追憶の中に紡がれた言葉たち。
モノトーンの風景を照らすヘッドライトのような口跡。
それらは現実を呼び起こすのか、陽炎を見せるのか。
Webという名の漆黒の闇は
眠らぬ者をあざ笑うかの如く、言の葉を鎖につなぐ。
さあ、行こうか。
新たな戦いの地へ。

お父さん!!お母さん!!
目を開けてよ・・・!!

残念ながらおふたりはもう・・・。

親父・・・!
お袋・・・!

私・・・まだまだ、お父さんたちに教えてほしいことがたくさんあるのに・・・!!
なんで、私たちを置いて逝っちゃうの・・・!!!
ねえ・・・なんで・・・!!

・・・かみ・・・若女将・・・?

・・・あっ!

どうしたんだ?
今、ボーッとしてたよ。

も、申し訳ありません・・・!

いやいや、大丈夫かい?
疲れているんじゃないか?
むふぅ~、いやはや、しかし、この“みやび屋”の料理はいつ食べても美味いな。

ありがとうございます・・・!
お気に召していただき、大変恐縮です。
あっ、こちら、よろしければ、当館からのサービスでございます。

おっ!
こりゃあ、須原の地酒「喝采」じゃないか!
ほおおお、こりゃあうれしいね。

・・・しかし、サツキちゃん。
本当に大変だったな。
まさか、大旦那と女将があんなことになってしまうとはな・・・。
あの事故からもう半年か・・・。

・・・はい・・・。

おっと、すまねえ。
つい酒が回ってしまってベラベラと・・・。
ツラいことを思い出させてしまった。
この旅館はな、オレにとって、思い出の旅館なんだ。
須原の中で3つの指に入る温泉旅館「みやび屋」。
サツキちゃんも知ってのとおり、オレはこの旅館に毎年一回は宿泊している。
というのも、この旅館はオレにとっての思い出の旅館なのさ。
最初に訪れたのは、嫁さんとの新婚旅行だった。
あの頃、オレたち夫婦は貧乏で、海外へ旅行なんてとてもじゃないけど行けなかった。
そこで、国内で旅行先を探し、ガイドブックで知ったこの須原を訪れることにしたんだ。
「新婚旅行で来た」と言ったオレたちのために、ここの旦那はとびきりのご馳走を用意し、心から歓迎してくれたんだぜ。
そんな旦那の懐の深さに惚れたオレは、それ以来、毎年この時期になると、この宿を訪れることにしているのさ。

そうでしたか・・・。
今年も当館へお泊まりいただき、本当にありがとうございます。

ま、今年は旦那がいねえのが寂しいがな。

サツキちゃん、旅館の経営は大変だと思うが、なんとか、この旅館を守っていってくれよ。
頼んだぞ。

はいっ・・・!




お父さんとお母さんが亡くなってから、もう半年か・・・。
私、ちゃんと女将を務められているかな・・・。

あ、いけない、今日のホームページからの予約を確認していなかったわ。

えーと・・・。
今日のホームページからの予約は・・・。
1件か・・・。
はぁぁぁ・・・。

・・・。
あ、そうだ!
今夜はたしかムツミが帰ってくるんだったわ。

ただいま帰りましたよ~っと!

この声は・・・。

アネキ~、どこにいるんだい?

ムツミ!

アネキ~!

もうっ、帰ってくる時間くらい教えてくれれば、駅まで迎えに行ったのに。

へへへ、重い荷物は前もって送ってるし、オレなんかのために大切な送迎車を使っちゃったら、お客さんが困るだろ?

お客さんっていっても、今日は2組のお客さましか宿泊されていないの。

2組・・・。

さあさ、早く上がって、荷物を部屋に置いてきなさい。
お茶でも入れるから。

ういっす!




それにしてもビックリしたわよ。
夢だったプロミュージシャンになる道をあきらめて、突然、ここへ戻ってくるって聞いたときは・・・。

へへへ・・・。
まあ、親父の反対を押し切って威勢よく上京したものの、オレのサウンドを理解してくれるプロデューサーに巡り会えなくてさ。
最近は都会の空気にも飽きてきたし、そろそろ帰ろうかと思ってたんだ。

そうなのね。

それにしても、親父とお袋が死んでから、もう半年か・・・。
親父たちには随分心配をかけたな・・・。

ムツミ・・・。

親父には結局、最後まで反対されたままだったけど、親父を説得してくれたのはアネキだった。
本来、この旅館を継ぐのは長男であるオレの役割だったのに、「私がこの旅館を継ぐから」と言ってくれた。
本当に感謝してるぜ。

ううん、私ってさ、ほら、とくに取り柄がないから。
ムツミには音楽の才能があったわけだし。

あっ、そうそう!
お父さんとお母さん、実はね、ムツミが上京してから、ムツミの音楽活動をこっそり追ってたのよ。
毎日ムツミのバンドのホームページを覗いちゃったりして。

えっ!?
そうだったのか!?
なんだよ、親父たち・・・。

・・・アネキ。
ここに来る前にメールしていたように、オレはここで働くぜ。
これまでオレは好き勝手させてもらったんだ。
アネキにはこれ以上苦労させるわけにはいかねえ。

だから、私は大丈夫だって言ってるじゃない。
それよりムツミ、あなた、ミュージシャンの夢・・・本当にあきらめちゃうの?

