さらばボーン!沈黙の彼方に!
う・・・ううう・・・、こ、ここはどこなの?
わ、私は一体・・・。
気付いたか、松岡めぐみ。
あ、あなたたちは・・・!?
・・・・24時に港区の第三倉庫・・・
「めぐみさんの命を保証しない」って・・・。
これって警察に知らせたほうがいいんじゃないか・・・?
で、でも、警察に知らせると、めぐみさんの命が・・・。
・・・!!
・・・慌てるな。
俺がめぐみを助け出す。
そ、そんなボーンさん、危険すぎますよ!!
犯人はどんなやつか分からないのに・・・!!
・・・大丈夫だ。
お前たちはいつも通りにサイトを運営しておけ。
う、運営っていったって・・・
ボーン・・・!
・・・今夜はいつもよりインデックスが加速しそうだな。
(・・・ここか)
防音扉か。
はああああ!
ギ・・・ギギギギ・・・
ボ・・・ボーンさん!!!!!
・・・!
おおっ!?
何だこいつ、いきなり入ってきやがったぜ!?
誰だ~お前は~!!?
・・・。
ボ、ボーンさん!!
危ないです!!
逃げてください!!
ハッハッハッ!!
よく来たな、ボーン・片桐。
・・・いや、ジェイムス・ボーン!
・・・お前は・・・。
ガイルマーケティング、執行役員「遠藤」。
・・・おっと!
古い肩書きは持ち出さないでくれ。
俺は今やガイルマーケティング日本法人の社長だ。
・・・。
・・・フフフ・・・。
お前に会うのは5年ぶりだな。
まさか、お前がまだWebマーケッターとして生き残っていたとはな。
めぐみを解放しろ。
・・・お前たちの望みは何だ?
フッフッフ・・・。
Webの市場からお前に消えてもらうことだ。
・・・!
お前がマツオカのWebコンサルティングを引き受けたことは知っていた。
我々に挑んだことを後悔させてやろうと思ったが、まさか、あそこまでマツオカのWebサイトを立て直すとはな。
おかげで、俺に対するリンク社長からの信頼はガタ落ちだ。
今もリンクを販売し続けるお前たちに、未来はない。
ハッハッハ!
闇のWebマーケッターに堕ちたお前がいっぱしの口を利いてくれるではないか。
表舞台に二度と立てぬよう失墜させてやったはずなのに、まだ懲りてないようだな。
・・・失墜・・・?
何のことだ?
フフフ・・・。
こいつは驚きだ・・・。
さすがのお前も気付いていなかったようだな。
5年前、P社のソーシャルメディアを炎上させたのは俺だ。
・・・ジェイムス・・・!
P社のFacebookページやTwitterの公式アカウントに、たくさんのコメントが飛んできてるわ。
この記事が原因みたいよ・・・。
こ、これは・・・!?
なんだこの記事は・・・!?
P社の化粧品を購入した顧客が書いた記事みたい。
化粧品を使ったら、ひどい肌荒れが起きたって書いてあるわ。
しゃ、社長・・・!!
一体誰にやられたんですか・・・!?
ガ・・・ガイルマーケティング社には・・・気を・・・付けろ・・・。
しゃ・・・社長・・・!
い、いや、親父・・・!しっかりしてくれ・・・!!
は・・・ははは・・・育ての親である私をはじめて親父と呼んでくれたな・・・。
嬉しいよ・・・ジェイムス・・・。
ガクッ
お・・・
親父ー!!!
・・・なんだと・・・?
あの一件でクロス社の地位を落とし、ガイル社の吸収合併を成功させた俺は、今こうしてガイルマーケティング社の日本法人の代表に上り詰めたというわけだ。
貴様・・・。
ボーン社長の命を奪ったのも、貴様か・・・?
はて、何のことやら。
ニューヨークは物騒な町だ。
どこかの暴漢にでも襲われたんじゃないか。
・・・!
さて・・・。
これから消えゆく者とこれ以上話しても仕方がない。
お前たちにはそろそろ消えてもらおう。
・・・!!
ボーンさん!!逃げて!!
・・・大丈夫だ。心配ない。
お前たち・・・かかれっ!!
ひゃっはー!!!!
!!!!!
!!!?
