夜明けのSEOペナルティ解除
都会の雨はいつも冷たく、俺の身体を打ちつける
白い豹のボディに身を任せ、アクセルをゆっくりと踏み込む
そう、あの日から俺の中の時は止まっていた
ITバブルという名の、機械仕掛けの幻想は
1年もののバーボンのように、未熟な渋さを残し続けるだけ
機械仕掛けの市場は欲望を飲み込み
うなりを上げる
さあ、行こうか
依頼人の元へ
首都高速を走る一台のジャガー。
そこには男と女が乗っていた。
黒いアタッシュケースから鉛のようなプレートを取り出した男は、女にそっと渡した。
・・・ヴェロニカ。
インデックスを調べてくれ。
OK、ボーン。
男から指示された女は、そのプレートに手を置き、カバーを開けた。
プレートに見えた物体はノートPCだった。
・・・ダメね。クロールされていないコンテンツがあるわ。
・・・そうか。
ヴェロニカと呼ばれた女は、ノートPCの画面に表示された検索結果を見ながら、次々とコマンドを入力していく。
ふと、その手が止まった。
・・・ねえ、ボーン。
・・・今回の依頼、ガイル社への復讐だけが目的?
・・・。
男はヴェロニカの質問には答えず、黙ってアクセルを踏み込んだ。
彼の名は「ボーン・片桐」。
闇に隠れ、市場を操る、謎のWebマーケッター。
検索エンジンのアルゴリズムをも恐れない彼のことを、人はこう呼んだ。
「パーフェクト・リボーン(完全再生請負人)」と。
弊社のこのSEOサービスをお使いいただければ、もっと順位を上げることが可能です!
グレーのスーツに身を包んだ20代後半のその男性は、目の前にいる中年男性の目を見て訴えかけた。
SEOサービスねえ。ちょうどこの間、商工会議所主催のWeb集客セミナーで“SEO(検索エンジン最適化)”のことを教えてもらったばかりなんだけど、今って・・・その、なんだ・・・順位が上がりにくいんだろう?
「松岡 英俊」は、10分前にオフィスを訪ねてきたその男性に向かって、そう言った。
はい、そうなんです。
だからこそ、弊社の新しいSEOサービスが効果的なんです!
そう語る男は、長年使っているであろうボロボロになった革のカバンの中から、カラーでプリンアウトされた資料を取り出した。
この資料を見ながら、ご説明させていただきますね。
弊社の新しいSEOサービスは、自社が運営しているポータルサイトのサイドバーから、御社のサイトのテーマに合った“リンクテキスト”でリンクを張るサービスです。
テーマに合った・・・?
というのは、うちの会社と同じように“家具”の情報を扱っているホームページからリンクを張ってもらえる、ということかね?
はい、そうです。
その男は返事をした。
松岡は、先程この男から受け取った名刺の表と裏を繰り返し見ながら話した。
あなたのところの会社、株価がすごく上がっているそうだね。
買収をどんどん繰り返して、急成長してるって、すごいねえ。
松岡はそう言いながら、名刺に刻まれた「ガイルマーケティング」というロゴマークに目をやった。
米国に本社を持ち、3年前から日本法人も立ち上げているIT企業。
最近はテレビドラマのスポンサーをつとめたり、テレビCMの量を増やし「IT」のことがよくわからない人でも、会社名はなんとなく聞いたことがあるレベルにまで成長してきた。
ありがとうございます!そう言っていただけて恐縮です!
