高橋・・・。
オレたちに頼みたいことって何だ?
・・・伊藤さん、今日は“あるオウンドメディア”に投下する記事の制作をお願いしに来ました。
・・・オウンドメディアだと?
はい。
実はオレ、今、ある旅館のWeb集客をお手伝いしているんですが、その旅館が今度、新しくオウンドメディアを始めることになったんです。
で、そのオウンドメディア用の記事を、ぜひバズボンバーの皆さんにも書いていただきたいんです!
・・・そのメディアのプランニングは終わってんのか?
はい!
いいだろう。
どんなメディアか聞かせてもらおうじゃねえか。
ありがとうございます!
そのオウンドメディアはですね・・・。
遠藤・・・。
話が違うではナイか。
は・・・!?
みやび屋の集客が回復していると聞いたアル。
!?
あっ、あれはですね、ただ偶然が重なっているだけでございます!
所詮は悪あがき。
あいつらは自分たちのサイトの中でコソコソ行動しているに過ぎません。
もう少しお時間をいただければ、みやび屋がつぶれるのも時間の問題かと・・・!
なあ、井上!?
は、はい!
みやび屋がつぶれるのは時間の問題でございます!
というのも、今、我々のメディアの手によって、須原を訪れる観光客は日ごとに減っております!
須原の観光客が減れば、みやび屋がいかに踏ん張ろうとも、なす術はないかと・・・!
フフフ・・・。
我々が運営しているメディアのうち、「TRAVEL UP」のページビューは今や月間1,000万を超え、旅行業界に大きな影響力をもちはじめております。
そして、「TRAVEL UP」では須原の情報を一切載せておりません。
「TRAVEL UP」で取り上げられない観光地は、もはやこの世に存在していないのも同じ。
「TRAVEL UP」だけではありません。
我々が運営するほかのメディアにおいても、須原の情報は扱っておりません。
観光客が集まらなくなった須原にて、みやび屋は“絶望”という言葉の本当の意味を知ることでしょう。
フッフッフ・・・。
何がフッフッフ、アルか!!
メディアのページビューなんてどうでもいいアル!
お前たちの会社に私が発注している理由を忘れたわけではアルまいな!?
そんな手間のかかる方法ではなく、もっと早くみやび屋に引導を渡すアル!
みやび屋を徹底的に追い詰め、サツキを失意のどん底にたたき落とすアルッ!
は、ははーっ!
・・・で、一体、誰がみやび屋に入れ知恵してるアルか?
・・・は??
隠すのはやめるアル。
みやび屋が屈しないのは何か理由があるはずアル。
・・・おそらく何者かが入れ知恵をしているのではないアルか?
い、いや、え・・・と、何者とおっしゃいましても・・・。
(く、くそ・・・。
ヤンめ、なんてカンの鋭いやつなんだ・・・!)
・・・「ボーン・片桐」のしわざでございます。
・・・ボーン・片桐?
(こ、こら、井上!!
お、お前、何を勝手に・・・!)
(遠藤様、ここはヤン様にも事態を共有しておいたほうがよろしいかと。
ご安心ください。
私がうまく説明してご覧にいれます)
・・・ボーン・片桐。
そいつは何者アルか?
はっ!
世界最強のWebマーケッターを名乗る男でございます。
表舞台にはけっして姿を見せず、弱者のための救世主などと名乗り、競合となるWebサイトの集客を徹底的に邪魔するとんでもないやつでございます。
世界最強のWebマーケッター?
そんなやつがなぜみやび屋に肩入れしているアルか?
・・・これは非常に申し上げづらかったのですが、ヤン様には正直にお伝えしておきます。
おそらく、ボーン・片桐は、サツキとただならぬ関係があるのではないかと。
た、ただならぬ関係だと・・・!!?
(・・・フフフ・・・。
やるではないか、井上よ。
ボーンをヤンの恋敵に仕立て上げるということか)
(・・・フフフ)
な、なるほどアル・・・!
サツキが私の求婚に応じなかったのは、その男の存在が原因だったアルか・・・!
はい、おそらく・・・。
ボーン・片桐・・・。
遠藤、井上、その男も徹底的につぶすアル!!
カネはいくらかかってもかまわん!
この私に勝負を挑むなど、数億年早いことを思い知らせるアル!!
そして、サツキから一切の希望を奪い、この私なしでは生きていけぬようにするアル!!!
ははーっ!!!
くっ、それにしても、ヤンのやつめ・・・。
我々のメディアのページビューなんてどうでもいいだと・・・。
まあまあ、遠藤様。
ここは辛抱でございます。
我々の目的としては、「TRAVEL UP」をはじめとしたメディアの運営を経たのち、タオ・パイ社もひれ伏す巨大メディアを作り上げることですから。
今は資金を貯めるために多少のことはガマンし、最後に我々が高らかに笑いましょう。
フッ・・・。
そうだったな。
しかし、井上、お主もワルよのう。
ヤンにあえてボーンの存在を教えることで、追加予算を引き出すとは。
フフフ・・・。
もはやボーンは我々にとっての敵ではございませぬ。
むしろ、我々のビジネスのために利用すればよいのです。
ボーン・片桐よ。
お前には散々煮え湯を飲まされたが、最後に笑うのはどうやら我々のようだ。
滅びゆく須原の地で無様な姿をさらすがよい。
ハッハッハ。
ハーッハッハッハ!!!
・・・というオウンドメディアなんです。
ここはぜひ、バズボンバーの皆さんの力をお貸しいただければと!
高橋は自身がプランニングしたオウンドメディア「みやび旅」について、伊藤たちに熱く説明していた。
(・・・バズボンバー、ネットで話題のバズコンテンツメーカーの筆頭。
この人たちが味方に加わってくれれば、こんなに頼もしいことはない)
バズボンバーとは、おもしろコンテンツに特化した国内屈指のコンテンツ制作集団である。
彼らが作るコンテンツはソーシャルメディアで圧倒的な人気を誇る。以前、高橋はボーンたちといっしょに、マツオカのサイト改善の一件でバズボンバーのコンテンツと競い合ったことがあった。
彼らがコンテンツに懸けるこだわりはすさまじく、ボーンが認める数少ないコンテンツ制作集団である。
元々は敵であったバズボンバーだが、ボーンは高橋に彼らのコンテンツに対する姿勢を学ばせるため、高橋をインターンとして送り出す。
最初はダメ出しばかりされていた高橋だったが、バズボンバーはやがて高橋をひとりのクリエイターとして認め、そのノウハウの一部を教えたのだった。
バズボンバーとボーンたちとのエピソードは、前作「沈黙のWebマーケティング」にて語られている。
・・・伊藤さん、いかがでしょうか・・・?
