遠藤ッ!!!
これはどういうことアルかッ!!?
は、はあ・・・。
(お、おい!!
井上、どうなってるんだ!?)
(あ、あの・・・ですね、私が調査したところによりますと、どうやらバズボンバーがみやび旅に寄稿した記事のようです・・・)
(はあああ!?
バ、バズボンバーだと・・・!!?)
おいっ!!!
遠藤、井上!!
お前たち、私の話を聞いているアルかッ!?
はっ、はいっ!!
「なぜ、あのキュレーションサイトには『須原』の記事がひとつもないのか?その理由を徹底的に調べてみた」
なんだこの記事はッ!!
こんな記事を書かれてしまっては、須原の知名度が上がってしまうアル!!
いや、そんなことよりも、もし、我がタオ・パイグループがこれらのキュレーションサイトに関与していることがバレてしまっては大変なことになるアル・・・。
この記事を書いている「バズボンバーの伊藤」とかいう人物、こいつは一体何者アルか!?
Webメディアのほとんどは我々の息がかかっているというのに、こいつの頭は正気アルか!?
お、恐れながら、バズボンバーは月間数千万PVの独立系のWebメディアをもっており、伊藤をはじめとしたバズボンバー社員ひとりひとりのTwitterのフォロワー数も数万に達しています。
そのため、大手広告代理店でも自由に操れないコンテンツ制作会社として有名でして・・・。
はあああああ!?
そんなに影響力のあるやつらだとますますマズイアル!!
な、なぜ、そいつらを監視していなかったアルか!?
か、監視と言われましても・・・。
まさか、バズボンバーがみやび屋の味方につくとはまったくの想定外でして・・・。
そんなの言い訳アル!!
クビアルッ!!!
お前たちとの契約は今この瞬間をもって解除するアルッ!!!
えええええっ!!!?
そ、そんな・・・!!!
そんなもこんなもないアルッ!!!
お前たちは今後、我々に一切関わらないようにするアルッ!!!
もし、タオ・パイグループとの関係を少しでも口にするのなら、命はないものと思えッ・・・!!!
ええええ!?
さあ、早くこの部屋から出て行くアルッ!!!
あ、あの・・・。
今月分の業務委託料はどのように請求させていただければよろしいでしょう・・・?
はああああ!?
何を血迷ったことを言っているアル!!
本来なら、お前たちが賠償金を支払う立場アルッ!!!
そ、そんな・・・!!
おい、お前ら、早く出て行くんだ。
な、なんだお前は!!
お、オレを誰だと心得る・・・!?
ヤン様はお忙しいんだ、失せろ、ダニめ。
ダ、ダニ・・・!?
や、やめろ、離せ・・・!!
ヤ、ヤン様ーッ!!!
くっ・・・。
サツキめ・・・。
ここまで私を愚弄するとは許さないアル・・・。
フフフ・・・。
いいだろう・・・。
今は勝利の余韻に浸っておくがいいアル・・・。
この代償は高くつくアルよ・・・。
しっかし、この記事・・・めっちゃバズってますね・・・。
はい・・・。
さすがバズボンバーというところです・・・。
まさか、彼らがこんな記事を上げてくるとは思っていませんでした・・・。
なぜ、某キュレーションサイトには「須原」の記事がひとつもないのか?その理由を徹底的に調べてみた
みなさん、こんにちは。
バズボンバー伊藤です。
最近参加した合コンで、「あなたの顔、セミの抜け殻に似てますね」と言われました。
その発言が何を意図したものかは不明ですが、夏も終わりに近づき、まさにセミファイナルな今日この頃、あなたはお元気でしょうか?
さて、このたび、私は温泉好きが高じて、この「みやび旅」というメディアに記事を寄稿させていただくことになりました。
温泉好きが加速した結果、日々「混浴 初心者 オススメ」と検索する日々を送っている私ですが、最近、ネット上で温泉に関する情報を検索していると、あることに気付いたのです。
それは、“いくつかの旅行系キュレーションサイト”で、なぜか「須原」の情報が掲載されていないという事実です。
須原とは、温泉マニアにとって、まさに聖地というべき温泉地。
その清らかな泉質の魅力は言うまでもなく、日本の原風景を感じさせる歴史ある宿もたくさんあります。
そんな温泉の名所中の名所が掲載されていない!
なんで??
須原を掲載しないなんて、リクームのいないギニュー特選隊、サンジのいない麦わらの一味、シンゴジラから芯が抜けた普通のゴジラみたいじゃねーか!
そこで、今回、私は、国内にある50の旅行系キュレーションサイトを分析し、須原に関する情報が掲載されているサイトと、掲載されていないサイトとの違いをまとめてみました。
須原が掲載されていないサイトはいくつあるのか?
そして、なぜ、須原は、それらサイトに掲載されていないのか?
謎が謎を呼ぶ風雲急。
今回、Webを轟かせる20人の切り込みクリエイター陣にも本件に関するご意見をいただきました。
この記事を読んでどう思われるかはあなた次第です。
(~以下、省略~)
須原がキュレーションサイトから嫌がらせを受けていることに気付いて、それをネタに記事を書くなんて・・・。
私も驚きました・・・。
高橋、記事が完成したから確認してくれ。
・・・!!!
こっ、この記事は・・・!!!
むしゅしゅしゅ。
須原のことを調べていたら、どうも不自然なことがたくさん見つかったのでしゅ。
思わず笑っちまったぜ。
須原って場所は一体、何をしでかしたんだ?