弊社は現在、様々な事業を展開しておりますが、元々はWebマーケティングのコンサルティング会社であり、今も主軸はコンサルティング事業です。
弊社が成長し続けていられるのも、弊社がコンサルティングを担当したお客さまのWebサイトが成功し、コンサルティングの依頼をたくさんいただいているからなんです。
あ、私、お恥ずかしながら、日本法人の営業部長を担当させていただいております。
うん、若いのにたいしたもんだ。そんなに若いのに、部長だもんね。
IT業界には他の業界のような”しがらみ”とかはないんだろうね。徹底した実力主義ってわけだ。
実力主義・・・確かにそうかもしれません。
IT業界はスピードが早いですから、ぼーっとしているとすぐに置いていかれちゃうんです。なにせ“ドッグイヤー”という言葉もあるくらいですから。
あ、ドッグイヤーというのは“犬の年齢”って言葉をカッコよく横文字で言っただけなんですけどね。
犬は人間の7倍のスピードで年をとります。IT業界もそれくらい早く進んでいくということなんです。
それは大変だ・・・。
はい。
そんな業界において、現在、弊社はシェアを急拡大し、Webマーケティングの最先端を走り続けています。
先程ご紹介したSEOサービスも、弊社だからこそご提案できる内容なんです。
なるほどね。
最近SEOについて学んだこのタイミングで、あなたが訪ねてきてくれたことは、何か運命めいたものがあるのかもしれない。
そういえば、セミナーでは“怪しいSEO会社には気を付けろ”と言われていたけど、あなたのところのような大企業だったら安心だね。
ありがとうございます!
なにより、僕は君を気に入ったよ。
君の・・・その・・・革のカバンを見たら、どれだけ頑張って働いてきたかがわかる。
あっ・・・!
す、すいません、大学を卒業してからずっと使っているカバンでして・・・。
いやいや、いいんだよ。今の子はモノを大切にしないからね。
うちはオーダー家具の会社だけど、今、家具業界は外国からの安い家具がどんどん入ってきていて、みんな、気分だけで家具をどんどん買い直しちゃう。
家具ってもんは、愛情を持って使い続けてあげることが大事なんだ。
木は生きているんだ。生きているってことは心があるってことだ。
家具は、使い込めば使い込むほど、家族の一員のような温かみが出てくるんだ。
松岡はそう言いながら、はっと気付いて苦笑いをした。
すまんね。
この年になると、つい説教じみてしまう。
特に若い男の子を前にすると、自分の息子のように感じて。
・・・息子さんはおられるんですか?
いやいや、息子はいないんだ。
でも、娘ならいるよ。
私にとって大切な一人娘だ。
そうなんですね。
その営業の男性は目を細めて話す松岡の顔を見ていた。
おっと、ごめんごめん。
じゃあ、君の会社のSEOサービスについて詳しく話を聞かせてもらおうか。
そう言うと松岡は、椅子にもたれていた背を起こした。
ありがとうございます!
それでは早速説明させていただきます。
弊社のSEOサービスのプランはですね・・・。
資料を広げて話し始めた男の口元には、不敵な笑みが浮かんでいた。
チャイムの音が夜の静寂を破った。
はっ、はい・・・!
玄関のドアを開けた女性は、目の前に立っている体躯の良い男を見て、息を飲んだ。
あ、あの・・・。
・・・松岡めぐみだな。
は、はい、あなたは・・・!?
深夜に失礼するわ。
ハッシュタグで連絡をくれたのはあなたね。
男の横から、青い瞳をした長い髪の女性が現れた。
・・・彼女はヴェロニカ。
俺のパートナーだ。
パートナー・・・ということは、あなたが・・・!?
・・・ボーン・片桐だ。
父はあの会社の営業に騙されたんです・・・。
あのサービスを契約した後、うちのWebサイトの順位はどんどん下がって、売上げは激減しています・・・。
SEOとは名ばかりの“ペイドリンク”によるブラックハット。
ガイル社の手法ね。
しかも、最近は月10万の3年リース契約ときてる。
ボーンとヴェロニカはオーダー家具「マツオカ」の応接室で、めぐみの話を聞いていた。
父は・・・サイトの順位が落ちたことで精神的にダメージを受け、身体を壊して入院しました。
元々、心臓が悪くて・・・。
激減した売上げを取り戻すために無理をして・・・発作を起こしたんです・・・。
それで、あなたがWebサイトの運営を引き継いだってわけね。
はい・・・。
うちのサイトは、以前は「オーダー家具」や「注文家具」などのワードで2ページ目にランクインしていました。
でも、あのSEO会社と契約してから、100位以内にも表示されなくなって・・・。
私、この状態をどうやって改善すればいいかわからなくて、それで、ネット上で色々な情報を集めているときに、あのハッシュタグの存在を知ったんです。
そして、私たちは今夜、ここにやって来た。
・・・残念ながら、お前のサイトはもう死んでいる。
ふいにボーンが口を開いた。
・・・そ、そんな・・・!