・・・なるほどな。
須原の旅館で働く人たちにインタビューするコンテンツってわけか。
はい!
そうなんです!
普通の人が旅行について語るよりも、旅館で働くプロの人たちが語ることで、旅行の新たな楽しみ方を伝えられるのではないかと思っています。
・・・高橋、わりぃが、その仕事はパスだ。
・・・え?
オレたちはその仕事を請けねえ。
・・・!!
むしゅしゅしゅ、どんな企画かと思えば・・・ガッカリでしゅね~。
嗚呼、高橋、君がインターンとして我々と一緒に過ごしたあの時間は一体何だったのだろう・・・。
えっ・・・!?
い、いや、そ、そんな・・・。
わりーが、帰ってくれ。
また、別の仕事があったら相談に乗ってやっから。
伊藤さん・・・!
(い、一体何が・・・。
オレの企画のどこが悪かったんだ・・・!?)
その頃、ボーンとヴェロニカはチップを探し、須原の地を巡っていた。
チップ、一体どこにあるのかしら・・・。
・・・。
サツキさんたちにもチップの捜索を手伝ってもらっているけれど、今のところ、いい連絡はないわね。
そうか・・・。
この須原に来てからすでに40日が過ぎたわ。
チップが停止するまで、あと52日。
焦っても仕方がないのはわかっているけれど、もしものときのことは考えておいたほうがよさそうね・・・。
・・・チップが見つからないときは、チップ自体を破壊するしかない。
!?
チップが見つからないのに、どうやって破壊するの?
『キャッシュオールクリア』を使う。
キャッシュオールクリア・・・!?
オレの身体の中を流れる微弱な電流を瞬間的に増幅させ、強烈な電磁波を起こし、半径300m以内のあらゆる電子機器の回路をショートさせる技だ。
・・・!!
そんな技が・・・。
ただ、その技はオレの肉体に大きなダメージを与える。
それだけではない、この須原の電気系統にも異常が起き、数日はこのあたり一帯の営業が停止するだろうな。
・・・できれば使いたくはない。
あなたの身体のことはもちろん心配だけれど、それ以上に、プロのWebマーケッターが何の罪もないお店の営業妨害をするなんて、あなたの誇りに大きな傷をつけることになるわね・・・。
・・・ああ。
しかし、もしものときは話が別だ。
あのチップが誰かの手に渡ってしまうということは、この国、いや、この世界の未来を危機に陥れることを意味する。
それを防げるなら、オレの誇りが傷つくことなど大したことではない。
ボーン・・・。
・・・親父。
あなたが命を懸けて守ろうとしたモノは、オレが・・・守り抜く・・・!
さて、と。
明日は8件の予約が入っていたわね。
がんばらなくっちゃ!
ボーンのアドバイスによって、みやび屋はかつてのにぎわいを取り戻しつつあった。
そして、みやび屋で働くサツキたちにも、明るい笑顔が戻ってきていた。
(ふう・・・。
まさか、バズボンバーのみんなに断られるなんてな・・・。
サツキさんたちを期待させてしまった分、報告しづらいな・・・どうしよっか・・・)
あっ!
高橋さん、おかえりなさい!
・・・!!
サ、サツキさん!
高橋、ただいま戻りました!
高橋さん、私たちのためにライターさんに掛け合っていただき本当にありがとうございます・・・!
“とっておき”とおっしゃっていたライターさんの反応、どうでしたか?
あっ!!
・・・え、えと、なかなかの好反応で、明日また詳しいことを打ち合わせする流れになりました!
そうだったんですね!
そのライターさん、お仕事、引き受けていただけそうでしょうか・・・?
も、もちろんですよ!!
泣く子も黙るこの僕が声をかけたんですからね。
フフフ、期待しておいてくださいよ。
ありがとうございます・・・!
たはーっ・・・。
ああは言ったものの、バズボンバーに断られたのは痛かったな・・・。
それにしても何が悪かったんだろ・・・。
オレの頼み方?
それとも、オレがあまりにもイケてる男になっていたがゆえの嫉妬・・・!?
まあ、いいや・・・。
とにかく時間がないし、次の候補に連絡するか。
フフフ。
このライターもなかなか突き抜けているな。
いろいろなメディアに寄稿しているようだし、ブログの名前も聞いたことがあるし、実績は申し分ない・・・この人でよさそうだな!
対面での打ち合わせも問題ないとのことだし、一度来てもらうか。
サツキさん、ムツミさん、この方が今回ライティングを担当してくださる「サーロイン杉本」さんです!
この方がライターさん・・・!
(さすがプロのライター、ただものではないオーラをビシバシ感じるぜ・・・!)
ハッハ!
サーロイン杉本です。
よろしくお願いいたします。
はじめまして!
みやび屋の女将の宮本サツキと申します。
このたびはこちらこそよろしくお願いいたします。
ハッハ!
これは美しい女将さんですな。
私、いつも以上に張り切ってしまいそうでございます。
あ、あの・・・。
サーロイン杉本さんってすごく迫力のある名前ですよね。
もしかして、サーロインステーキが好物だったり?
ハッハ。
そうであります。
ステーキは素敵を生み出すエッセンス。
私の座右の銘でございます。
素敵を生み出すエッセンス・・・!
(なんだかよくわかんねーけど、熱いソウルを感じるぜ!)
ハッハ。
わたくし、普段はグルメに関する記事を多く書いておりまして、個人ブログも所有しております。
そのブログのページビューは月間200万ほどでございます。
ハッハ。
月間200万ページビュー!!
すげえ・・・!!
あっ、サーロインさんはグルメ系ブロガーとして有名な方なんですが、実はグルメだけでなく、さまざまなジャンルの記事を複数の媒体で書いていらっしゃるライターさんでもあります。
ハッハ。
そうでございます。
最近ではグルメ探訪のための旅好きが高じ、旅行に関する記事を書かせていただくことも増えてまいりました。
なにせ、食と旅は切っても切り離せない関係でございますから。
そうなんですね!