ああ。
もうキレイさっぱり未練はないさ!

・・・。
あれだけ音楽が好きだったムツミが、ミュージシャンを辞めちゃうなんて、信じられないけど・・・。
あのね、何度も言うとおり、うちの旅館のことは心配しなくても大丈夫なのよ。
最近、ようやく経営も軌道に乗ってきたところだし。

・・・。
・・・アネキ、今日は“2組しか宿泊していない”って言ってたよな。
今日は土曜だぜ。
土曜にこんなに宿泊客が少なくて、本当に大丈夫なのかよ?

そ、それは・・・。

うちのWebサイトからの予約はどんな感じなんだ?

え、えと・・・。
今日は1件・・・だったかな・・・。

い、1件・・・!?

・・・まあ、安心しろよ。
実はオレ「Webマーケティング」ってやつに詳しいんだぜ。
みやび屋のサイトからもっと予約が入るようにしてやるよ!

Webマーケティング・・・?

ああ、うちのサイトを今よりも多くの人に見てもらうようにするってことさ。
オレさあ、バンド活動をしていた頃、バンドのサイトの担当だったんだ。
ファンを増やすために、サイトへの集客もがんばっていたんだぜ。

そうだったのね。

まあ、詳しいことはオレに任せて、アネキは大船に乗った気でいてくれよな!

・・・わかったわ。

さて・・・と。
じゃあ、早速、うちのサイトの状態でもチェックするかな。
そこのパソコン借りるぜ。

アネキ、たしか、うちの旅館は「旅休トラベル」への掲載は止めたんだったよな。

うん・・・。
月額費用や予約手数料が年々高くなってきていたから、契約更新しなかったの・・・。

なるほど・・・。
じゃあ、今のところ、Webからの集客はうちの旅館のサイトからのみってわけか。

あ、うちのサイトには「アクセス解析」は入ってるか?

アクセス解析?
あ、ホームページにどれくらいの人が来ているかを見る画面のこと?
え・・・と、たしか、うちのホームページを作ってくれた業者さんが設定してくれていたはずよ。
あ、これだわ。
はい、これがIDとパスワード。

サンキュ。
なるほど、Google Analyticsを入れてんだな。
よっしゃ、ログインしたぜ。
「Google Analytics(グーグルアナリティクス)」とは、Googleが提供している無料のアクセス解析サービスのことである。
このサービスを使えば、サイトにどれだけの人が訪れたか?また、その人はどういったメディアを経由して訪れたか?といったデータを確認することができる。

なんだこりゃ!?
1日に20人くらいしかアクセスしてねーじゃねーか!

えっ?
それって少ないの?

当たり前さ・・・。
1日に20人しかアクセスがないってことは、ほとんど予約が入らない計算になるぜ・・・。
なんかの本で読んだことがあるんだけど、サイトからの成約率ってのは、大体1%前後、多くて5%くらいらしい。
だから、1日に20人ってことは、1日に1件予約が入ればいいほうだと思う・・・。

えっ・・・!
(だから近頃、ホームページからの予約が入らなくなってたんだ・・・)

うーん、うちのサイト、こうやって分析してみると、問題がいっぱいありそうだな・・・。

そ、そうなの・・・?

ま、いいや。
とりあえずはオレに任せてくれよな。
じゃあ、オレ、ちょっくら頭をリフレッシュさせるために、ひとっ風呂浴びてくるわ。

えっ!?
ちょ、ちょっと、ムツミ、今はまだお客さまにお風呂をご利用いただく時間よ。

まあまあ。
今日は2組しか泊まっていないんだろ?
今の時間だったら、多分、誰も入ってこないさ。
つーわけで、ひとっ風呂浴びてきま~っす。

んもう・・・。




さてとっ!
ひっさびさの我が家の温泉だぜ。
やっぱ自分ちに温泉があるってのは贅沢だよな~。

フン♪フン♪フ~ン♪っと。

ん?
んんんんん!!!?

・・・!!!!!!!

な、なななななななな、なんで、女の人が入ってるんだ!?

・・・!

もしかして、今の時間帯、この風呂、女湯になってんのか・・・。
脱衣所にほかの人の服があるかちゃんと確認すりゃよかった・・・。

・・・別の風呂に入りにいこう・・・。

しかし・・・キレイな姉ちゃんだったなあ・・・。




さっきは本当にビビったぜ・・・。
さーてと、気を取り直して、うちのサイトのアクセス解析でも見るか。

ふーん、なるほどね。
ここからのアクセスが少ないってわけか・・・。

よし!
まずは検索経由の集客の改善だな。
SEO(検索エンジン最適化)を軸にコンテンツを改修していくとすっか!
「SEO」とは「Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)」の略称であり、Webサイトが検索結果でより多く露出(上位表示)するためにおこなう一連の施策を指す。

(実はオレ、ここに来る前に、栃木の温泉旅館のサイトをいくつかチェックしてきたんだよね。
SEOに力を入れているサイトはそれほど多くなさそうだったし、SEOさえなんとかすれば、うちのサイトはもっと人が来るようになるはずだぜ)




お父さん、お母さん。
ムツミがね、帰ってきてくれたんだよ。
うちのホームページをなんとかしてくれるんだって。

でもね、うちの旅館、もうダメかもしれない・・・。
ムツミには言わなかったけれど、私が女将になってから、うちの旅館のお客さまは明らかに減ってるの・・・。
やっぱり、私じゃ力不足なのかな・・・。
お父さんたちが大事にしてきた旅館なのに・・・!