キュレーションサイトから、軒並み締め出されてるみたいじゃねーか。
いえっ、須原は何も悪くないんです・・・!
実は・・・
まあ、理由はどうでもいいさ。
オレたちゃ、とにかく“権力”ってやつが大キライでな。
人前ではいいカッコしている大企業さまが、こんな子供みてえな嫌がらせをしているとあっちゃあ、オレたちバズボンバーの導火線に火がつくのも時間の問題だったってわけさ。
伊藤さん・・・!
嗚呼、インターネットとは本来、日陰に生きる者に光を当てるための力のはず。
その力を悪用し、逆に日陰を増やそうとする輩には、天罰を受けてもらうしかないのです。
山本さん・・・!
むしゅしゅしゅ。
なんだか、オレたち正義の味方っぽい感じになりましたねぇ。
田中さん・・・!
みなさん・・・あ、ありがとうございます!
た、ただ・・・。
ただ?
こんな記事を書いたら、バズボンバーのみなさんが狙われてしまうのでは・・・?
だから、おもしれーんだよ。
こういう輩は権力と圧力で何でも押さえ込めると勘違いしてやがる。
その思い上がりを言葉の力で粉々に打ち砕いてやるのさ。
へへへ、楽しいじゃね~か。
言葉の武器としての可能性をこんなに試せる機会はね~ぜ。
(ひ、ひえええ・・・)
あ、あと心配なのが、今回のコンテンツから受ける印象です。
いつものバズボンバーさんみたいなおもしろコンテンツじゃないことが気になっていて・・・。
バズボンバーさんのブランディング的に大丈夫なんでしょうか・・・?
ああ?
ブランディング、なんだそれ?
・・・高橋、おめー、オレたちのこと、何も理解してねーな。
へ?
オレたちの理念は「バズでボンバーでハッピー」よ。
バ、バズでボンバーでハッピー・・・?
むしゅしゅしゅ。
ブランディングも何も、オレたちはたくさんの人がハッピーになれるコンテンツをただバズらせたいだけなのです。
嗚呼、我々がおもしろコンテンツを作ることが多いのも、笑いこそが幸せを生むと信じているからなのだ。
(そ、そういえば・・・。
バズボンバーが作っているおもしろコンテンツって、誰かをバカにしたり、傷つけたりして笑いをとってないな・・・。
笑いこそが幸せを生む・・・。
そうか、そういうことだったんだ・・・!)
その理念で言えば、今回のコンテンツはオレたちの理念に何にも反してねえ。
コンテンツの可能性を邪魔する既成概念、権力、圧力。
この記事がそういったものを取り払うきっかけになれば、もっとハッピーな世の中が期待できるだろ?
むしゅしゅしゅ。
世の中を不幸せにするルールこそ、バズコンテンツの力で吹き飛ばしてやればいいのでしゅ。
嗚呼、それこそが、「バズでボンバーでハッピー」。
みなさん・・・!
(バズでボンバーでハッピー・・・。
バズボンバーのすごいところは、本当にコンテンツを爆発的にバズらせちゃうところだな・・・)
それにしても高橋さん、今回の記事、なぜこんなにバズっているんすか?
バズボンバーって人たちはそんなに人気があるんすか?
あ、ま、まあ、バズボンバーさんはWeb界隈ではそれなりに人気がある人たちなのですが・・・。
私もまさかここまでとは・・・。
今回は彼らの影響力だけでバズっているわけではない。
ボーンのオッサン!!
バズボンバーの影響力だけでバズっているわけではない・・・?
ボーンのアニキ、それってどういうことだ?
あいつらは今回の記事で、バズらせるための演出をしっかりおこなっている。
演出・・・?
あいつらが今回の記事で意識していることを説明してやろう。
ムツミも聞いておけ。
あ、ああ!
今回、バズボンバーが意識していること
今回、バズボンバーは以下の3つのポイントを意識してコンテンツを設計している。
- 共感層の巻き込み
- 「客観性」の担保
- コミニュケーションにつながる演出
共感層の巻き込み・・・?
そうだ。
やつらは今回の記事で、“世の中のキュレーションサイトによい感情をもっていない層”を巻き込むことに成功している。
Twitterで言及しているユーザーたちのプロフィールを見てみろ。
その多くがコンテンツクリエイターだろう。
た、たしかに・・・!
デザイナーやライターの人たちが拡散してくれてる!
バズボンバーは、彼らが日頃抱いているモヤモヤした感情を刺激することによって、バズを起こすことに成功しているんだ。
「自分たちのコンテンツの著作権を侵害しがちなキュレーションサイトが、さらに悪どいことをしているなんてもう許せない」、そういった感情をかき立て、ソーシャルメディアの拡散につなげているんだ。
キュレーションサイトすべてが悪というわけではないが、コンテンツクリエイターへの敬意を欠いているものが多いことは確かだからな。
そ、そういえば、今回の記事では、バズボンバーの伊藤さんがクリエイターの意見を取り上げる形で、デザイナーやライターの人たちのコメントを多数掲載していた。
この時点ですでに「巻き込み」作戦が発動していたんだな・・・!
ああ、そうだ。
記事で取り上げられたデザイナーやライターは、記事が公開されれば一緒になって拡散してくれるからな。
初期露出の方法としては鉄板だ。
これが巻き込み戦略か・・・!