そんな方に記事を書いていただけるなんて光栄です。
どうぞ宜しくお願いいたします!
ハッハ。
こちらこそよろしくお願いいたします。
お力になれるよう、尽力する所存でございます。
・・・というわけで、サーロインさんには早速ひとつ目の記事を書いていただこうと思っています。
サーロインさん、事前にお伝えしていたとおり、今回の記事は“取材”がベースとなっています。
詳しくは後ほど打ち合わせさせてください。
ハッハ。
承知いたしました。
あ、高橋さん、頼まれていたリストをお渡ししますね。
取材を引き受けてくださる方のリストと、それぞれの方に向けた記事のアイデアリストです。
このリストの中でいえば、松戸屋のご主人が一番早く取材を受けてくださるかもしれません。
さっき電話でお話ししたときは、明日でも明後日でもOKだとおっしゃっていました。
サツキさん、ありがとうございます。
それでは、このリストをもとに諸々進めてまいりますね。
ハッハ。
なんなら、明日取材をし、明後日には原稿を完成させますよ。
ハッハ。
ええっ、すごいです!
実績のあるライターさんの手にかかれば、そんなに早く記事が完成してしまうものなんですね。
楽しみにしています!
(へえ~、プロのライターってさすがだなあ)
・・・。
(マ、マズイ・・・
まさかこんな記事が上がってくるとは・・・)
・・・なんだろう・・・。
勢いはあるのだけれど、記事全体を包み込む、この違和感・・・。
ハッ!
これはまさに“サーロイン杉本 on ステージ”じゃないか・・・。
これは・・・インタビュー記事ではないっ!!
この内容じゃあ、どっちがインタビューを受けているのかわからないな・・・。
あ、高橋さん。
こちらにいらっしゃったんですね。
あっ!
サ、サツキさん!
サーロイン杉本さんの記事の進捗、いかがでしょう?
え、えとですね、サーロインさんからもう少し時間が欲しいと言われてまして、今、原稿をお待ちしているところです。
そうなんですね。
さすがに2日では仕上がらないですものね。
は、はい、僕も記事の完成を心待ちにしてまして・・・。
(・・・「実は記事はもうすでに仕上がっているんです」、なんて言えない・・・)
では、私、これから少し外出しますので、引き続きよろしくお願いいたします。
はい!
お疲れさまです!
(・・・ふう・・・。
しかし、この記事、どうすっかな・・・。
書き直してくれって言うにしても、何をどう書き直してもらえればいいのかうまく伝えられる自信がねー・・・)
高橋、どうかしたか?
ギャアッ!!!
ギャアッて・・・。
高橋くん、驚きすぎ。
そこにあるのが、お前が頼んだライターの初回原稿か?
ボーンは高橋のデスクの傍らに置かれたプリントアウトされた原稿に目をやった。
い、いやいやいや、こ、これはただのメモ書きさ、そうメモ書き。
メモ書きにしては、しっかりした原稿に見えるけれど。
えっ!
あ、あの、え、えーと・・・。
・・・。
高橋、詳しく話してみろ。
・・・えっ・・・。
あ、ああ・・・。
実は・・・。
・・・ということなんだ・・・。
なるほどね。
本当はバズボンバーに記事を頼みたかったけれど、彼らに断られた。
そして、仕方なしにネットで見つけたライターに仕事を頼んだものの、上がってきた原稿がイメージと違う、と。
そ、そうなんです・・・。
そのライターの記事を見せてみろ。
あ、ああ・・・。
須原「松戸屋」の主人が選ぶ、大切な人とカップルで訪れたいオススメの温泉旅館 7選
ハロー!ホットスプリングス!
さすらいの旅行ライター「サーロイン杉本」です。
突然ですが、みなさんは恋人と温泉旅行へ出かけることはありますか?
もし、出かけるとしたら、どんな基準で温泉旅館を決めていますか?
「貸切露天風呂」や「露天風呂付き客室」があってロマンチックな時間を過ごせそうな旅館を選んじゃう?
もしくは、手に取った旅行雑誌をトランプのカードを切るようにパラパラとめくり、偶然目に止まった旅館のページに運命を感じて決めちゃう?
さらには、休日に何気なくTVでみた旅番組の「悠久の時を奏でる~」的なナレーションに感化されて、そこで紹介されていた旅館に問い合わせちゃう?
旅館の選び方は人それぞれですよね~。
てなわけで、あらためましてこんにちは。
さすらいの旅行ライター「サーロイン杉本」です。
私、普段はグルメ系ブロガーとして活動しているのですが、食と旅は切っても切れない関係。
まだ見ぬ食を求め全国を旅し続けた結果、旅の疲れを癒やしてくれる温泉旅館の魅力にどっぷりハマり、それがきっかけで、旅行関係の記事を書かせていただくことが増えてまいりました。
そんな私が、今回、“日本国内の上質な旅を再発見するメディア”である『みやび旅』にて、栄えある第1回目の記事を書かせていただくことになりました。
『みやび旅』のコンセプトは「上質なものはその道のプロに聞け」とのことで、今回私は、須原にて大正から続く老舗旅館を営んでおられる「松戸良太郎」さんにお話を伺いましたよ。
てなわけで、松戸屋さん、よろしくお願いいたします!
こちらこそよろしくお願いします。
いや~、それにしても感慨深いです。
温泉旅館好きが高じて7年。
まさかこうして、著名な旅館のご主人と対談できるなんて。
今回は“大切な人とカップルで訪れたい温泉旅館特集”とのことで、旅館のプロであるご主人からたくさんの情報を引き出したいと思います。
了解しました。
お手柔らかにお願いします。
早速ですが・・・。
もし、私が来週、恋人とラブラブツアーをするとして、どこかの温泉旅館を予約するとしたら、どこがよいでしょうか?
予算はふたりで一泊3万円ほど。
2食付きだとうれしいです!
一泊3万円ですか・・・?
条件をハッキリ決められているんですね・・・。
まあ、あくまでも私の希望条件ではありますがね。
・・・おっと、いけない、いけない。
早速このメディアを私物化するところでした。
では私の希望条件は置いておいて、ズバリ、ご主人が考える、カップルにオススメの温泉旅館はどちらでしょうか!?