その頃、ムツミが温泉で見た女性は、誰かと電話で話をしていた。

ボーン、やっぱり、例の信号はこの旅館の一帯から出ているみたい。

・・・OK、ヴェロニカ。
オレもそちらへ向かう。




アネキ、おっはよー!

あら、ムツミ、早いのね。

早いもなにも、今日からはオレもこの旅館の一員として働くんだからな。
女将の弟だからといって、初日から重役出勤っていうわけにはいかないぜ。

ふふふ。

それはそうと、アネキ、オレ、うちのサイトを早速テコ入れしてみたんだ。

テコ入れ?

ああ。
近いうちに、「栃木 温泉」というキーワードで検索したら、うちのサイトが上位に表示されるはずぜ。

「栃木 温泉」で検索すると上位に表示?
そ、そんなこと可能なの?

へへへ~。
それが可能なのさ。
「SEO(検索エンジン最適化)」を施したからな。

SEO?

ああ、検索エンジンで何かのキーワードを検索したとき、そのキーワードで自分のサイトが上位表示されるように、サイトの中の文章なんかを書き換える作業のことさ。

へええ、文章を変えるだけでいいんだ・・・!
じゃあ、うちのホームページを、そのSEOの効果が出るようにテコ入れしてくれたってことなのね。

ああ。
テコ入れ後のサイトを見てみるかい?

え・・・と。
「栃木の温泉旅館みやび屋は栃木県須原にある温泉旅館でございます。創業から90年経った今も、栃木の温泉旅館の変わらぬ湯風景を守り続けております」
・・・。
なんだか、文章が不自然な感じがするんだけど・・・・。

大丈夫さ。
オレが読んだ本によると、SEOを成功させるためには、上位表示したいキーワードを文章の中に詰め込むことが大事らしい。
今回は「栃木 温泉」というキーワードで上位表示したいから、「栃木 温泉」というキーワードを多めに入れてみたわけさ。
ちなみに、キーワードを入れる場合は、文章に対して5%くらいの割合を意識するといいらしい。

5%・・・!
そんな明確な数字があるのね。

まあ、本に書いてあったことの受け売りだけどな。
キーワードが増えたことで、文章の見栄えがちょっとくらい悪くなっても、検索エンジンからのアクセスが増えたほうがうれしいだろ?

そ、それはそうかもしれないけれど・・・。

女将はいるか。

!?

な、なななななな、なんだこの人・・・!!?

あ、も、もしかして・・・片桐様でしょうか?
ヴェロニカ様のお連れの方ですよね。

ああ。

(このオッサンの横にいる女の人、昨日、風呂で見かけた姉ちゃんじゃねーか。
このオッサンとどういう関係なんだ・・・?)

朝早くからごめんなさいね。

いえいえ、大丈夫です。
ちょうどフロント業務を始めようとしていたところですから。

それでは、片桐様のチェックインのお手続きをさせていただきますね。
え・・・と、ボーン・片桐様、ヴェロニカ様と同じお部屋で13泊ということですね。

ええ。

(ヴェロニカ・・・?
外国の人なのか・・・?
たしかに顔はハーフっぽいけどな・・・)

片桐様、こちらがお部屋の鍵でございます。
お部屋の設備に関しましては・・・。

あ、部屋の説明は私から彼に話しておくわ。

恐れ入ります。

あらためまして、この度は当館にご宿泊いただき、本当にありがとうございます。
当館の女将を務める「宮本 皐月(サツキ)」と申します。

女将、昨日、こちらの温泉に入ったけど、すごく気持ちよかったわ。
ヴェロニカはそう言いながら、ムツミに目配せをした。

(・・・!
げ・・・風呂を覗いたこと、バレちゃってる・・・!?
い・・・いやいやいやいや、あれは不可抗力ってやつで・・・)

ありがとうございます!
そう言っていただけて、とってもうれしいです!
そのとき、女将の言葉を遮るかのように、ボーンが言葉を発した。

この旅館のサイトを管理しているのは誰だ?