もし、自分に発信力がなくても、ほかのひとの発信力を借りることでバズを狙えるってことか・・・。
そして、2つ目のポイントだ。
バズボンバーは記事上で第三者の「巻き込み」をおこなうことによって、記事に多数の話者の視点を入れることに成功した。
つまり、記事の「客観性」を担保したのだ。
客観性・・・?
バズボンバーはWeb界隈では名が知れているが、彼らが書く記事を初めて見る人たちからすれば、彼らの意見は見知らぬ他人の意見に過ぎない。
つまり、カンタンに信用するわけにはいかない。
場合によっては、文脈を切り取られて、自分たちが逆に炎上するリスクもある。
そこで彼らが考えたのは、さまざまなクリエイターの意見を掲載することだ。
信用が「個」に紐づいていない状態なら、「数」で担保すればいいのだ。
信用を「数」で担保する・・・!
今回の記事では、バズボンバーの伊藤を含め、21人の話者が登場して意見を述べている。
この数を見れば、客観的に見ても、読者は信用を感じざるを得ないだろう。
へええ・・・。
たしかに、目の前の人ひとりが言うより、「みんなが言っていた」って言われるほうが信じてしまうもんな。
そうだ。
そして、3つ目のポイントは、「コミュニケーションにつながる演出」を意識している点だ。
コミュニケーションにつながる演出・・・!?
高橋、TwitterやFacebookで記事がシェアされる理由を憶えているか?
あっ・・・、たしか以前マツオカのサイトリニューアルのときに教えてもらったな。
えっと・・・。
思い出したぜ!
“記事を通して、ほかの人とコミュニケーションをとりたいから”だ!
そうだ。
バズボンバーの記事では、ふとしたところにコミュニケーションにつながる演出が隠されている。
たとえば、「たとえ話」や「メタ的な視点誘導」などがな。
「たとえ話」や「メタ的な視点誘導」・・・!?
バズボンバーの記事の冒頭には、次のようなフレーズが入っていた。
“須原を掲載しないなんて、リクームのいないギニュー特選隊、サンジのいない麦わらの一味、シンゴジラから芯が抜けた普通のゴジラみたいじゃねーか!”
これは、ドラゴンボール世代やワンピース世代、そして、シンゴジラという映画を観た人たちにとっては、思わずクスリと笑ってしまうたとえ話だ。
そして、そういったたとえ話は、記事の内容如何を問わず、ソーシャルメディアに投稿されやすい。
誰かとコミュニケーションする際のネタとしてな。
コミュニケーションのネタ・・・!?
・・・!
なるほど、たしかに、「シンゴジラから芯が抜けた普通のゴジラって、シンゴジラのシンはその“芯”じゃねーだろ!」とかツッコんでしまいそうだもんな・・・。
で、そのツッコミの投稿を見たほかの人たちもクスっと笑ってしまうってわけか。
そうだ。
拡散を意識した文章は、お堅い文章を書くよりも、外野がツッコミやすい“隙”を入れておくといいのだ。
“隙”・・・!
また、この記事は、読者が心置きなくツッコめるように、「メタ的な視点誘導」も意識している。
「メタ的な視点誘導」・・・!?
メ、メタってどういう意味なんだ・・・?
「メタ」とは「超越した」という意味を指す。
読者を自分たちと並列に扱うのではなく、読者を自分たちよりも上のレイヤーへ誘導し、読者が発言しやすい機会を与えているのだ。
発言する機会を与える・・・!?
そうだ。
たとえば、今回の記事の場合、バズボンバーは結局のところ、自分たちの結論を述べていない。
「今回の記事を読んで、あなたはどう思われますか?」という形で、結論を読者に委ねている。
そういう形で記事を締められると、読者は自分の意見を発言したくなる。
それこそがまさにメタ的な視点への誘導だ。
な、なるほど・・・!
さらにいえば、バズボンバーが書くほとんどの記事は、記事の冒頭で自分たちの存在を小さく見せる演出を入れることが多い。
今回の記事でいえば“セミの抜け殻に似ていると言われた”という表現が、まさにその演出だ。
自分の存在を小さく見せることで、読者に“上から目線”をもたせられる。
そうなれば、読者は思い切ってツッコミやすくなる。
へえええ・・・。
そして、その演出は、「こいつは偉そうだ」という読者の感情を和らげることにつながり、その結果、自分が不必要に“叩かれる”危険性も減る。
人間というものは、偉そうにしている人物、ドヤ顔の人物に対して攻撃的になる傾向があるからな。
そういった人間の感情を見越しての演出だ。
・・・!!!
あの最初の文章にそんな狙いがあったなんて・・・。
ふざけて書いているだけだと思っていた・・・。
“記事をいかにして気持ちよく読んでもらうか?”
バズボンバーはその点にこだわり続けている。
バズボンバーってすげえな・・・!
そうだ。
そしてなにより、そういった演出を“わざとらしく感じさせない”ライティング力こそがやつらの強みだ。
演出家の狙いが透けてしまう演出ほどサムイものはないからな。
へえええ。
(た、たしかにバズボンバーのコンテンツはすごい。
でも、そのバズボンバーの狙いを的確に分析し理解しているボーンのアニキもやっぱすげえや・・・)
ちょ、ちょっと!!!
みんな、大変なの!!!
アネキ!?
どうしたんだ!?
そんなに慌てて・・・?
さっきから、みやび屋を取材したいっていうメールが殺到しているのよ!