そうですね、私がオススメしたい温泉旅館は7つあります。
最初にご紹介したいのは、兵庫県の山谷温泉にある『聚楽(じゅらく)』さんです。
『聚楽(じゅらく)』ですか!?
私、これでも温泉旅館には詳しいほうだと自分で思っておりましたが、その旅館の名前は初耳です。
聚楽、聚楽・・・。
この言葉を調べてみると「皆で集まって楽しむ」という意味があるようですね~。
素敵な名前ですね。
はい。
この聚楽さんは、温泉通の間で語り継がれている、知る人ぞ知る温泉旅館です。
温泉の質や料理が素晴らしいことはもちろん、それ以上に、ホスピタリティが素晴らしいんです。
ホスピタリティ?
病院のことですか?
い、いえ、ホスピタリティとは、カンタンにいえば「おもてなし」のことです。
ほほう、おもてなしですか。
はい、このおもてなしが生み出す“空気感”がとても心地よくて。
“空気感”・・・ですか?
はい。
私は常々、いい温泉旅館には“空気感”こそが大事だと思っています。
(~以下省略~)
なるほど。
ボーンのアニキ、教えてくれ・・・。
このライターさんの記事を手直ししたいんだが、どこからどう手を付けていいのかがわからないんだ・・・。
手直しはムリだな。
え・・・。
これだけ特徴のある文体だ。
おそらく、本人としては自分の文章に強いプライドをもっているはずだ。
大きな手直しの指示は、このライターのやる気を削ぎ、記事の勢いを殺すことになるだろう。
そ、そんな・・・。
そして何より、このライターは“取材”に慣れていない。
取材をベースとした記事をこれ以上書かせるのもよくないだろう。
や・・・やっぱり・・・。
このライターはあくまでも“自分が主役になる文章”を書くことを得意としている。
自己顕示欲が強すぎるのか、それとも、取材時に相手からあまり情報を引き出せなかったのか、どちらにしても、取材には失敗している。
・・・。
どんな名文を書くライターにも“向き・不向き”がある。
このライターは、今回のような“聞き役”に徹する必要があるコンテンツには向いていないのだろうな。
取材の際、相手の話以上に自分の話をペラペラ話しちゃうタイプみたいね。
あああ・・・。
(そういや、最初に会ったときから、そんな感じがしてたんだよな・・・)
高橋、焦って人選を誤ったな。
面目ねえ・・・。
バズボンバーのみんなにさえ、断られなければ・・・。
バズボンバー・・・。
高橋くん、どうしてあなたは、そこまでしてバズボンバーに記事を書いてもらおうとしているの?
えっ・・・!?
だ、だって、あの人たちの人気を借りられれば、「みやび旅」は一気にスタートダッシュできるはずですよ・・・?
ふふふ。
そんなに上手くいかないわよ。
だって、今回のような記事は彼らの得意分野じゃないもの。
得意分野じゃない・・・?
さっき、ボーンも言ったけれど、ライターには“向き・不向き”があるの。
今回の記事に一番必要なのは、須原の地で働く人たちの中に眠るコンテンツをうまく引き出すことよ。
そのコンテンツをうまく引き出すことさえできれば、記事に過度な演出なんて要らないの。
バズボンバーはタレント集団みたいなもの。
自分たちが主役になることで、魅力的なコンテンツをたくさん生み出している。
それは逆に、自分たちと一緒に仕事をする相手の個性をつぶしてしまう恐れもあるのよ。
今回のサーロインさんのようにね。
バズボンバーの伊藤くんはそれを知っているから、高橋くんの依頼を断ったのかもね。
自分たちの弱みを知り、苦手な闘いを回避するのもプロの能力よ。
そ、そうだったのか・・・!
ひとまず、問題はさっきの記事だな。
高橋、お前が手配したライターは、松戸屋の主人の中に眠るコンテンツをほとんど引き出せていない。
ううう・・・。
くそーっ、オレも取材に立ち会うべきだった・・・。
サーロインのオッサンに完全に任せっきりにしちまったものな・・・。
松戸屋の主人も、忙しい中、せっかく時間をとってくれたってのに・・・。
うう・・・。
サツキさんに大見得切ったあげく、こんな記事しか見せられないんじゃあ、面目ねえにも程がある・・・。
・・・。
松戸屋はどこにある旅館だ?
え・・・?
ここから200mほど行った先にある旅館だけど・・・。
200mか。
ヴェロニカ。
・・・頼む。
OK、ボーン。
松戸屋さんに今日泊まれるかどうか聞いてみるわ。
ついでに、チップ捜索につながる手がかりがないかも調べてくるわね。
・・・???
お前をWeb集客のプロとしてサツキたちに紹介した手前、初回の記事でつまずき、お前への信用を失わせるわけにはいかんからな。
今回の記事はヴェロニカに書いてもらうことにする。
えっ!!?
ヴェロニカさんが・・・!?
フフフ、こう見えて、取材記事のライティングは得意なのよ。
ヴェ、ヴェロニカさんって一体・・・。
忘れたのか?
ヴェロニカはオレのパートナーだぞ。
Webマーケティングに関する施策には一通り精通している。
なんだか申し訳ないです・・・。
オレの不甲斐なさが原因でご迷惑をかけてしまって・・・。
高橋くん、心配しないで。
あなたはまだ経験が少ないだけ。
この間のプランニングシートを見れば、あなたが一人前のWebディレクターを目指すためにどれだけ頑張ってきたかわかるわ。
ヴェロニカさん・・・。
松戸屋の主人には、二度目の取材を受けてもらうことになるな。
主人には申し訳ないが、なんとか協力してもらうしかないだろう。
きっと大丈夫よ。
私は松戸屋に宿泊するわけだし、宿泊客からの頼みという形なら、少しは時間をとってもらえるはずよ。
ただ、松戸屋さんのお仕事の邪魔をすると悪いから、取材はさくっと切り上げるわね。
まかせたぞ。
ヴェロニカさん、よろしくお願いします・・・!!
この記事、とっても素敵ですね・・・!
さすが、高橋さんが選んでくださったライターさんです!