え・・・あ、うちのホームページのことでしょうか?
以前は外部の会社に管理してもらっていたのですが、今はそこにいる、私の弟が更新を担当しています。

あら、そちらの方は女将の弟さんだったのね。

ムツミ、ご挨拶しなさい。

お、おう。
え、えと・・・。
みやび屋の「宮本 睦美(ムツミ)」と申します。
姉のサツキと一緒にこの旅館を切り盛りしています。

睦美に皐月・・・。
和風月名を表しているのかしら。
四季を感じる素敵な名前ね。

ありがとうございます・・・!
実はうちの父と母は、自分たちの子供の名前には、この旅館「みやび屋」の名にちなんだ雅(みやび)な名前を付けようと決めていたみたいで。

へええ~。
そうだったのか!

ちょっと、ムツミ・・・。
あなた知らなかったの?

ふふふ。
そうだったのね。

それにしても、あなたたち、経営者にしてはとても若いわよね。
先代の旦那さんや女将さんは、今はどちらにいらっしゃるの?

あ、先代は・・・私たちの父と母は・・・。
半年前に事故で亡くなったんです・・・。

えっ・・・!?

・・・。

なので、今は私たちがこの旅館を引き継いでいます。

そうだったのね・・・。
ごめんなさいね、変なことを聞いてしまって。

いえいえ!
大丈夫です。
むしろ、こんな若いふたりなので、頼りないとお感じになるのは当然です・・・。
もし、当館のご宿泊中に何かお気付きの点などございましたら、何なりとお申し付けください。

・・・では、早速言わせてもらおう。
この旅館のサイトは危ういぞ。

えっ・・・!?
サ、サイト・・・ですか・・・?

ちょ、ちょっと、あんた!
な、なんだよ、いきなり・・・!

ムツミ!
この方はお客さまよ。

実はね、さっき、ボーンと一緒にこの旅館のサイトを見ていたの。
そのときに感じたことなんだけど、この旅館のサイトの文章、すごく読みづらかったわ。
サイトのいたるところに「栃木 温泉」という言葉が不自然に詰め込まれていたけれど、あれには何か理由があるの?

あ、あれは・・・。
SEOを意識してて・・・。

SEO。
お前はこの旅館のサイトを「栃木 温泉」というキーワードで上位表示させたいのか?

あ、ああ。
そのとおりさ。
(なんだ、このオッサン、SEOに詳しいのか?)

このサイトは、そのキーワードでは上位表示できん。

・・・!?

えっ・・・!?

な、なぜだよ!?
なぜ、そんなことが言えるんだよ!?
ていうか、あんた、そもそも何者なんだ・・・?

こ、こらっ!
ムツミ・・・!

ふふふ。
彼の名は「ボーン・片桐」。
Webマーケッターよ。


Webマーケッター・・・!?

・・・ねえ、ボーン。
この旅館、料理も美味しいし、温泉も素敵なのよ。
これからしばらくお世話になることだし、少しだけサイト改善のアドバイスをしてあげてくれない?

・・・。

い、いや、アドバイスって言われても・・・。
とくに必要ねーし・・・。

坊や、ボーンの正規のコンサルティング料は1時間5万ドルなのよ。
私が言うのもなんだけど、もし、ボーンがアドバイスをくれるのなら、聞いてみるだけでも損はないわよ。

ご、5万ドル・・・?
(はあぁぁぁぁ!?
日本円で、ご、500万円かよ!!
怪しいオッサンだな・・・)

今日から世話になる宿だ。
いいだろう。
チップ代わりに、なぜ、この旅館のサイトが上位表示できないのかを教えてやろう。

・・・。

・・・デスクはあるか?
ボーンがサツキに尋ねた。

あっ・・・え、えっと・・・。

ボーンのノートPCを開くために、デスクかテーブルをお借りできるかしら?

ノートPC・・・?
は、はい!
事務室のデスクでよろしければ・・・。

問題ない。
サツキはボーンとヴェロニカを事務室へ案内するため、歩き始めた。

あ、ムツミ!
片桐様のお荷物をお持ちして!

あ、ああ。
オッサン・・・じゃなかった、片桐様。
このアタッシュケース、お運びしますよ。

!!!???

(な、なんだ、このケース・・・!?
むちゃくちゃ重てえ・・・!
一体何が入ってるんだ・・・!?)

大丈夫?
重いでしょ、そのケース。
運べるかしら?

ぐ・・・ぐぎぎぎぎぎ、だ、大丈夫ですよ・・・!

くれぐれも足の上には落とさないようにね。
そのケース、50kg近くあるから。

ご・・・50kg!!?
(このケースの中には何が入ってんだ・・・?)

運ぶのが大変なら、オレが自分で持つが。

い、いやいや、なんのこれしき・・・!
ぐ・・・ぐぎぎぎぎぎ・・・。
サツキはボーンとヴェロニカを旅館奥にある事務室へ案内した。
ボーンたちが入室した後、ムツミもボーンのアタッシュケースを持って入ってきた。

ここが事務室ね。

散らかっていてすみません・・・!
普段お客さまをお通しすることのない部屋なので、お恥ずかしい限りです。
あ、よろしければ、こちらのデスクをお使いください。

・・・わかった。

オ・・・オッサン・・・じゃなかった、片桐様、ア、アタッシュケース、こ、ここに置きますよ・・・!

