルを立ち上げた理由は・・・。
理由・・・!?
この「みやび屋」だけをつぶそうとしているのではなく、須原全体をつぶそうとしているのかも・・・。
えええ!!?
どうやら、みやび屋の売り上げ改善のためには、おまえたちのサイトのチューニングだけでは足りないようだな。
須原の地を盛り上げる必要があるってことね。
そ、そんなのどうすりゃいいんだ!?
世に広く伝えればいい。
この須原の魅力を。
世に広く伝える・・・!?
作るぞ。
「オウンドメディア」を!
オウンドメディア!!?
ボーンのリライトによって、みやび屋の集客は改善したかに見えた。
しかし、須原では、老舗ホテルや旅館が次々と倒産の危機に瀕していた・・・!
果たして、須原を救う手立てはあるのか?
ボーンが語る「オウンドメディア」とは一体・・・!?
次回、沈黙のWebライティング第4話。
「愛と論理のオウンドメディア」
今夜も俺のタイピングが加速するッ・・・!!