えっ!?
バズボンバーさんが書いてくれた記事を見て、須原やうちの旅館に興味をもってくださった方が大勢いらっしゃって。
ニュースサイトの記者さんやブロガーさんから、「もっと詳しく話を聞きたい」って問合せが殺到しているの!!
そいつはすげーや!!
いい流れね。
ただ、ここは少し落ち着いたほうがいいわ。
これから先、あなたたちが発信するあらゆる意見はいろいろなメディアに載ることになる。
中にはあなたたちの意見をゆがめて発信するメディアも出てくるかもしれない。
だから、対応は慎重に考えていきましょう。
そ、そうですよね・・・!
サツキちゃん、いるかい?
この声は・・・?
サツキちゃん、急に押しかけてすまんね。
三桜館の旦那さん・・・と、須原の旅館の皆さん!!
えーと・・・。
サツキちゃん、オレさあ、たたもうと思ってた旅館、実はもう一度、がんばってみようと思うんだ。
えっ・・・?
実はさ、この間、うちの旅館にひとりのお客さんが泊まってよう。
そのお客さんに「どうしてうちの旅館のことを知ったんですか?」って聞いたら、みやび屋のホームページの中にあった記事を見たって言うんだ。
(あっ!「栃木 温泉」で上位表示している記事のことかも・・・!)
サツキちゃん、須原の集客のためにいろいろとがんばってくれていたんだな。
そ、そんな・・・。
こんなに若い子らが須原のためにがんばってくれてんだ。
オレたちもまだまだがんばんなきゃいけねえって思い始めてよ。
そうさ、オレたちも、この須原を盛り上げるためにがんばるぜ!
サツキちゃんたちばかりにがんばらせるわけにはいかねーもんな。
皆さん・・・!!
それで・・・相談があるんだ。
よかったら、サツキちゃんたちのやっている・・・そのあれだ、Webマーケティングってやつをオレたちにも教えてくれねーか?
えっ・・・!?
(ボーンさん、ヴェロニカさん・・・どうしましょう?)
・・・。
(いいんじゃない?
ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために、よ。
須原がいい方向に向かうのなら、ノウハウを皆に共有することは賛成よ)
(ありがとうございます・・・!!)
皆さん、ありがとうございます!
あ、あのですね・・・。
オレから一言、言わせてもらおう。
な、なんだ、あんたは・・・!?
サツキとムツミ、このふたりは、旅館を営む中、ムリをしてでも時間をつくってオレのノウハウを体得した。
こいつらが自分たちの大切な時間を使って、お前たちにノウハウを教えようというんだ。
中途半端な覚悟でのぞむんじゃないぞ。
(ボーンさん・・・!)
わ、わかってるとも・・・!!
サツキちゃんたちに苦労をかけないよう、必死でついていくぜ!
みなさん・・・!
一緒に須原を盛り上げていきましょう!
おおーっ!!!
・・・ジェイク、オレだ。
ボーン、どうだ?
チップは見つかったか?
・・・いや、まだだ。
そうか・・・。
もし、このままチップが見つからない場合・・・破壊することも考えている。
・・・破壊・・・?
ああ。
「キャッシュオールクリア」を発動する。
キャッシュオールクリア・・・だと!?
お、お前、あの技は・・・!
・・・分かっている。
できることなら使いたくはない。
今、オレのまわりにいる者たちが一緒になってチップを探してくれている。
なんとかチップを見つけられるよう、最善を尽くすつもりだ。
おいおい・・・。
まさかおめー、チップの秘密をバラしてねーだろうな・・・?
大丈夫だ。
チップの秘密までは明かしていない。
安心しろ。
だったらいいけどよ・・・。
じゃあ、電話を切るぞ。
ああ。
ふう・・・。
しかし、チップ、ほんとに見つからねーな・・・。
これだけ探しても見つからないなんて・・・。
・・・今夜も手伝わせてしまって、ゴメンなさいね・・・。
ヴェロニカとムツミは、みやび屋近くの車道にてチップを探していた。
いやいやいや!
ゴメンなさいだなんて、そんな・・・。
オレたちのほうこそ、ヴェロニカさんたちには本当に感謝してるんだぜ。
みやび屋が復活したのは、ヴェロニカさんとボーンのオッサンのおかげだもんな。
あっ、ヴェロニカさん、そこ、さっきオレがチェックしたとこ。
あ、そうだったかしら。
だんだん、探す場所もなくなってきたわね・・・。
(それにしても、ヴェロニカさんとふたりで「チップ探し」って、なんだかデートみたいだな。
このままチップが見つからないほうがうれしかったりして・・・。
・・・って、いやいや、何を考えているんだ、オレ!
ヴェロニカさんのためにしっかりチップを探すぞ)
・・・ムツミさん、前から聞きたかったことがあるの。
えっ?
な、何だい?
(もしかして、恋人はいるの?的な質問だったりして・・・)
音楽活動って・・・もうしないの?
えっ?
音楽活動・・・?
あ、ああ、もうきっぱりあきらめたぜ。
東京で好き放題させてもらったし、未練はないさ。
そうなのね。
なんだかもったいないわ。
もったいない・・・?
だって、音楽には音楽のよさがあるじゃない。
ライティングだけでは伝わらないものがこの世にはたくさんあるのよ。
えっ・・・?
よかったら今度、ムツミさんの音楽を聞かせてくれないかしら。
あ、ああ。
・・・?