はあっ、はあっ・・・。
(ほんと、何が入ってるんだよ、このケース・・・)

・・・始めるぞ。
ボーンはそう言うと、アタッシュケースをデスクの上に置き、そのケースを開いた。
中から現れたのは、真っ黒なノートPCだった。

(えっ・・・!?
あのケースの中にはノートPCしか入っていない・・・!?)

!?
(てことは、あのケースがめちゃくちゃ重いってことなのか?
で、でも、今、ノートPCを置いたときにズシンって音がしたぞ・・・)

ふたりとも、ボーンのノートPCが気になる?

え、えっと・・・。

ボーンのノートPCはね。
39.9kgあるの。


さ・・・39.9kg!!?

そ・・・そんなノートPC、アキバでも見たことねえ・・・!
ど、どこに売ってんだよ・・・!?

ふふふ。
ボーンのノートPCは特注なの。
あるメーカーが、彼だけのために作っているのよ。

特注のノートパソコン・・・!

突飛な質問をするけれど、もし、あなたたちがノートPCを使っているとして、そのノートPCのセキュリティを守るために考えられる“最も安全な対策”って何かわかる?

セキュリティを守るための対策・・・?

そう。

ウイルス対策ソフトを入れる・・・ってのは普通の回答か・・・。

そうね。
ウイルス対策ソフトを入れるだけでは安全とは言えないわね。
ノートPCが盗まれるケースもあるでしょ?

たしかに、ノートPCが盗まれたらどうしようもねーな・・・。
・・・って、まさか・・・!?

そう、最強のセキュリティ対策とは、ノートPCを“物理的に重くすること”よ。


!!!!!

彼のノートPCの表面は鉛でコーティングされている。
でも、それはカモフラージュ。
あのノートPCの筐体は“金”でできているわ。

重金属である金の密度は19.32。
そこから算出した重量は39.9kgだ。

!!!

40kgのノートパソコン・・・。
私、生まれて初めて見ました・・・。

・・・40kgではない。
「39.9kg」だ。

(なんで0.1kgの差にこだわってんだ・・・?)
やがて、OSの起動音とともに、ボーンのノートPCの画面に白い光がともった。

お前はおそらく、SEOを成功させるにはキーワードを詰め込むことが重要だと考えているのだろう。

あ、ああ・・・。
キーワードを詰め込む際は、文章に対して5%くらい詰め込むといいって聞いたぜ。

そんな化石のような知識は忘れろ。

か、化石・・・!?

今から見せる画面を脳に焼き付けろ。
その画面には、なぜ、この旅館のサイトが「栃木 温泉」で上位表示できないかの理由が隠されている。

えっ・・・!?

はああああああああ・・・!!!

みんな!
爆風に備えてっ!!

ば、爆風・・・!?
ボーンがエンターキーを叩いた瞬間、周囲に激しい風が巻き起こった。

きゃあっ!!

くっ・・・!
な、なんだ、この風は・・・!

心配しないで。
彼のキータッチによる風圧だから。

ふ、風圧・・・!

この画面を見てみろ。

こ、これは・・・!?

ただの検索結果じゃねーか?
この画面がどうしたっていうんだ?

検索結果をよく見てみろ。

・・・!?

「旅休トラベル」や「温泉マニア.com」、「ららん.net」・・・。

・・・何か気付くことはないか?

!!
これらのページ、栃木にある旅館をまとめて紹介しているページばかりだわ・・・!

えっ・・・!?
ほ・・・ほんとだ・・・。

なんでだよ!?
なんで、こんな検索結果になってんだ!?
ははあ・・・。
あんたのブラウザ、パーソナライズされた検索結果が返ってんだな?
「シークレットモード」にして、もう一回検索してみてくれよ。
「シークレットモード」とは、検索した際に“パーソナライズされた検索結果”を表示しないためのモードである。
パーソナライズされた検索結果とは、たとえば、Googleのアカウントにログインしている際、個人の行動履歴などに応じて調整された検索結果のことである。
このパーソナライズによっては、検索結果の情報がユーザーごとに変わってしまう。
もし、パーソナライズされた検索結果を表示させたくない場合には、Chromeなどのブラウザに用意されている「プライベートブラウジング(シークレットモード)」を使うとよい。

よく見て。
ボーンのブラウザはシークレットモードになってるわ。

えっ・・・!?

じゃ、じゃあ、なんでだよ・・・!
なんでこんな検索結果になってんだよ!?

「検索意図」の影響だ。

検索・・・!?

意図・・・?