あのサイトがまた以前のように上位表示されないと、注文が・・・注文が入らなくなっちゃう・・・。
お父さんが守ってきたこの会社が・・・ううう・・・。
溢れる涙をこらえきれず、めぐみは涙をこぼした。
大丈夫よ、そのために私たちがやって来たんだから。
ヴァロニカは泣きじゃくるめぐみの肩を抱き、そう言った。
・・・さて、報酬の件だが。
あ、は、はい!、あ、あの・・・、ボーンさんにお仕事をお願いするには高い報酬が必要なことは知っています・・・!
1サイト1,000万からだとも聞きました。
ただ、実は・・・あの・・・。
・・・報酬は・・・0だ。
はい、報酬に関しては・・・私がなんとかします・・・!
・・・えっ・・・、い、今、0って・・・。
その言葉の通りよ。ボーンはあなたから報酬を受け取ることは考えてないわ。
えっ・・・。
ど、どうして・・・!?
じゃあ、逆に質問するわ。
ボーンの“正規の報酬”をあなたの会社が払えるの?
そ、それは・・・。
ボーンがなぜ、この仕事を無報酬で引き受けるか、その理由は聞かないで。
ただ、3つの約束を守ってくれれば、私たちが力を貸してあげる。
3つの・・・約束・・・?
一つ目の約束。
ボーンがあなたのWebサイトの再生に関わっていることは決して口外しないこと。
二つ目の約束。
あなたのWebサイトが完全に再生するまで、ボーンのアドバイスに従うこと。
そして、三つ目の約束。
ボーンの過去は聞かないこと。
この3つの約束を守れば、あなたのWebサイトはきっと再生する。・・・私が保証するわ。
・・・は、はい!
・・・守ります!
めぐみはヴェロニカの手をとりうなずいた。
・・・ありがとうございます・・・!
めぐみの頬を再び大粒の涙が伝った。
その姿を、ボーンは静かに見つめていた。
・・・デスクはあるか?
ボーンがめぐみに尋ねた。
あっ・・・え、えっと・・・。
ノートPCを開くためにデスクかテーブルをお借りしたいの。
あ、は、はい!
私の仕事部屋のデスクを使ってください!
めぐみはそう言うと、ヴェロニカとボーンを自分の仕事部屋へ案内した。
す、すいません!!発注書が散らばっていて・・・。
すぐに片付けますので、そちらのソファーでお待ちいただけますか?
あ、ボーンさんのカバンはこちらに。
めぐみは、ボーンの足元に置かれていたアタッシュケースを持ち上げようとした。
(お、重い・・・!!
な、何なの・・・!?このケース・・・!?)
あ、運ばなくて大丈夫よ。
そのケース、50kg近くあるから。
あ・・・は、はい・・・!
(50kg・・・!?
あのケースの中には何が入っているの!?)
・・・デスクの用意はできたか。
は・・・はい!!
・・・始めるぞ。
そう言うと、ボーンはアタッシュケースをデスクの上に置き、そのケースを開いた。
中から現れたのは、真っ黒なノートPCだった。
(えっ・・・!?
あのケースの中にはノートPCしか入っていない・・・!?)
一連の動作を見ていためぐみは、ケースの中にノートPCしか入っていないことを知り、驚いた。
めぐみさん・・・だったわね。
は、はい・・・。
ボーンのノートPCが気になる?
え、えっと・・・。
ふふ、良いのよ。
突飛な質問かもしれないけど、もし、あなたがノートPCを使っているとして、それを守るために考えうる“最も強固なセキュリティ”って何かわかる?
セキュリティ・・・ですか?
そう。
ウイルス対策ソフトを入れていても、ノートPC本体を盗まれたらどうしようもないし・・・、えっ、まさか・・・
そう。最強のセキュリティとは、ノートPCを“物理的に重くすること”よ。
ボーンのノートPCは40kgあるの。
・・・40kg・・・!?