どうかしたのか?
あの停車している車の運転手・・・?
さっきからこっちを見つめているような・・・。
わわわわわわ!!!
銃撃!?
ムツミさん!!
ケガはない!?
あっ、ああ、バッグに入れておいた、ボーンのオッサンがくれたキーボードが防いでくれたみたいだ・・・。
・・・って、な、何者だよ、あいつ!!?
なんで銃で狙ってくるんだ!!?
(・・・銃を跳ね返しただと・・?
よかろう)
エンジンがかかった!?
危ないっ!!
ヴェ、ヴェロニカさん!!
ま、また向かってくる!!
茂みに逃げ込みましょう!
お、おうっ・・・!
!!
ちっ・・・見失ったか・・・。
仕方がない。
仕切り直しだ。
い、行ったみたいだ・・・。
い・・・一体なんなんだ、あいつ・・・!?
銃で狙ってきたり、車で轢こうとしてきたり・・・。
・・・・!?
・・・痛っ・・・。
ヴェ、ヴェロニカさん!!!!?
ヴェロニカは大丈夫か?
ボーンさん!
は、はい、さっきお医者さまに診てもらいました。
・・・ボーン!
あっ!
ヴェロニカさん・・・!
心配かけてごめんなさい・・・。
・・・ヴェロニカ。
ヴェ、ヴェロニカさんは俺をかばってケガしたんだ・・・。
本当に申し訳ねえ・・・!
大丈夫よ。
軽い捻挫だったし。
ムツミさんが轢かれなくてよかったわ。
ムツミの話によると、何者かがお前たちの命を狙ったということだな。
ええ。
ただ、私ではなく、ムツミさんだけを狙っているようだったわ。
ムツミを・・・?
で、でも、一体誰が・・・。
お、おれ、世間の人に恨みを買うようなことしてねーからな!
銃を撃ってくる時点で普通じゃないわ・・・。
ボーン、もしかして・・・。
・・・ああ・・・。
・・・。
はああ・・・。
遠藤様、ため息などをつかれていると、ラーメンが伸びてしまいますよ。
井上・・・。
オレたちって、なんでこう、うまくいかないんだろうな・・・。
あのバズボンバーの記事が原因で、ほかのクライアントも取引中止を伝えてきた・・・。
まあまあ、遠藤様。
どんなときも不屈の闘志をもち続けるのが我々の強みだったではありませんか?
さあさ、元気を出して、また新しい事業を考えていきましょう。
ふっ・・・。
お前にはいつも励まされるわ。
なるほど、新しい事業・・・か。
まだ懲りずに悪だくみをするつもりか?
そう、懲りずに悪だくみを・・・。
ぎゃあああああっ!!!
ボ、ボーン!!!!!
ボーン、な、何の用だ・・・!?
な、なぜ、我々がここにいることを知っている・・・!?
お前たちの会社に足を運んだら、社員が教えてくれたぞ。
な・・・、余計なことをしおって・・・!
・・・。
ボーンよ、貴様、タオパイグループに見捨てられた我々を笑いに来たのだろう・・・?
(タオパイグループから見捨てられた・・・?)
・・・ムツミの命を狙ったのは、お前たちだろう?
ムツミの命?
何のことだ・・・?
(おい!井上、ムツミって誰のことだ!?)
(あっ、みやび屋の女将の弟でございます・・・!)
(ああ、あのサツキとかいう女将の弟か)
そのムツミだか、ツボミだかよくわからんやつがどうしたって言うんだ?
(・・・)
(・・・こいつらの目はウソをついていない・・・)
(・・・ということは、ヤンか)
おいっ!
貴様、私の話を聞いているのか!?
お前たち、これからは真っ当なビジネスをするんだな。
は、はああ??
あ・・・おい!どこへ行く!?
私を無視するな!
ちょ、ちょっと!!
なんですか、あなたは!?
勝手に入ってこられては困ります・・・!!!
・・・!?
お前は・・・!?
お前がヤンだな・・・。
・・・貴様、何者だ?
俺の名はボーン・片桐。
みやび屋の宿泊客だ。
ボーン・片桐・・・?
・・・そうか、お前アルか!!
みやび屋に泊まりこみ、オレとサツキとの間を邪魔をしているWebマーケッターは!!
・・・なぜムツミを襲った?
ムツミ・・・?
ああ、みやび屋のサツキの弟アルか。
襲ったとは一体何のことアルか?
シラを切るな。
お前たちはヴェロニカも傷つけた。
オレのパートナーを傷つけた罰を受けてもらう。
はっはっは!!!
そうだったアルね!
ヴェロニカという女はお前をかばったらしいアルね!
余計な邪魔をしなければ、痛い思いはしなかったというのに。
(オレをかばった・・・?
こいつら、ムツミをオレと間違えて襲ったのか)
12号はお前を仕留めるのに失敗したが、そのお前がノコノコと足を運んでくれるとは好都合・・・。
サツキはお前には渡さないアルッ!!
者どもであえっ!!!
こいつをやつざきにするアルッ!!!
ははっ!!
ボーンとやら。
この私に挑んだことを後悔させてやるアル。
今日が貴様の命日になるアルよ!
へっへっへ・・・。
どう料理してやろうか~。
これだけの人数を相手にビビって言葉も出ね~か~。
まずは腕から折っちゃおうかな~。
ヒャッハー!!!