・・・ヴェロニカ、説明してやってくれ。

OK、ボーン。
■検索意図と検索結果の関係について
今の検索エンジンはね、検索エンジンを使う人たちが、どういう「意図」をもって検索しているかという「検索意図」を推測して検索結果を返しているの。
たとえば、「栃木 温泉」というキーワードで検索する人たちの多くは、栃木にある特定の温泉の情報を探そうとしているわけではなく、“栃木にはどんな温泉や旅館があるのか?”という情報を知りたがっているケースが多い。
だから、「栃木 温泉」というキーワードの検索結果は、栃木にある温泉や旅館の情報が“網羅的にまとめられている”ページが上位表示されやすいの。

な・・・なるほど・・・。

ちなみに、今、ヴェロニカは“検索エンジン”と言ったが、オレたちが言う検索エンジンとはGoogleのことだと考えろ。
日本の検索エンジンはYahoo!とGoogleがシェアを分かち合っているが、今、Yahoo!はGoogleの検索エンジンの仕組みを採用している。
つまり、日本で“検索エンジン”という言葉を思い浮かべる際は、Googleのことを思い浮かべればいい。

Googleってすごいんですね・・・。

あ、あのさあ。
さっき、あんたたちは、“検索結果はユーザーの検索意図に合わせたものになっている”って言ったけど、それってなんか根拠あんのか?
あんたたちの推測でしかないんじゃねーのか?

どうやら、お前たちは「Googleが掲げる10の事実」というページを見たことがないようだな。

Googleが掲げる・・・。

10の事実・・・!?

ヴェロニカ、ページを見せてやれ。

OK、ボーン。
ふたりとも、このページを見てみて。

これは・・・!

Googleの会社情報のページ・・・!?

このページのひとつ目の文章を読んでみろ。

え・・と。
“ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる”。
・・・!?
1、ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
Google は、当初からユーザーの利便性を第一に考えています。
新しいWebブラウザを開発するときも、トップページの外観に手を加えるときも、Google内部の目標や収益ではなく、ユーザーを最も重視してきました。
Google のトップページはインターフェースが明快で、ページは瞬時に読み込まれます。
金銭と引き換えに検索結果の順位を操作することは一切ありません。
広告は、広告であることを明記したうえで、関連性の高い情報を邪魔にならない形で提示します。
新しいツールやアプリケーションを開発するときも、もっと違う作りならよかったのに、という思いをユーザーに抱かせない、完成度の高いデザインを目指しています。

この文章のとおりだ。
Googleは、ユーザーにとってもっとも利便性の高い検索結果を返そうとしている。

ちょ、ちょっと待てよ!
たしかに、この文章を読むかぎり、あんたの言ってることはわかる。
でもさ、実際のところ、Googleがこの文章のとおりに設計されてるなんてわからねーじゃねえか。

いや、わかるさ。
なぜなら、Googleも“一企業”だからだ。


えっ・・・!?

Googleという検索エンジンを提供し続けるには、当然のことながら運用費がかかる。
そして、その運用費はGoogleという企業の売り上げでまかなわれている。
では、その売り上げはどこから上がっているのか?

・・・?

「広告」だ。
たとえば、検索結果に表示されている広告。
あの広告がクリックされることにより、Googleは広告収益、すなわち売り上げを得ているのだ。

“検索連動型広告”ってやつか・・・。

では、その広告収益を増やすためにはどうすればいい?

あっ!
わ、わかりました!!

アネキ・・・?

広告がたくさん表示されればいいんです!
つまり・・・Googleを使う人がたくさん増えればいいんです!

そうだ。

・・・!
そ、そうか・・・!
Googleを使う人を増やすためには、Googleがほかの検索エンジンよりも使いやすくなればいい。
だから、Googleはユーザーの利便性を第一に考えているんだ・・・!

ふふふ。
話がつながったようね。

つまり、SEOを成功させたいのなら、検索エンジンを使うユーザーの「意図」を満足させるコンテンツが必要だ。


“検索エンジンを使うユーザーの「意図」を満足させるコンテンツ”・・・!!

つ、つまり、うちのサイトが「栃木 温泉」で上位表示されるためには、「栃木 温泉」で検索するユーザーが満足するコンテンツが必要ってことか・・・。

それってどんなコンテンツなのかしら・・・。


うーん・・・。

上位表示するコンテンツのヒントは、すべて“検索結果”に隠されている。

検索結果に・・・。

隠されている・・・!?

・・・今日から世話になる宿だ。
特別にヒントを教えてやろう。

(ボーン、もしかして、ここであの技を・・・!?)

・・・!
ふたりとも、ボーンから離れたほうがいいわよ!


へ!?

はあああああああああ・・・!!!

くっ・・・!!
またしても風圧が・・・!!

か、片桐様は今、何をしているの・・・!?

ボーンは今、ブラウザに表示した検索結果を高速で切り替えながら、その検索結果に表示されたコンテンツ情報をマインドマップにまとめているの・・・!

マインドマップ・・・!?

情報や思考を一枚の地図(マップ)のようにまとめたものよ・・・!

はあああああああああああ!!!

ま、まぶしい・・・!!

この光は・・・!!?

ボーンのタイピングスピードがあまりにも早すぎて、PCのグラフィックボードの描画スピードが追いついていないのよ・・・!

な、なんであんなにタイピングが早いんだ・・・!?

Webの仕事は基本的には座り仕事。
彼は、日々なまっていく身体を鍛えるために、光速のタイピングによって腕力をトレーニングする術を身につけたの。
彼が39.9kgのノートPCを自在に操れるのは、日々のタイピングの賜(たまもの)なのよ!

ふたりとも、目を瞑って!!
光で目がやられるわよ!!