須原「松戸屋」のご主人が選ぶ、カップルや夫婦にオススメの温泉旅館 7選
「旅館を選ぶときは、みんな、部屋・食事・温泉の3点で選ぼうとするんだけど、実は“空気感”こそ大事なんだ」
そう話してくださったのは、須原にある温泉旅館「松戸屋」のご主人、松戸良太郎さんです。
はじめまして、「みやび旅」のライター、一ノ瀬みやびです。
このサイト「みやび旅」は、須原にある温泉旅館「みやび屋」が運営する“日本国内の上質な旅を再発見するメディア”。
「上質なものはその道のプロに聞く」のポリシーのもと、須原で働く旅のプロフェッショナルに教えていただいた“旅に関するとっておきの情報”をご提供していきます。
今回、とっておきの情報を教えてくださったのは、須原にある温泉旅館「松戸屋」のご主人、松戸良太郎さん。
松戸屋さんは大正時代から続く旅館。
華やかさをまとった大正ロマン漂う建物は、全国にファンが多く、須原の名所としても有名です。
松戸良太郎さんはそんな歴史ある「松戸屋」の5代目。
今回私は、松戸良太郎さん(以後:良太郎さん)に、“カップルや夫婦で訪れたいオススメの温泉旅館”についてお話を聞くことができました。
大切な人との旅行先を探している方にぜひお読みいただきたい記事です。
●今回のインタビューに答えてくださった方
松戸良太郎さん
須原温泉にある老舗旅館「松戸屋」の5代目。
温泉旅館を経営する傍ら、時間を見つけては全国の温泉旅館を渡り歩き、「心から安らぐ旅館とは何か?」を探求し続けている。
奥様との最初の旅行先は有馬温泉。
宿泊した旅館のおもてなしが素晴らしく、それがプロポーズ成功のきっかけになったとか。
>>松戸良太郎さんの旅館「松戸屋」のサイトはこちら
■目次
- 松戸良太郎さんが考える、カップルや夫婦で訪れたい温泉旅館に必要な要素
- 松戸良太郎さんがオススメする温泉旅館 7選
- 山谷温泉「聚楽(じゅらく)」
- 地乃浦温泉「山楽庵」
- 間白温泉「御宿 間白」
- 茶岳温泉「秀麗館」
- 竹村温泉「彩の宿 竹々亭」
- 衣駆温泉「お宿 瑞宝」
- 鼓立温泉「旅亭 まつ井」
1、 松戸良太郎さんが考える、カップルや夫婦で訪れたい温泉旅館に必要な要素
「大切な人と美味しいご飯を食べに行ったときに記憶に残るのは、そのご飯の味ではなく、ふたりで楽しく時間を過ごしたことだったりする。
旅も同じさ。
泊まる旅館の設備や食事の美味しさ、温泉の泉質といったこと以上に、“そこで過ごしたふたりの時間が楽しかったかどうか”ということのほうが大事なんだ」
そう語り始めた良太郎さんは、そばにあったアルバムを開き、各地の旅館で奥様と一緒に撮った写真を見せてくれました。
「どの写真もいい笑顔だろ?
嫁さんと行った旅館の中には、正直二度と行きたくないような旅館もあった。
そういう旅館では写真を撮らねえようにしてるから、この写真に写っている旅館は、すべて、オレが心から気に入った旅館さ」
そう言って笑った良太郎さん。
そして、次のように語られました。
「旅館を選ぶときは、みんな、部屋・食事・温泉の3点で選ぼうとするんだけど、実は
“空気感”こそが大事なんだ」
空気感?
ピンと来ていない私に、良太郎さんは続けて言いました。
「どれだけ部屋や食事が立派でも、空気感がよくない旅館は多いもんだ。
いい旅館には、心地よい風が吹いている。
足を踏み入れ、そこで働く人の笑顔に触れた瞬間、“ああ、ここで働いている人たちは、この旅館が好きなんだろうなあ”ってのがわかるんだ。
空気感は、人が作り出すもんだ。
そして、旅館ってのは、人が人をもてなす場所だ。
だから、旅館の質ってのは、そこで働く人の質で変わるのさ。
大切な人と過ごす大切な時間だからこそ、その時間を心から託せる人たちのいる旅館を選んだほうがいい。
今回は7つ旅館を紹介するが、どの旅館もいい風が吹いていたぜ」
そして、良太郎さんは、次の旅館を教えてくれたのです。
2、 松戸良太郎さんがオススメする温泉旅館 7選
「聚楽(じゅらく)」は兵庫県の名湯「山谷温泉」にある温泉旅館です。
部屋数は5つと、とても小さな温泉旅館なのですが、初めてこの旅館に宿泊された良太郎さんはビックリされたそうです。
「煎茶へのこだわりにビックリしたよ」
(~以下、省略~)
サツキさん、喜んでくださってうれしいです。
この調子で第2弾、第3弾の記事もアップしていきますね。
あ、ライターさんのお名前が「サーロイン杉本」さんではなく、「一ノ瀬みやび」さんになっていたのですが、サーロイン杉本さんはどうされたんですか・・・?
あっ・・・!!
サーロイン杉本さんは、あ、あれです!
サーロインステーキの食べ過ぎで夏バテならぬ肉バテになってしまったようで、今回急遽、私の知り合いの「一ノ瀬みやび」さんにお願いしたんです。
サーロインさんに期待してくださっていたのに、すみません・・・!
いえいえ!
問題ありません。
代打の一ノ瀬さんがこんなに素敵な記事を仕上げてくださったんですから。
高橋さんにすべてお任せします。
それにしても、サーロインさん、ご体調は大丈夫なんでしょうか・・・?
き、きっと大丈夫です!
安心してください!
(・・・しかし、今回はヴェロニカさんに助けられたな・・・。
まさかヴェロニカさん、ライティングもこんなに得意だったなんて)
高橋くん、松戸屋のご主人から興味深い話をたくさん聞いてきたわよ。
ありがとうございます・・・!!
今回、松戸屋のご主人には私がインタビューに伺ったことを内緒にしてもらう約束を交わしたわ。
サーロインさんの取材が失敗していたことはサツキさんたちにはバレないと思うから安心して。
そ、そんな配慮まで・・・!!
本当にありがとうございます・・・!!
高橋くん、せっかくだから、今回、私が松戸屋さんへの取材で使ったノウハウを教えておくわね。
ノウハウ・・・?
そう。
取材のノウハウよ。
この間ボーンもいったように、インタビュー記事はね、取材時に相手の中に眠るコンテンツをどれだけ引き出せるかで勝負が決まるといっても過言ではないの。
サーロインさんの記事はおもしろかったんだけれど、彼の記事は明らかな「取材力」不足だった。
取材力・・・?