・・・。
貴様らにはもったいないが、この技をくれてやろう。
・・・はあああああああ!!!!!
オレの校正を受けて、人生を更生してこい。
!!!?
うぎゃあああああ!!!!!
も、もう、校正は十分・・・。
です・・・。
なっ、なんだとっ・・・!!!!?
(こ、こいつは何者アル・・・!?)
お、お前、ただのWebマーケッターではないアルな・・・!?
オレは“世界最強”のWebマーケッターだ。
せ、世界最強のWebマーケッターだと・・・!?
フ・・・。
フハハハハハ!!!
来るアル!!
12号!!
お前は・・・?
・・・。
こいつの名は「12号」。
我が社が抱える殺戮マシンアル。
何・・・?
貴様はWebマーケッターらしいが、この12号は元ライターアル。
こいつは前職で記事のライティングのしすぎで腱鞘炎になって以降、タイピング恐怖症となり、二度とタイピングができなくなったアル。
しかし、タイピングで鍛えた強靱な腕力があったため、我がタオ・パイグループが刺客として雇ってやったアル。
ライター出身の刺客はこいつで12人目アルが、こいつは歴代の刺客の中でも最強アルよ。
元ライターの刺客・・・。
こいつがお前を墓場に連れていってくれるアル。
覚悟するアル。
さあ!!やってしまうアル!
12号!!
仰せのままに・・・。
・・・言葉の力で光を紡ぐはずのライターが悪の道へ染まるとは、世も末だな。
ふっ・・・。
今やWebライティングの世界は、記事の量産につぐ量産で、阿鼻叫喚の地獄と化している。
オレはヤン様に雇ってもらったことで、その地獄からすくい上げてもらったのだ。
・・・。
最強のWebマーケッターと名乗る男よ。
お前には1文字0.1円の地獄で苦しむライターたちの恨みを込めた、我が“量産型ライティング拳法”で沈んでもらおう。
・・・!
(こいつ・・・できる・・・)
全力で行くぞ。
・・・来い。
推敲校閲衝ッ!!!
フィードバックループ!!!!!
・・・!?
オレの推敲校閲衝を止めた・・・だと・・・!?
・・・はぁああああああああああ!!!!!
ぐわああああああああああッ!!!!!
グフッ・・・。
まさかオレの推敲と校閲をさらにフィードバックしてくるとは・・・。
フィードバックに終わりはない・・・か・・・。
・・・今度は光の道を歩くライター(Lighter)に生まれ変われ。
・・・!!
くそっ・・・!!!
12号め、やはり元使い捨てライターだけあって、肝心なときに役に立たないアル!!
・・・ヤン・タオ、お前はライターへのオマージュに欠けている。
多くのメディアを所有していようが、ライターに敬意を払わぬやつに、メディアを運営する資格はない。
はああ?
お前に使い捨てられてきたライターたちの恨み、その身で受けよ。
はああああああ・・・!!!
・・・!!!
フィードバックルー・・・!!!
ぎゃ、ぎゃあああああ!!!!!
ちょ、ちょっと待つアル!!!!!
・・・。
ここにきて命乞いか?
う・・・ううううう・・・。
ヤン・タオよ。
は、はいっ・・・!!!
サツキたちから手を引け。
くっ・・・!!!
そ、それは・・・!!
これまでのお前との会話はすべて録音した。
もし、お前がこのまま手を引かないというのなら、この録音ファイルをお前の息のかかっていないライターたちへ回し、今回の一件を記事にしてもらう。
記事・・・!!?
言葉はクチコミとなり、ネット上に残り続ける。
そうなれば、お前の会社は終わりだな。
くっ、くそっ・・・!!
オレが【沈黙】を守り続けるかどうかは、お前の回答にかかっている。
ち、沈黙・・・!?
3秒以内に答えろ。
3・・・2・・・。
あ、わわわわわ、わかったアルッ!!!
サツキにはもう手を出さないアルッ!!!
く、くそーっ・・・!!!
・・・よし、それでは、その引っ込めた手を、今度は別のことに使ってもらおう。
べ、別のこと・・・?
あっ、ボーンさん、この3日間どこへ行かれていたんですか?
ヴェロニカさんが気にされていましたよ。
・・・ちょっとな。
・・・サツキ。
もう、ヤンにビクビクする必要はないぞ。
えっ・・・?
このサイトを見てみろ。
こ、これは・・・!
「TRAVEL UP」に須原の特集ページのバナーが・・・!?
へっ・・・!?
こ、このサイトってたしか・・・。
須原の情報が消されていたサイト・・・。
ど、どうして急に須原をPRするようなページが・・・!?
「TRAVEL UP」はしばらくの間、須原に関するPR記事をアップし続けるだろう。
へっ!!?
い・・・一体何が・・・。
ヤンに少しお灸をすえてやったまでだ。
「TRAVEL UP」の運営はバイソン社からタオ・パイ社に移行され、須原のPRに全面的に協力してくれることとなった。
そして、ヤンは日本法人を残し、本社へ戻った。
もうお前に手を出すことはないだろう。
えっ・・・!?
な、なんだかよくわからねえが、ヤンがアネキから手を引いたってことは本当にうれしいぜ!!
あ・・・ありがとうございます!!
ボーンのオッサン・・・。
ありがとな。
・・・俺はとくに礼を言われることはしていない。
ヴェロニカの仇を討ったまでだ。
ボーン!