くっ!!!

・・・!!!

・・・マインドマッピング、コンプリート。

・・・お・・・終わったのか・・・?

(さ、さっきの風圧、うちの旅館、大丈夫かな・・・)

女将。

は、はい・・・!!

このUSBメモリの中に、今オレが作ったマインドマップのPDFを保存してある。
プリントアウトしてくれ。

わ、わかりました!




片桐さん、印刷しました!

よし、ふたりともそのマインドマップに目を通せ。

こ、これは・・・。

「栃木 温泉」で上位表示するためのコンテンツのヒントをまとめてある。

えーと、なになに・・・。
“栃木県内の温泉を探しているユーザーに対して、栃木にある温泉や旅館の情報を、プロの視点でたくさん紹介したコンテンツ”。

・・・。
な、なんで、そんなコンテンツで上位表示できるってわかるんだ?

検索結果で実際に上位表示されているコンテンツを分析した結果だ。

検索結果で上位表示されているコンテンツ・・・?

今のGoogleは検索エンジンを使うユーザーの意図を満足させるコンテンツを上位表示させる傾向にある。
であれば、実際に上位表示されているコンテンツがどんなものかを分析すればいいだけだ。

!!!
そ、そうか・・・!!!

(た、たしかに、このマインドマップには、検索結果で上位表示されているコンテンツの情報がまとめられているわ・・・!)

・・・よし!
わかってきたぜ・・・!
特定のキーワードで上位表示させるためには、そのキーワードで上位表示している他社のコンテンツの真似をすればいいってことだな。

あら。
“参考”にするのはいいけれど、“真似”をするのはダメよ。
万が一、著作権違反なんかしちゃったら、モラルがない旅館だと思われてしまうわ。

む、むむむ・・・。
わ、わかってるさ!
あくまでも“参考”にするだけさ。

“参考”にすること自体は問題ではないが、誰が見ても他社と似たようなコンテンツを作ることだけは気を付けろ。
上位表示が厳しくなるケースがあるぞ。

えっ・・・?

お前がひとりのユーザーとして検索エンジンを使うときのことを考えてみろ。
同じようなコンテンツばかりが上位表示されていたらどう思う?
利便性がよいとはけっして思わないだろう。

た・・・たしかに・・・。

よって、上位のコンテンツを参考にしつつも、他社のコンテンツにはない“オリジナリティ”を意識するんだ。


オリジナリティ・・・!?

・・・おもしろい文章とか、ユニークな画像とかってことか・・・。

・・・それがお前の考えるオリジナリティか?
想像力のないやつだな。

(ム、ムカッ)

な、なんだよ!!
オリジナリティが重要だと言ったのは、あんたじゃねーか!

オリジナリティと聞いて、その程度の想像力しかないということは、お前はまだSEOの本質を理解していないようだな。

SEOの本質・・・?

検索エンジンを使って何かを検索するユーザーの多くは、おもしろい文章を求めているわけでも、感動する文章を求めているわけでもない。
“情報”を求めているんだ。

情報・・・!

自分だったら、どんな情報が欲しいかを掘りさげて考えてみることだな。

“どんな情報が欲しいか”・・・。




じゃあ、そろそろ私たちは部屋に戻るわね。

あっ、はい!
あ、ありがとうございます・・・!
こんなに長い時間、いろいろ教えていただいて・・・。

ううん、いいのよ。
私が言い出したことだから。

じゃあ、ボーン、部屋へ行きましょう。

ああ。

・・・。

坊主。
もうひとつヒントをやろう。
コンテンツを考える際は、さっきのマインドマップの下部に書かれている“3つの要素”も意識してみろ。

“3つの要素”・・・!?

そうだ。
“3つの要素”を満たしたコンテンツであれば、この旅館のドメインなら、2週間くらいで上位表示されるかもしれんぞ。

に、2週間!?
そんなに早く上位表示されるのか!?

・・・ヴェロニカ、行くぞ。

OK、ボーン。

坊や、またね。

・・・!




ぼ、坊主に坊や、って・・・。
子供扱いしやがって・・・。

ちょっと!ムツミ!
片桐様たちはお客さまなのよ。
口を慎みなさい。

へいへい。

マインドマップに書かれた“3つの要素”・・・。
これか・・・。
えーと・・・。
「専門性」「網羅性」「信頼性」・・・?

これらを満たしたコンテンツ・・・。
ちょっと考えてみっか・・・。




ムツミ、おはよう。

・・・。

どうしたの?
ムツミ?

ア、アネキ、この検索結果を見てみろよ・・・。

えっ?
あっ、ああっ・・・!!

これって、ムツミが作ったコンテンツよね・・・?
すごいじゃない!!
10位に表示されてるわ!!

あ、ああ・・・。

ムツミ、どうやってこのコンテンツを作ったの?

・・・カンタンさ。
あのオッサンの言うとおり、「専門性」「網羅性」「信頼性」を満たしたコンテンツを作ったのさ。

「専門性」「網羅性」「信頼性」・・・?