グ・・
グフッ・・・。
・・・な・・・なんだこい・・・つは・・・。
つ・・・つええ・・・。
ボーンさん!!
貴様・・・!!
天下のガイル社ともあろうものが、こんな二流の傭兵しか雇えないとはな。
・・・次はお前の番だ・・・!
くっ・・・!!!
・・・ククク・・・ハッハッハ・・・!!!
ガイル社を見くびってもらっては困るな。
さすがのお前もこいつには勝てまい。
さあ、出番だ!
デイビッド!!
!!?
・・・お前は・・・!?
フシュー・・・・ッ。
フシュー・・・・ッ。
どうだ?
クロス社の元同僚と再会した気分は?
えっ・・・!?
あの人がボーンさんの元同僚・・・!?
・・・お前たち。
デイビッドに何をした?
なーに、ガイル社の出資先である某軍事系会社で秘密裏に開発された「興奮剤」をテスト投与したまでだ。
なにっ・・・・!?
人間の脳に作用し、神経回路に刺激を与えることで、人間が持つ筋力を180%引き出す興奮剤らしい。
投与された者は正常な意識を保てなくなるため、ある程度コントロールする側の“調教”が必要になるのがネックだがな。
どれ、その効果をこの目で確かめてみるか。
さあ!デイビッド!
ボーンを始末しろ!
ウガガガーッ!!!!!
・・・!!
フハハハハハ!!!
元同僚に襲われる気分はどうだ!?
こいつの戦闘力は先ほどのやつらとは次元が違うぞ!
デイビッド!
目を覚ませ!
ハーッハッハ!!
無駄だ!無駄だ!
今のこいつは、闘うことしか脳にない野獣と化しておるわ!
グフッ・・・!
ボーンさん!!!
ウガガーッ!!!!!
デイビッド!!
リスティング広告を運用していた頃のお前は、こんなやつじゃなかったはずだ・・・!
ハッハッハ!!
無駄だ無駄だ!
今のこいつにはお前の声など届いておらんわ!!
・・・!
(ボーンさんの様子がおかしいわ・・・!
どうして右手を使わないの・・・!?
もしかして・・・)
どうしたボーン!?
防戦一方ではないか!!
フハハハハハ!!!
・・・!
(ボーンさん・・・もしかして・・・腕を痛めているの・・・!?
はっ!!
私たちのWebサイトのために、その肉体を酷使してくれていたんだわ・・・!)
クッ・・・!
さあ!デイビッド!
ボーンにトドメをさせいっ!!
いやああああああ!!!
ウガガーッ!!!!!
・・・!!!!
・・・ンさん、ボーンさん・・・!
・・・?
よかった・・・!目が覚めて・・・!
・・・遠藤たちは・・・?
今・・・隣の部屋にいるようです。
・・・そうか。
・・・すまない。お前を助けに来たはずが・・・。
そ、そんなことないです!
私こそ、助けに来て下さった時、すごくうれしかったです・・・!
・・・。
マツオカのWebサイトは・・・大丈夫でしょうか・・・。
安心しろ。高橋と吉田には運営の手を休めるなと伝えてある。
良かった・・・!
あの・・・ボーンさん・・・。
何だ?
こんな時に聞くのは変かもしれないですけれど・・・。
昨日、「Webマーケティングプレス」から取材依頼が届いた時、どうして「取材を受けるな」っておっしゃったんですか?
・・・その答えは自分で見つけろと言ったはずだが。
・・・あっ、そうでしたね・・・。
ごめんなさい・・・。
・・・「沈黙」だ。
えっ・・・!?
「沈黙」こそが、成功した者に課せられた掟だからだ。
沈黙・・・。
その意味は・・・?
フハハハハ!
ようやく目を覚ましたようだな。
遠藤・・・!
さすがのお前も、戦闘マシーンとなったデイビッドにはかなわなかったようだな。
遠藤さん!
こいつ、俺たちでボコボコにして良いっすか!?
さっきの仕返しをさせてくださいよ。
まあ、待て。
こういうやつは肉体へのダメージなど苦痛に感じない。
だから、精神を攻めてやろう。
・・・。
フッ、特に無反応という感じだな。
だが、この話を聞いて、お前たちは冷静でいられるかな?
話・・・?