そう、取材力がないと、相手の中に眠るコンテンツをうまく引き出せないのよ。
・・・!
取材は、取材前の「準備」と取材中の「空気作り」のふたつが大事。
サーロインさんは、後者の「空気作り」が苦手だったのかも。
空気作り・・・。
空気作りは、音楽にたとえると、“アンサンブル”ね。
アンサンブルは、何かひとつの楽器が主張しすぎると崩れてしまう。
いいアンサンブルを奏でるためには、一緒に演奏する相手のトーン、リズム、フレーズに合わせて寄り添う必要があるの。
なるほど・・・。
サーロインさんは、松戸屋の主人と、いいアンサンブルを奏でられなかったんですね・・・。
サーロインさんはたとえるなら“ソロミュージシャン”って感じね。
自分がステージの中央に立って、誰かに伴奏をしてもらわないといけないタイプ。
だから、伴奏者に徹しなければならないインタビューには向いてなかったのよ。
・・・!
今回は私が記事を書いたけれど、次回以降は別のライターさんに書いてもらうことになるわ。
インタビュー向けライターの人選をする際は、今から私が教える取材のノウハウを念頭に置きつつ、“取材力”のある人を選ぶようにしてね。
はいっ・・・!
●取材を成功させるためのポイント
取材はね、大きく分けて、取材前、取材当日、取材後の3つのプロセスに分かれるの。
どのプロセスにおいても配慮すべきポイントがあるから、それを覚えておいてね。
■取材前(準備)
1、ライターの手配
ライターを選ぶ際は、取材経験豊富なライターを選ぶに越したことはないけれど、もっと大事なのは第一印象のいいライターを選ぶことよ。
なぜなら、第一印象で悪い印象をもたれてしまうと、相手に警戒感を抱かれてしまって、なかなか話を引き出せなくなるからなの。
イケメンや美人を選ぶというわけではなく、明るく打ち解けやすい印象をもった人を選んでね。
また、そのライターが過去にどんなインタビュー記事を書いてきたか、ということも大事よ。
今回のサーロインさんの場合、彼の経歴をよく調べてみれば、過去にインタビュー記事を書いた経験がなかった。
どれだけいい文章を書くライターさんでも、インタビュー記事の案件においては、取材の経験があるかどうかは大事なの。
2、写真撮影の事前許可
もし、取材時に写真撮影をしたいのであれば、事前に取材相手にその旨を伝えておいてね。
でないと、当日、取材相手が「撮影向きではない服装」で現場に現れるなんてケースもあるから。
また、カメラマンを手配するのであれば、そのことも相手に伝えておいてね。
もし、ライターひとりで写真撮影までおこなう場合は注意が必要よ。
カメラマンを同行すれば、取材中でも写真が撮れるけれど、ライターだけで訪れている場合、取材中にライターがカメラを取り出すと、取材の流れが切れてしまう。
そうならないよう、ライターが写真を撮る場合には、取材後に撮らせてもらうようにしましょう。
3、下調べをしっかりしておく
取材当日までに、取材相手に関する情報をできるだけ集めておくことは大切よ。
「えっ!?そんな情報も知っているんですか?」と、相手が驚くくらいに細かく調べておいて損はないわ。
取材する側が相手のことをしっかり調べたということは、その行為自体が相手に対する敬意の表れになるの。
以前、高橋くんも読んだと思うけれど、デール・カーネギーの「人を動かす」という本は、取材力を上げる上でもオススメよ。
この本の中には、人に好印象をもってもらうための極意が書かれている。
たとえば、「相手に誠実な関心を寄せる」という極意は、まさに今、私が話した“取材相手に関する情報をできるだけ集めておく”ということにつながるわね。
4、取材の目標を立て、質問リストを作っておく
取材で大切なのは、「この取材を行ったのち、どんな内容の記事を書くか?」ということをあらかじめ考えておくことよ。
つまり、「取材の目標」を立てておくことが大切なの。
“取材をする前から記事の内容を考えておく”というのは変な話かもしれないけれど、目標を立てておかないと、どんな質問をすればいいかの方向性が決まらないわ。
また、取材の目標が決まっていれば、その目標を事前に相手に伝えておくことができ、相手も何のための取材かがわかって、心の準備ができるでしょ?
目標というのは、たとえば、今回の私の松戸屋さんへの取材だったら・・・。
「温泉旅館で働くプロの人たちに、それぞれがオススメする温泉旅館を教えてもらうことで、一般の人たちが普段気付かないような温泉旅館の楽しみ方を啓蒙したい。そして、その結果、インタビューを受けてくださった人たちのブランディングにもつなげたい」
というものになるわ。
こういった目標を立てておけば、どんな質問をすればいいのかが決まってくる。
たとえば、「温泉旅館のプロだからこそ、ほかの温泉旅館に泊まった際に気になるポイントは何ですか?」とか、「一般の人が露天風呂に入る際、気を付けたほうがいいポイントはありますか?」といった質問は、さっきのように目標を立てるからこそ、自然と浮かび上がってくるの。
そして、質問の候補が出揃ったら、事前にカンタンな「質問リスト」を作っておくといいわ。
その「質問リスト」があれば、取材相手に事前に「当日、こんな質問をします」ということを知らせることもできる。
また、もし、そのリストを渡した相手から「この質問はNGでお願いします」という返事があれば、事前に対処できるでしょ?
さらには、じっくり考えないと返答できないような難しい質問が含まれている場合には、当日までに答えを考えてきてくれるかもしれない。
なにより、質問リストがあれば、取材をする側も変に緊張しなくていいの。
取材は台本どおりに進んでいくものではないから、場合によっては、時間が押してしまうこともある。
そんなとき、質問リストに質問の“優先度”をつけておけば、慌てないで済むでしょ?