あのオッサンはこう言っていた。
“栃木県内の温泉を探しているユーザーに対して、栃木にある温泉や旅館の情報を、プロの視点でたくさん紹介したコンテンツを作れ”、と。
あのコンテンツこそが、まさに「専門性」「網羅性」「信頼性」を満たしたコンテンツだったのさ。

えっ・・・?
どういうこと?

シンプルに説明するぜ。
まず、「栃木 温泉」というキーワードで検索する人は、とにかく、栃木県内にどんな温泉や旅館があるかを知りたい。
だから、栃木県内の温泉や旅館に関する情報がたくさん掲載されたコンテンツを求めてる。
ただし、彼らは間違った情報は知りたくない。
だから、ある程度、“信用できる人”が作ったコンテンツを見たいと考える。
じゃあ、“信用できる人”とは誰なのか?
信用できる人とは、たとえば、オレたちのような旅館のプロや、全国の温泉に詳しい温泉愛好家だろう。
つまり、今回のコンテンツが「みやび屋」というサイトの中で公開されてるってことは、コンテンツが信頼されるひとつの要因になるんだ。
(ま、オレはほかの旅館の情報についてはまだあんまり詳しくないんだけど・・・)

なるほどね・・・!

そして、もうひとつ考えたことがあるんだ。

もうひとつ・・・?

それはな、検索エンジンを使う人の利便性を考えたとき、“そもそも、みんな本当に検索したいのか?”ってことさ。

“そもそも、みんな本当に検索したいのか?”・・・!?

極論かもしんねーけど、多分みんな、本当は検索なんてしたいわけじゃないんだ。
自分が知りたい情報を手に入れるための手段として、仕方なしに検索エンジンを使ってるだけじゃねーのかなって。

仕方なしに検索エンジンを使う・・・!?

ああ、そうさ。
言い方は悪いかもしれねーけどな。
だってさ、栃木の温泉に関する情報なんて、手元にガイドブックがあれば、まずはそっちを見るだろ?
おそらく、検索エンジンを使って情報を探す人は、手元に情報がないから、仕方なしに検索エンジンを使ってるんじゃないか、って。

なるほど・・・。
(実際のところ、今の若い人たちは本を読まずに検索エンジンで調べちゃいそうだけど、ムツミの意見は一理あるわ)

そう考えると、作るべきコンテンツが見えてきたのさ。
それは、検索エンジンで情報を探す人の“手間を省いてあげられるコンテンツ”だ。

検索エンジンで情報を探す人の“手間を省いてあげられるコンテンツ”・・・!

ムツミ、すごいわ・・・!
たしかに、あなたの言うことは理にかなってる・・・!

へっへ~。
あのオッサンたちに坊主や坊やなんて言われてバカにされたからな。
オレがただのガキじゃないってことを見せつけてやったまでよ。

ふふふ。

・・・ただ・・・。

“ただ”?

今回のコンテンツ、たしかに「栃木 温泉」で検索する人にとっては便利だと思うけれど、このコンテンツ経由でうちへお客さんが来てくださるのかしら・・・?

え・・・!?




・・・なんだ、このコンテンツは?
みやび屋・・・だと・・・!?

おい、エンドウ、これはどういうことアルか?

・・・!
こ、これは・・・!?
お、おい、井上、どうなっているんだ!?
我らのメディアはSEOに強いんじゃなかったのか!?

しょ、少々お待ちください!
む、むむむ。
これは一体・・・。

・・・ワタシはお前たちに検索結果からみやび屋を締め出せと言っておいたはずアル。

も、申し訳ございません!!
至急原因を調査いたします・・・!!
こ、こら、井上!

は、ははーっ!!

・・・お前たちの会社に、ワタシが何のために発注しているか忘れたわけではないアルな?

は、はい!!
も、もちろんでございます・・・!

みやび屋のコンテンツが上位表示された理由を早急に調べたのち、ワタシに報告するアル。


はい!!
承知いたしました!!

・・・サツキ。
どうしても、ワタシに反抗するつもりアルか・・・。

フフフ・・・。
おもしろいアルね・・・。




ボーン、ダメだわ。
この一帯から信号が発信されているはずなのに、まだ“アレ”がどこにあるか、まったくわからないわ・・・。

・・・そうか。

ただ、17日前に、都内からこの旅館の付近に“アレ”が動いたことは確かなの。
でも、“アレ”はわずか100gの小さな物体。
見つけるのには苦労しそうね。

・・・そうだな。

(まさか、オレのマシンにあんなものが隠されていたとはな・・・)

ヴェロニカ、どうやら“チップ”の捜索は長引きそうだな。
宿泊を延長しておいてくれ。

OK、ボーン。
須原の温泉旅館「みやび屋」に現れた、謎のWebマーケッター「ボーン・片桐」と「ヴェロニカ」。
彼らはなぜ、みやび屋を訪れたのか?
そして、彼らが探す“チップ”とは何なのか?
今、みやび屋を巡る壮大な物語が、静かに、そして残酷に幕を開ける。
次回、沈黙のWebライティング第2話。
「解き放たれたUSP」
今夜も俺のタイピングが加速するッ・・・!!