何も知らず二人して並んでいるお前たちを見ていると笑えてくるわ。
ボーン・片桐、市場の原理に詳しいお前も、自分の秘密には無頓着だったようだな。
・・・どういうことだ?
お前と、その横にいる松岡めぐみが“兄妹”だということだ。
!?
えっ・・・!!?
松岡めぐみよ、お前の父である松岡英俊は、その横にいるボーンを捨てた男だ。
ボーン、お前は、自分を捨てた父親のWebサイトをコンサルティングしていたのだよ。
・・・!!!
ど、どういうこと!!?
私のお父さんがボーンさんを捨てた・・・!?
ボーンさんと私が兄妹・・・!?
フハハハ!!よかろう!
冥土の土産にお前たちの知らない真実を話してやろう!!
ガイル社のリサーチ力に感謝するんだな!
ボーン・片桐、いや、片桐健太郎。
またの名を、ジェイムス・ボーン。
お前はマツオカの現社長である「松岡英俊」と、今は亡き「片桐エミ」との間に生まれた。
当時、松岡英俊は学生としてアメリカに留学していた。
その時、日系アメリカ人だった片桐エミと出会う。
アメリカの地で恋に落ちた二人だったが、すれ違いから二人は別れ、英俊は日本へ戻り、エミはこれまで通り、アメリカで暮らすことになった。
しかし、別れた後、エミは気付く。
英俊の子を身籠もっていることに。
英俊と別れたエミは、その子を一人で産み、育てることを決意する。
やがて、一人の子供が生まれる。
エミはその子に「健太郎」という名前をつけた。
エミは、その子を女手一つで育て始める。
「父親は事故で失った」とウソをつきながらな。
・・・!!
エミはお前を養うため、街の求人板で見つけた仕事を始める。
その仕事の発注主こそが、お前の育ての父、クラーク・ボーンだった。
一生懸命働くエミの姿に、クラークはいつしか心を奪われていた。
そして、二人はやがて恋に落ちた。
しかし、その矢先、不幸が襲う。
エミが重い病にかかり、命を落としてしまったのだ。
母を亡くし、一人きりになったお前を、クラークは養子として引き取ることに決める。
健太郎ではなく、「ジェイムス」という名前に改名してな。
その頃、エミと別れた英俊は、日本で別の女性と結婚し、家業の家具屋を継いでいた。
そこで生まれたのが、めぐみだ。
エミが亡くなった時、英俊にも連絡が入った。
その時、英俊は自分の子供が生まれていたことを初めて知った。
アメリカへ渡った英俊は、自分が健太郎の親だと名乗り出ることを希望したが、クラークはそれを拒否した。
あの時の男が・・・俺の実の父親・・・。
英俊はお前への援助を申し出たそうだが、知っての通り、クラークの会社は急成長し、大企業の仲間入りをしていた。
お前にとってはクラークの養子となるほうが幸せになれる、そう考えた英俊は、お前の元から姿を消すことを決意した。
英俊にとって、お前との唯一の接点は、英俊がエミの葬儀から持ち帰った一欠片の遺骨と、その遺骨が眠る日本の墓なのだ。
母さんの墓に花を沿えていたのが・・・松岡英俊・・・!
その墓に眠る女性は、さぞ愛されておったのじゃろう。
毎月必ず、ある男性が献花しに来ておった。
・・・ある男性?
墓地を訪れる者が少なくなった昨今、珍しい男性じゃった。
お主と同じように、蘭の花を持って訪れておったよ。
・・・。
じゃが、その男性はここ3ヶ月ほど、姿を見せておらんのじゃ。
何かあったのかのう。
そ・・・そんな・・・。
・・・。
英俊もまさか実の息子が自分の娘にコンサルティングをしているとは思いもよらないだろう。
あの時から30歳近く年を重ねたお前の姿を見て、自分の息子とは気付くまい。
ボーンさんが・・・。
私のお兄ちゃん・・・。
さて・・・。
お前たちにはそろそろ消えてもらおう・・・と言いたいところだが、せっかく手に入れた獲物だ。
搾り取れるものは搾り取っておく。
・・・!?
デイビッド!
あれを持ってこい!!
ウガガーッ!
あ、あれは・・・!!
ボーンさんのノートPC!!