ヴェロニカ、ケガの調子はもういいみたいだな。
サツキさんとムツミさんが適切な応急処置をしてくれたおかげよ。
いえいえ・・・!
そんな・・・!
ヴェロニカさんが元気になられて本当によかったです・・・!
・・・あの・・・ボーンさん。
戻られてすぐで恐縮なんですが、おっしゃっていたチップの捜索期限まで日がなくなってきています。
さっき、ヴェロニカさんともお話ししていたんですが、私たち、これまで以上にチップの捜索をお手伝いしたいと思っているんです。
そうさ・・・!!
オレたちのためにここまでしてくれたんだから、絶対にチップを見つけてやるぜ!!
サツキさん、ムツミさん、ありがとうね。
・・・。
ボーンのアニキ!
オレをシンガポールから呼んだのも、チップを探すための時間が必要だったからだろ?
だったら、みやび屋のWebまわりはオレにすべてまかせてくれ!
高橋・・・。
では、たのむぞ。
了解っ!!
ボーンさん、私もムツミも、今から時間がとれます!
すぐにチップを探しに行きましょう!
よし。
まだ探していない場所がいくつかある。
手分けして探すぞ。
はいっ!!
ムツミ!
このあたりって探した?
ああ!もうそのあたりは捜索済みだぜ。
あっちのほうはまだ見てないから、アネキはあっちを頼む!
わかった!
私はこっちを探すわね!
はい!
こ、この風はっ!!?
ボ、ボーン!?
なぜ、こんなところでエモーショナルライティングを・・・!?
わかった!
空中でタイピングをすることで、指先から風を起こして草を飛ばし、チップを見つけやすくするつもりなんだ・・・!
さすがボーンさん!
まさに草の根を分けてまで探すということなんですね!
で、でも、この風だとチップも吹き飛んでしまうわ・・・!
・・・たしかに。
・・・エモーショナルライティング!!
・・・エモーショナルライティング!!!
・・・エモーショナルライティング!!!!
・・・。
サ、サツキさん、ムツミさん、チップが空を舞うかもしれないから、足元だけでなく、空も見上げながら作業して!
はっ、はいっ!!!
(ボーン・・・焦りすぎよ・・・!)
ふうっ・・・。
結局、今日もチップは見つからなかったな・・・。
・・・捜索期限まであと3日か。
でも、ボーンのオッサンも焦って探すほどのチップって、一体何のチップなんだろう・・・。
ま、チップの正体はともかく、ボーンのオッサンたちにはすげーお世話になったんだ。
絶対に見つけてやらなくちゃな。
・・・それにしても、みやび屋は、ボーンのオッサンが手伝ってくれた記事、高橋さんが見つけたライターが書いた記事、そして、バズボンバーが書いた記事。
ライティングの力で救われたな。
そういや、ヴェロニカさん・・・。
だって、音楽には音楽のよさがあるじゃない。
ライティングだけでは伝わらないものがこの世にはたくさんあるのよ。
えっ・・・?
ヴェロニカさんが言っていた“ライティングだけでは伝わらないもの”って・・・。
ま、いいや。
なんにしても、オレは音楽をやめたんだからな。
とはいえ、まだこいつを大切に持ってるってことは、オレも未練が残ってんのかな・・・。
・・・そろそろ、こいつともお別れして、旅館経営に真剣に向き合わないとな。
・・・そういや、結局、バンドの解散前に買ったこのエフェクター、一度も使わなかったな。
ああ、いけねえ、いけねえ。
もう、オレは音楽をやめたんだぜ。
・・・決めた。
今からこいつを弾いて最後だ。
こいつを弾き終えたら、オレは音楽から完全に離れることにする。
あら・・・?
ギターの音色・・・。
ムツミさんかしら・・・?
!!?
ボーン、GPSが作動したわっ!
!?
こ、これはっ・・・!?
みやび屋・・・!?
ムツミさんの部屋を指している・・・!
ムツミの部屋だと・・・?
ムツミ、入るぞ。
ど、どうしたんだ、ふたりとも!?
そんな真剣な顔をして・・・。
あ、すまねえ、オレのギターの音がうるさすぎたか?
ムツミさん、ちょっと失礼するわね。
ボーン!
GPSはこの小さな箱みたいな機械の中で反応しているみたい。
・・・!
エフェクターか。
???
ムツミ、そのエフェクターの中を開けさせてくれないか?
こ、このエフェクター?
べ、別にいいけど・・・。
ボーン、これ・・・!
ああ、チップだ。
まさか、こんなところにあったとはな・・・。
えっ?
えっ・・・?
ムツミ、このエフェクター、どこで手に入れた?
ど、どこで手に入れたって・・・。
半年くらい前、秋葉原にあったカスタムメイドのギターショップでだよ。
店主がギークな人で、どっからかパーツを仕入れてきては、マニアックなエフェクターを作っているお店さ。
秋葉原・・・。
もしかして、あの爆発後の現場を片付けた業者が、チップを見つけて、何かの部品かと勘違いして秋葉原のパーツ屋に流したのかもしれないわ。
それをギターショップの店主が見つけ、プリント基板か何かと勘違いして、このエフェクターに組み込んだ・・・。
そのようだな。
???
・・・ムツミ、そのエフェクター、俺たちに譲ってくれないか?
こ、このエフェクターかい?
こんなのでよければ、プレゼントするぜ。
・・・感謝する。
ボーンのオッサン、ヴェロニカさん、さっきから話しているチップって・・・。
ああ、これだ。
えっ!!!??