■取材当日(空気づくり)
1、レコーダーを使っていいかの許可をとる
相手の話を聞きながらメモをとっていると、メモをとっている間、相手の話を聞き逃してしまう恐れがあるわ。
そうなると、相手と会話が噛み合わなくなって、現場の雰囲気も悪くなってしまう。
だから、そうならないように、相手の話はレコーダーで録音しておくのがいいわね。
そうすれば、会話中は相手の話を全力で聞けるし、会話をレコーダーに残しておけば、あとから「言った・言わない」のトラブルも避けられる。
ただ、レコーダーを使う際は、必ず事前に相手に許可をとってね。
自分の話が録音されている状況を気味悪く感じる人も多いから。
レコーダーを取り出す際は、「記事を書く際に今日のお話を振り返るための録音ですので、けっして悪用はしません。ご安心ください」と伝えておくといいわ。
2、現場の緊張を緩和するために、雑談から始める
もし、相手が取材に慣れていない場合には、まずは相手の緊張を解くことが大切よ。
その上でオススメなのが、最初に軽く“雑談”をすることなの。
「天気」「健康」「食べ物」「芸能」「家族」「ペット」、そういったネタで雑談をすれば、誰とでも盛り上がりやすい。
また、雑談が思わぬトークに発展して、そこから面白い話が聞ける場合もある。
雑談は、取材におけるスパイス的な意味でもうまく取り入れてね。
3、「類似性の法則」を発動するために、共通点を探す
心理学にはね、「類似性の法則」という法則があるの。
これは、“人は自分と共通点をもつ相手に心を開きやすい”という法則よ。
この類似性の法則をうまく使えば、現場の雰囲気がフランクになりやすい。
たとえば、相手と住んでいる場所が近いとか、年齢が近いとか、大学時代の専攻が同じとか、好きな食べ物が同じとか、好きなアイドルが同じとか。
共通点はなんでもいいわ。
相手が企業だったら、極端な話、その企業の資本金と自分の誕生日の数字が似ている、なんてことでもいいの。
ちょっとしたことでも共通点が見つかれば、相手は取材する側に親近感を感じるようになる。
ぜひ、試してみてね。
■取材当日(取材中のあいづちや質疑応答)
1、相手とペースを合わせる(ペーシング)
取材中は相手が話しやすいように“会話のペース”を調節することが大事よ。
取材で大事なのは、リズムをうまく作ること。
相手がリズムに乗れば、言葉はどんどん湧き出てくる。
逆に、リズムに乗れなければ、話はどこか噛み合わなくなる。
あいづちを打つタイミングひとつでリズムは変わってくるの。
相手とペースを合わせることを「ペーシング(pacing)」と呼ぶんだけど、相手の話のスピードに合わせて、最適なタイミングであいづちを打ったり、質問を投げかけたりするのが大事よ。
もし、質問した際、相手が退屈そうにしている場合は、その質問は相手にとっては過去に何度も聞かれている質問なのかもしれない。
その場合には、質問の内容を大きく変えてみることも大事よ。
2、「話をしっかり聞いています」感を出す
取材が進んでいくと、相手によっては、「自分の話っておもしろいのだろうか・・・?」ということを気にし出したりする。
だから、聞き手は相手を不安にさせないよう、「私はあなたの話をしっかり聞いていますよ、あなたの話は面白いですよ」ということを要所要所で意思表示する必要があるのね。
その際に使えるテクニックが、「なるほど・・・!そうなんですね・・・!」と大きくあいづちを打ったり、相手の話を要約して「なるほどです!つまり~~ということなんですね」と発言することなの。
また、「先ほどおっしゃっていた、あのことなんですが・・・」と少し前の話題を振り返ることもオススメよ。
「この人は自分の話をしっかり覚えてくれている」と感じてもらえるから。
とくに、相手の話を振り返ることは、取材する側が取材相手の話を間違えて解釈していないかという確認にもなるの。
3、相手が考え込んでしまったときは、沈黙を恐れず、じっくりと待つ
質問したあとに相手が考え込んで黙ってしまったとしても、焦って答えを求めてはダメよ。
その沈黙は、相手が答えを出すためにじっくり考えているということ。
取材ではペーシングが大事だから、たとえ長い沈黙が続いても、相手のペースに合わせて、焦らず、ゆっくり待ってあげてね。
ただ、相手が答えにくそうにしている場合には、あえてさらに深く切り込んでもいいかもよ。
相手が答えにくい質問にこそ、ほかでは話していない金脈が眠っていたりするから。
4、基本的に、こちらが“教えを乞う”スタイルで取材にのぞむ
取材のときに一番やっちゃいけないこと。
それは、“取材相手と対等な立場で話をする”ということよ。
取材する側は「相手から教えを乞う=教わる」という立場で、相手を立てつつ取材にのぞむことが大切なの。
とくに、年齢差があるような相手や社会的な地位が高い相手の場合はね。
そういう人たちは「教えてください」と目を輝かせる弟子のような人を好む傾向にあるの。
だから、取材する側も、そのような姿勢で取材にのぞめば、いい結果が得られるわ。
5、相手の言ったことを深掘りする
相手が話したことに対して、常に「Why(なぜ?)」で考えるようにすれば、相手の話をどんどん掘り下げることができる。
ただ、あまりにも「Why(なぜ?)」が多すぎると相手が疲れちゃうから、ほどほどにね。
6、「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」を使い、質問にリズムをつくる
「オープンクエスチョン」というのは、回答が自由な質問のこと。
たとえば、「あなたが好きなタレントは誰ですか?」といった質問のことよ。
一方、「クローズドクエスチョン」とは、回答が「Yes(はい)/No(いいえ)」の2パターンに分かれるような、あらかじめ回答のパターンが決まっているような質問のこと。
たとえば、「あなたはオードリー・ヘップバーンが好きですか?」といった質問のことよ。
「クローズドクエスチョン」の場合、回答がシンプルなので、回答者の脳が疲れにくいメリットがあるわ。
取材の場合、ほとんどの質問が「オープンクエスチョン」になるんだけど、ときどき「クローズドクエスチョン」を交えることで、相手の脳の負担を下げてあげることができるの。
■取材後
1、記事が公開されるまでのフローを伝える
取材が終わったあとは、その取材に関する記事が、いつどんな形で公開されるのかを相手に伝えてね。
記事が公開されるスケジュールを伝えておけば、相手が記事内容の確認などを手伝ってくれやすくなるから。