彼のノートPCの表面は鉛でコーティングされている。
でも、それはカモフラージュ。あのノートPCの筐体は“金”でできているわ。
・・・重金属である金の密度は19.32。
そこから算出した重量は40kgだ。
ヴェロニカの説明を補足するかのように、ボーンは言葉を発した。
ボーンの強靱な肉体は、あのノートPCを操るために鍛えられているの。
勿論、心技体という言葉があるように、強い肉体はすべてにおいてアドバンテージとなるわ。
やがて、OSの起動音とともに、ボーンのノートPCの画面は白い光を点った。
・・・サイトのURLを言え。
・・・えっ、は、はい!!
https://www.matsu○ka-kagu.jp・・・です。
ボーンの叫び声と共に、彼の眼光は画面に映った見覚えのあるロゴを捕らえた。
こ・・・これは・・・!?
Googleの・・・サービスですか?
・・・見たことがないのね。
これはGoogleが提供しているサイト管理ツール“Googleサーチコンソール”。
あなたにGoogleアナリティクスのアカウントを共有してもらった際、Googleサーチコンソールの設定もおこなわれていることを確認しておいたの。
どうやらこのツールは、ガイル社が設定していたみたいね。
ガイル社が・・・。
ただ、このツールの中には、ガイル社にとって、クライアントに教えられないくらい“マズイ情報”がたくさん詰まっているわけだけど。
マズイ情報・・・?
・・・来るわ・・・!
ボーンの叫び声とともに、ボーンがマウスを力強く左クリックする音が部屋中に響いた。
そして、大量のURLのリストが画面に表示された。
こ・・・このリストは・・・!?
Googleサーチコンソールの中にはね、そのサイトに対して“どんなページからのリンクが集まっているか”を教えてくれる機能があるの。
このURLはそのリンク元ページのリストよ。
そして今、ボーンは、このリンクのデータをCSV形式で出力しているの。
・・・Googleサーチコンソールに警告が出ていたようだな。
このツールの警告文だったのですね・・・!
“このサイトのページへの不自然な人為的、偽装、または不正なリンクのパターンが検出されました”という警告文が届いていて、私、どうすればいいのかわからなくて・・・。
・・・ガイドライン違反の原因となったリンクは、このリストの中にある。
ボーンはそう言うと、ダウンロードしたばかりのCSVファイルをExcelで開き、そこに記載されているURLのうち、特定のURLを目で追いながら、ブラウザで開き始めた。
今、何をしているんですか・・・?
被リンク元となっているページの中から、“Googleからの評価を悪くしているページ”を洗い出しているの。
ボーンはペナルティ解除のプロフェッショナルでもあるの。
彼の頭の中には、これまでたくさんの案件で見てきたスパムサイトのURLリストが入ってる。
そのスパムサイトのURLリストと、あなたのサイトの被リンク元リストを照らし合わせながら、実際のリンクの表示も同時に確認しているのよ。
その時、ボーンの手が止まった。
・・・リンクパターン、“黒”
・・・!
思った通りね。
あなたのサイトはガイル社のSEOサービスによって、質の悪いリンクがたくさんついている。順位が下がったのはそのリンクたちが原因よ。
ヴェロニカはボーンが発した言葉の意味をめぐみに伝えた。
・・・えっ、で、でも、ガイル社はそんなこと教えてくれませんでした・・・。
・・・それが彼らのやり方なのよ。
自分たちのSEOサービスが原因で順位下落したなんて、言えないわよね。
もしかして、ガイル社から別のSEOサービスを提案されなかった?
“ペナルティ解除サービス”とか?
そ、そういえば、先日、ガイル社の営業が提案してきました。
「順位下落は、Googleから『手動による対策』を受けたことが原因だろうから、その解除を有料でおこなう」って・・・。
順位下落の原因が自分たちにあることを隠しながら、ペナルティ解除サービスを営業する、まさに“マッチポンプ”ね。
無知なWeb担当者は、なぜ自分たちのサイトの順位が落ちたのかわからない、そこに隙が生じる。
まさか、自分たちが契約したSEOサービスが原因で順位下落しているとは夢にも思わないでしょうね。
そんな・・・。
リストアップは終わった。
続いて、“disavow-links(否認リンク)”のテキストファイルを作成する。
OK、ボーン。
ボーンがヴェロニカにそう伝えた瞬間、突然、部屋の中を熱風が吹き始めた。
あ、熱いっ!!