ボーンよ、セキュリティ対策としてノートPC自体の重量を重くするとは、さすがの発想だな。
しかし、このデイビッドの力にかかれば、このPCを開くことなど造作はない。
・・・!
ウ・・・ウガッ・・・ウガガ・・・!
ああっ!!ボーンさんのノートPCの蓋が開く!
ウガガー!!!!!
ハアッハアッ・・・。
フハハハハ!!!
ついにお前のPCの中身を見れる時が来たぞ!
世界最高を称するWebマーケッターがもつ情報を楽しませてもらうことにしよう。
・・・!
遠藤社長!
ノートPCは起動したんですが、ログインにはパスワードが必要なようです!
フッ、なるほど。
そう簡単にはアクセスさせてくれないということだな。
ボーン、パスワードは何だ?
大人しく言ったほうが身のためだぞ。
・・・。
まあ良い。
言わぬなら、その横にいるお前の妹から聞き出すだけだ。
えっ・・・!?
フヘヘヘヘヘ・・・!!!
きゃ・・・きゃああああっ・・・!!
待てっ!
めぐみは俺のノートPCのパスワードは知らない!
フフフフ・・・。
では、お前の口からパスワードを言うんだな。
さもなくば、こいつらはお前の妹に何をするか分からんぞ。
グヘヘヘヘヘ・・・!!!
「scand****」だ・・・。
ん?何と言った?
・・・「scandskw」だ。
フッ、素直に教えれば良いものを。
遠藤社長!
ログインができました!!
どおれ、どんな情報が詰まっているのか、楽しませてもらおう。
んんっ・・・??
どうした井上?
このマシン、やけに動作が遅くて・・・。
フォルダが開くまでにかなり時間がかかります・・・。
・・・。
なんだ、お前のマシン、動作がカクカクではないか!
世界最高のWebマーケッターともあろうものが、こんな遅いマシンで仕事をしているとはな!
笑わせてくれるわ。
(えっ・・・!?
以前、ボーンさんは「自分のマシンは世界最速だ」って言っていたけれど・・・)
くっ、これはイライラしますね・・・。
こんなマシンでよく仕事ができるもんだ。
まあ、そう焦るな、井上。
時間はたっぷりある。
・・・。
!?
なんだこの煙は・・・!!!
あ、熱っ!!!
え、遠藤社長!!、このノートPCが異常に熱くなっています・・・!!!
!?
ボーン、貴様!!何をしたっ!!?
何もしていないさ。
お前たちがチンタラしていたから、CPUがオーバーヒートしかけているだけだ。
オーバーヒート!?
俺のPCでアプリケーションを動かすのは10分が限界だ。
はあ!?
さきほどお前たちに教えたパスワードは、DOSコマンドのスキャンディスクコマンドだ。
お前たちがPCへログインしてから、スキャンディスクのアプリケーションは起動し続けていた。
俺のマシンのスキャンディスクアプリケーションは超高速でインデックスへアクセスする。そのため、SSDの読み込みが一時的に鈍る。
マシンの動作が遅かったのはそれが原因だ。
き、貴様・・・!!!
つ・・・つまり・・・どういうことなんでしょう?
あと30秒以内に俺のノートPCはこの倉庫もろとも爆発する。
!!!?
なぜ、俺のノートPCが40Kgを超えているか考えたことはあるか?
その筐体の奥に何が隠されているのかを?
くっ!!!!!
くそっ!!!!!
あ、熱っ!!!
遠藤社長!!尋常じゃない熱さです!!!
これは本当に危険かもしれません!!!
く、くそっ!!!
全員一旦外へ逃げろ!!!!
ひ、ひえええええええ!!!!!
ボ、ボーンさん!!!!!
大丈夫だ、お前は俺が守る。
・・・!!
総員退避・・・!!!!!!!
ボ・・・お・・・お兄ちゃん・・・!!!
た、高橋さん!!!
あ、あれっ!!!
うわわわわわわわ!!!!
そ、倉庫が燃えている・・・!!!
めぐみさん!!!
ボーンさん!!!
ボーン・・・!!!
11月13日に起きた港区の第三倉庫爆発事件ですが、今も現場検証が続けられています。
爆発の原因はいまだ不明です。
なお、この爆発における被害者はいない模様です。
高橋さん、あの爆発、今日もニュースで取り上げられていますね。
そうだな・・・。
でも、びっくりしたよ。
あの日、現場ではめぐみさんたちを見つけらなかったのに、マツオカのオフィスへ戻ってきたら、めぐみさんと知らないおっさんが店の前で寝ているんだもんな。
二人の容態は・・・?