2、取材後の雑談にも気を抜かない
取材を終えたばかりのリラックスした相手と話していると、思わぬ情報を得られることがある。
だから、取材する側は取材後もリラックスせず、相手に対してアンテナを敏感に張っておくといいわ。
3、編集・脚色の許可をもらう
取材した内容によっては、どうしてもおもしろい記事をつくるのが難しい場合がある。
たとえば、質問の答えが思っていたよりも普通だったりするとき。
そのときは、取材した内容を“事実に反しない範囲”で少し色づけする可能性があるということを伝えておくといいわ。
もちろん、脚色はあくまでも脚色よ。
事実とかけ離れたような内容にしてはダメよ。
4、録音や、撮影した写真を確認する
取材が終わったら、録音したファイルや撮影した写真を必ず確認してね。
もし、うまく録音できていなかった場合、もう一度聞いておきたい内容があれば、その場でお願いしてもう一度話してもらうことも大切よ。
また、よい写真が撮れていなかった場合も、その場で撮り直しをさせてもらえる場合があるから、あきらめないで。
5、御礼メッセージを送る
取材が終わったら、できればその日のうちに御礼メッセージを送っておいてね。
相手はあなたのために貴重な時間をとってくれたわけだから、その相手に対する感謝の気持ちはできるだけ早く示したほうがいいの。
マナーを大切にする人だということを相手に印象付けておくことで、次回、同じ相手を取材することになっても、いい雰囲気で進められるはずよ。
6、記事を作成する
取材で得た情報は、一旦は「マインドマップ」などで整理するといいわ。
情報を整理することで、記事の構成も決まってくる。
インタビュー記事を作成する際の一番の注意点は、会話をそのまま記事にしないということ。
取材時の会話をそのまま記事にしてしまうと、余計な言葉がたくさん入ってしまって読みづらくなってしまうの。
また、検索エンジンにも評価されにくい記事になるわ。
会話を入れる際は、適度な量を意識しつつ、読みやすさに配慮した編集をおこなうようにしてね。
(ヴェロニカさんに教えてもらったことを踏まえてこの記事を見返すと、あらためて素敵な記事だと感じる)
ほんとこの記事、いい記事だなあ。
この記事を読むと、紹介されているどの温泉にも足を運びたくなりますね。
そしてなにより、この記事のインタビューを受けている松戸屋の主人のことも気になってくるよな。
「“空気感”を大切にするご主人が経営している松戸屋って、きっと素敵な旅館なんだろうな・・・」ってな。
そうなりゃ須原にも興味が湧いてくる。
まさにアネキの狙い通りだぜ!
さすがだな。
ううん、この素敵な記事は、高橋さんのおかげよ。
高橋さん・・・本当にありがとうございます!!
へ、へへへ~。
次回の記事もまかせてください!
次回も“取材力”のある、素敵なライターさんをアサインしますから。
楽しみにしています!
よし、では、オウンドメディア「みやび旅」を公開するぞ。
はいっ!!!
な、なんだ、このメディアは・・・!?
「温泉旅館 カップル」で検索すると上位に表示されています・・・。
なぜ、この検索ワードで、こんなに少ない記事数のメディアが上位に食い込んでいるのだ・・・!?
みやび旅・・・!?
こ、このメディア、みやび屋のドメイン内で運用されているようです・・・!
ということは、みやび屋のオウンドメディア・・・!?
・・・!!!
おのれ、ボーン・・・!!!
あくまでも我々の前に立ちふさがるつもりか・・・!!
よし、もう一度チャレンジだ・・・。
一度断られちまうと、二度目は緊張するもんだな・・・。
ううう、男を見せろ、高橋!
高橋、もう一度、バズボンバーのところへ行ってこい。
えっ!?
オレ、仕事を断られたんだぜ・・・!?
それは当然だ。
お前があいつらのことを理解できていなかったからな。
お前がバズボンバーでインターンをして学んだことは何だったんだ?
あいつらのつくるコンテンツの“源”について、何かを学んだはずだ。
・・・!!
(何かを学んだはずだって言われても・・・歌舞伎町に連れ出されたり、顔中に落書きされたり・・・。
あれ・・・何を学んだんだっけ・・・)
お前、あいつらを自分の物差しで判断していないか?
思い出せ。
あいつらは普通のライターの器に収まるような男たちではないぞ。
お前が“リミッター”をかけていい相手ではない。
・・・!!
開放するんだ。
あいつらの可能性を。
開放・・・!!?
バズボンバーの皆さん、いらっしゃいますか?
・・・?
高橋か?
むしゅしゅしゅ??
あれ、高橋くん、また来たよ。
嗚呼、この私の美貌を拝みたくなり、再び訪れたのではなかろうな。
(スーッ)
伊藤さん!田中さん!山本さん!
バズボンバーにしか作れないコンテンツで、みやび屋を・・・。
須原を救ってください!!
むしゅしゅ???
まさかの再依頼?
・・・高橋、おめー、何言ってんのか、分かってんのか?
はい!!
オレ、バズボンバーの作るコンテンツのいちファンだってことを思い出したんです。
バズボンバーが作るコンテンツはどこよりも突き抜けてて、そして、おもしろくて・・・。
誰かが思いつくような企画で縛っちゃえるような人たちじゃないってことに気付いたんです。
だから・・・コンテンツの企画もすべてお任せします!
須原を救う、とびっきりのコンテンツをよろしくお願いします!
(言っちゃった・・・)
むしゅしゅ。
フッ・・・。
いいのか?高橋?
オレたち・・・ぶっ飛んだの作っちまうかもしれねーぞ。
・・・はい!
ぶっ飛んだの、ぶちかましちゃってください!!
・・・そこに座っときな。
見積書を作ってやる。
・・・ボーン・片桐とやら。
お前はこの世でもっとも敵に回してはいけない男の怒りを買ってしまったアル。
12号よ、そこにいるアルか?
はっ!
ボーン・片桐を・・・消せ。
やつはみやび屋に宿泊し、ヴェロニカと名乗る女性と共に行動をしているらしい。
・・・その女性と一緒に行動している男を消せばよいのですね。
そうアル。
・・・仰せのままに。
ヴェロニカの協力によって完成した取材記事。
その記事は遠藤たちに衝撃を与え、みやび屋のオウンドメディアの華々しい第一歩となった。
そして、ついに動き出すバズボンバー。
彼らがつくり出すコンテンツとは一体どんなものなのか・・・?
みやび屋に追い風が吹く中、ボーンたちの背後に忍び寄る黒い影。
その影は彼らにどんな試練を与えるのか・・・!?
次回、沈黙のWebライティング最終話。
「今、すべてを沈黙させる・・・!!」
今夜も俺のタイピングが加速するッ・・・!!