ええええっー!!!!!!?
ボーンさん、ヴェロニカさん、行ってしまわれるんですね・・・。
ああ。
おまえたちのおかげでチップは無事に回収できた。
いえいえ!
私たちのほうこそ、ボーンさんたちには本当にお世話になってしまって・・・。
このみやび屋、そして、須原がよみがえったのは、ボーンさんとヴェロニカさんのおかげです。
なんてお礼を言えば・・・。
いいのよ。
私たちにとっても素敵な出会いだったわけだから。
サツキ、ムツミ。
みやび屋のオウンドメディアは軌道に乗った。
だが、闘いはこれからだ。
他社に負けないよう、記事を投下していくことを忘れるな。
お、おう!!
高橋、もうしばらくはサツキとムツミのサポートを頼むぞ。
ああ、あとは俺にまかせてくれよな!
サツキ、ムツミ。
みやび屋が完全に復活するかどうかは、これからのお前たちのがんばり次第だ。
・・・そこで、俺からの最後のアドバイスを伝えておく。
最後のアドバイス・・・!
「言葉の力」を過信するな。
“言葉の力を過信するな”・・・!?
ああ。
お前たちは、オレの教えのなかで言葉の強さを知った。
しかし、この世には万能なものなどない。
たとえば、この須原に来る外国人旅行者のことを考えてみろ。
日本語の深みは、日本語に慣れていない外国人旅行者には通じない。
だから、彼らには言葉よりも、ビジュアルやサウンドなど、言葉以外のコンテンツでこの須原の魅力を伝える必要があるのだ。
そもそも、須原に広がる雄大な自然の美しさ、谷川の心地よいせせらぎ、そういったものの魅力を言葉で表現するのは難しい。
言葉で表現できないものは、言葉以外で表現すべきなのだ。
“言葉で表現できないものは、言葉以外で表現すべき”・・・。
たとえば、写真や音楽の力などでな。
写真や・・・。
音楽の力・・・!
なんとかチップを期限内に回収できたな。
ほんとね。
よかったわ。
ジェイク、遅くなってすまない。
おお、ボーン!!
チップは本当に見つかったんだろうな!?
ああ。
かーっ!!!
心配したぜっ・・・!!!
ナイスだな!!
明日の飛行機でそちらへ向かう。
分かった。
・・・いよいよ始まるな。
オレたちの本当の闘いが。
・・・ああ。
ボーン、ジェイク、準備ができたわ。
いよいよ、始めるんだな。
ああ、そうだ。
・・・この世界を救うために・・・。
・・・あら?
・・・何かあったか?
ムツミさんからメールが届いたわ。
・・・ふふふ、ムツミさん、最近、須原のテーマソングを作曲したそうよ。
音楽の力でも須原の魅力を発信していきたいって。
ムツミさん、今は旅館経営の傍ら、音楽プロデューサーとしても活動していて、須原を拠点として活動しているミュージシャンのプロデュースもしているみたい。
そうか。
あら、添付ファイルがあるわ。
“ボーンのオッサンへ。
ライティングに悩む人たちを救うために、ボーンのオッサンから得た学びを曲にしてみた。
ぜひ聞いてみてくれ”って。
ムツミさんの作った曲、流してみる?
ああ。
オレたちの闘いのプレリュードとなる曲ならいいんだがな。
ふふふ。
Eternal Writing
(作詞・作曲・編曲:宮川ムツミ)
(I’m)looking for the words giving my soul
紡いだ思いは非連続のフレーズの果てに
消えない言葉を探し歩き出した
それはリライトの歩み
文脈もなく荒れるように書き続けた
揺れる表記を抱え
目に映る輪郭線は 論理を超え誘う Entrance to a sentence
導入 序破急 起承転結 貫くリード
(I’m)looking for the words giving my soul
紡いだ思いは非連続のフレーズの果てに見出しになる
(I)wanna find the words giving my soul
張り詰めたフィードバック・ループ超えて
ずっと刻み続ける
言葉の彼方へ
伏線のないエピソード 振り払って
僕は記憶を空ける
比べることもできず ただ立ち尽くした
それはまとめの罪過
切れ間なく奏でられた ブレスのないメロディー Entrance to a dungeon
冒頭 本文 補足 結論 振り向くエビデンス
(I’m)looking for the words giving my soul
隠した想いは終わりのないメタファーの果てに飲み込まれる
(I)wanna find the words giving my soul
止めどないフィードバック・ループ超えて
ずっと走り続ける
言葉の彼方へ
言葉の中に潜む論理の中
感情揺るがすエピソード抱いて
余白のない空は色を付けられない Free up margin
So 推敲のムコウに
(I’m)looking for the words giving my soul
紡いだ思いは非連続のフレーズの果てに見出しになる
(I)wanna find the words giving my soul
張り詰めたフィードバック・ループ超えて
ずっと刻み続ける
永遠に
(I’m)looking for the words giving my soul
隠した想いはオリジナルの言葉をまとい輝いてく
(I)wanna find the words giving my soul
止めどないフィードバック・ループ超えて
ずっと走り続ける
コトバの彼方へ
Force out the words
この歌詞・・・。
歌の力で伝えるライティングの本質か。
一本とられたわね、ボーン。
・・・フッ。
あ、そういえば!
チップの秘密は・・・この本にこっそり書くかもよ。