こ、この熱風は・・・!?
大丈夫、心配しないで。
この熱風はボーンのノートPCから出ているの。
えっ・・・!?
ボーンのノートPCは、CPUのクロック数を極限まで上げ、あらゆるアプリケーションの動作を最速にしているの。
そのため、一定時間経つと、CPUが暴走し、発熱するようになる。
だから、起動してから10分以内にすべての作業を終えなければならないの。
今すでに9分が経過したわ。
あと1分で作業を完了しなければ・・・彼のノートPCは301度に発熱する・・・!
そ、そんな・・・!
・・・大丈夫よ、彼を信じて。
disavow-links List(否認リンクリスト)、送信完了。
ボーンの声が静寂を破った。
・・・良かった・・・!!
さすが、ボーン。・・・見事だわ。
・・・リンクの否認申請は出しておいた。
念のため、3週間は様子を見るんだな。
ヴェロニカ、あとは再審査リクエストを頼む。
OK、ボーン。
うちのWebサイトはどうなるんでしょうか・・・!?
ペナルティ解除が無事にされれば、徐々に前の順位に戻ってくるわ。
私たちの経験によると、再審査リクエストを出してから、大体1週間~4週間ほどで、ペナルティは解除される。
もっとも、リンクの否認申請が十分にできていないと、その解除も先延ばしにされちゃうけど。
ボーンなら大丈夫、安心して。
・・・あ・・・ありがとうございます・・・!
あとは、必ず「今日中」にすべての有料リンクを外すよう、ガイル社の担当に電話をしておくことだ。
リンクの否認を完了するためには、Googleに否認申請を出すだけではなく、リンクを張っている側がリンクを外す必要があるの。
・・・ガ、ガイル社はリンクを外してくれるでしょうか?
・・・外すさ。
自社でも“ペナルティ解除サービス”を始めているくらいだからな。
ガイル社の体面上、リンクの削除依頼に応じないと、面目丸つぶれってことよ。
・・・わ、わかりました!
ただ、ペナルティが解除されたからといって安心するのは早いわ。
あなたのサイトがペナルティを受けている間、競合他社はSEOにさらに力を入れてきている。
ペナルティが解除されてからが本当のスタートラインね。
・・・はい!
・・・めぐみと言ったな。
今夜はもう眠れ。
えっ・・・。
あなた、Webサイトの運営を引き継いでから、ゆっくり眠る日もなかったのでしょう?
レディーに“クマ”は似合わないわ。
・・・あっ・・・。
次は3週間後に来ることにする。
・・・ほ、本当にありがとうございます!!
・・・あと、120×60×70のブナ材のテーブルを頼む。
えっ・・・!?
ボーンがあなたの会社にオーダー家具を発注したいって。
えっ、そ、そんな・・・。
ボーンは、自分のポリシーとして、自身のクライアントのビジネスを必ず体験するようにしてるの。
テーブルに関する細かな仕様は明日以降にやりとりさせて。
は・・・はい!
・・・ありがとうございます!
・・・雨は止んだな。
そうね。
めぐみは去りゆくボーンとヴェロニカに深々と礼をし、彼らの車が見えなくなるまで見送った。
・・・あの子、良い子ね
・・・。
・・・助けてあげたいわ。
・・・ただ、今回はガイル社のクライアントということもあり、やつらも邪魔をしてくるはず。
・・・さっき、やつらからの挑戦状を受け取った。
・・・えっ、挑戦状!?
ボーンは黙って力強くアクセルを踏み込んだ。
道路の先には街を照らす夜明けの光があった。
闇に隠れ、市場を操る、謎のWebマーケッター「ボーン・片桐」。
彼は何者なのか?
そして、彼とガイル社との関係は一体?
オーダー家具「マツオカ」のWebサイトを巡り、今、因縁の対決がよみがえる。
静かに軋み(きしみ)始めた運命の歯車。
ボーンは「マツオカ」のWebサイトを“パーフェクト・リボーン”させることができるのか!?
次回、沈黙のWebマーケティング第二話。
「偽りと本質のWebデザイン」
今夜も俺のインデックスが加速する・・・!