あ、まだ意識は戻らないそうですが、命に別状はないということです。
・・・。
ボーンさんはどこに行ってしまったんでしょう。
・・・。
ボーンのアニキならきっと大丈夫さ。
あんなメモを残してくれていたし。
僕たち、ボーンさんのメモに書かれていたとおり、沈黙を守り続けていますが、本当に良かったんでしょうか・・・。警察に知らせなくて・・・。
うーん・・・。そうだよなあ・・・。
なんでボーンのアニキは「沈黙を守れ」なんて伝えてきたんだろ・・・。
あ、あなたは誰ですか!?
・・・ん~?
秘書ちゃん、どうかしたの?
ちょ、ちょっと困ります!!!
お・・・お前は・・・ボーン・片桐!!!?
な、なぜここに・・・!!
何を驚いた顔をしている?
お前はこの世から消えたはず・・・!!?
残念ながら、こうして生きているぞ。
!!?
今日はお前に忠告をしに来た。
マツオカには二度と手を出すな。
さもなければ、世界の市場からお前たちを排除する。
は・・・排除!?
な、何を言っているんだ?
け、警備の者たちは何をしている!!?
声を上げても誰も来ないぞ。
皆、外で眠っている。
・・・お前にこのUSBメモリを渡しておく。
USBメモリ!?
処分してもキリがないぞ。
マスターデータは俺たちが持っているからな。
こ・・・これはっ・・・!!!
え・・・遠藤・・・!!!
しくじったのね!!!!
安心しろ。
おれたちは“沈黙”を守り続ける。
な、なんだと・・・!?
それは・・・脅しのつもりか・・・!?
Webマーケティングには「沈黙」が不可欠だろ?
ん・・・んんっ・・・。
め、めぐみさん!!!
めぐみさん!!!
めぐみ!!!
私・・・。
良かった・・・!!!
このまま目を覚まさないのかと思って・・・。
あっ!!マツオカのサイトは・・・!?
大丈夫ですよ。
俺と吉田とで、しっかり運営してますから。
良かった・・・。
あれれれ、めぐみさん、起きて早々、サイトの心配ですか?
さすがはウェブマスターの鑑です!
えっ?
ははははははは。
・・・お父さん・・・。
ん?なんだい?
・・・ううん、なんでもないの・・・。
(お父さん、ボーンさんはね・・・私のお兄ちゃんだったんだよ)
あの子たち、Webマーケティングプレスからの取材を断ったようね。
それでいい。
自分たちのマーケティングの成功事例がWebに掲載されても、競合からの妬みしか生まれないからな。
大事なのは“沈黙”のWebマーケティングというわけね。
俺が表に出ないのもそれが理由だ。
それにしても、どうしてガイル社は、私たちがマツオカの案件に関わっていることを知っていたのかしら?
めぐみが俺たちへ依頼した際のハッシュタグを、ガイル社のソーシャル分析チームが見つけていたようだ。
どこから情報が漏れるかわからん世の中だな。
そうね・・・。
ガイル社は当分の間は大人しくなるだろう。
あのデータがある限り、あいつらは下手に手出しできない。
なるほど。
第二、第三のガイル社が生まれるのであれば、あえて今のガイル社を生かしておくということね。
マツオカがその売上げを上げていくためには「比較対象」となる競合が必要だ。
ガイル社が作るサイトは、ちょうど良い競合になりうる。
競合がいるからこそ、ビジネスはスケールしていく。
・・・ボーン、これからどうするつもり?
次のクライアントのところへ行く。
・・・あの子たちに別れは告げないの?
ああ。
(めぐみさん、高橋くん、吉田くん、がんばってね。
あなたたちなら、一流のウェブマスターになれるわ)
これが次のクライアントの情報だ。
・・・!
これは手応えありそうね。
乗れ、ヴェロニカ。
OK、ボーン。
あ、そういえば・・・。
ボーン、あの倉庫の爆発からどうやって抜け出したの?
・・・それは、発売中の「書籍」を読んで確認するんだな。