松尾は京都の「錦市場」を歩いていた。
ウェブライダーのオフィスは錦市場から徒歩1分の場所にある。
今日もたくさんの食材が軒先に並んでいるな。
いつも通っている場所なのに、毎日新しい発見がある。
錦市場(にしきいちば)とは、「京の台所」という愛称で呼ばれる京都を代表する市場通りである。
魚、京野菜といった生鮮食材のほか、乾物や漬物、おばんざいなどの老舗・専門店が集まるこの場所は、約1300年の歴史をもつ。
地元の買い物客でにぎわっているほか、観光名所としても人気である。
ここが「京の台所」というブランドを手に入れたのは、平安時代にさかのぼること1300年もの間、商いが続けてこられたからなんだよな。
「続けること」が、どこに負けないブランドをつくる・・・か。
そう言いながら、松尾は錦市場を通り抜け、オフィスへと向かった。
おつかれさまー。
おつかれさまです。
松尾がオフィスの執務室に入ると、伊藤と赤木が、サイトリニューアルのアイデアに関して、話し合っていた。
・・・たとえば、このサイトの場合、自社の実績を多く並べているから、どんな案件に対応できるかがわかりやすいよね。
たしかに・・・。
うちはこれまでお客さまの事例をほとんど公表してこなかったので、事例を公表することで、ウェブライダーのソリューションが伝わりやすくなる気がします。
もちろん、お客さまからの許可は必要ですが。
伊藤と赤木は、2日前のミーティングから、ウェブライダーのチームとしての価値をどのように発信すればいいか、独自に思案し続けていた。
もちろん、他のメンバーも同じく。
(この皆の頑張っている姿・・・このプロセスにこそ価値がある)
松尾は2人の姿を見ながら、心の中でそうつぶやき、チェアに腰掛けた。
この日も全体ミーティングがおこなわれることとなった。
サイトリニューアルのプロジェクトが立ち上がってから、全体ミーティングの回数は明らかに増えていたが、皆、このタイミングでのミーティングが今後のウェブライダーの運命を握るものであることを理解していた。
日を追うごとに、ミーティングの熱量は高まっていた。
では、今日もミーティングを始めよう。
今日の議題は、「ウェブライダーのチームとしての価値をどのように発信していくか」というものだ。
前回、定性調査と定量調査を兼ねてアンケートをとったけれど、僕らが提供しているソリューションの方向性は間違っていないことが確認できた。
ただ、その一方で、ウェブライダーのソリューションの評価が、代表である僕という個人に依存してしまっている状況もわかった。
会社の評価が、僕という個人の評価によって大きく影響を受けてしまう状況はよくない。
ウェブライダーには優秀なメンバーがそろっている。
サイトリニューアルを進める前に、このメンバー、すなわち、チームの価値をもっと伝えていくための施策を考えよう。
前回のアンケートの結果を受けて、皆それぞれ、自分にできることは何かを考えていました。
みんな、ありがとう。
今日のミーティングはいつもとは少し進め方を変えてみようと思う。
なにぶん、今日の議題は、いつもよりも深く複雑な議題だ。
ディスカッションの方向性をシンプルにするために、僕が叩き台となるスライドをつくってきた。
このスライドを使いながら、皆でディスカッションしたいと思ってる。
松尾はそう言うと、スライドを画面に映し出した。
このスライドでは、今日までに話し合ったこともわかりやすくまとめてある。
まずは、今日までの流れを振り返ってみよう。
まず、今回のサイトリニューアルのプロジェクトが始まったきっかけをおさらいしておこう。
そのきっかけは「受託案件の売上げが減り始めたこと」だった。
売上げ減少の原因は、新型コロナウイルスの影響による、オフラインでの対面フォローの減少。
ウェブライダーはWebマーケティングに強い会社であることを自称しておきながら、実は自社の会社サイトに掲載されている情報が古い上、オフライン経由での案件の相談が多かった。
コンサルティングという商品は無形商品。
そのため、価値を理解してもらうためには、対面でのコミュニケーションが優れています。
そういう意味では、これまでのオフラインでの活動自体は、良い選択だったと思います。
私もそう思います。
コンサルティングの価値を疑似体験してもらうためにも、有用な手だったと。
ただ、このコロナ禍で対面でのフォローが厳しくなった今、従来のようなアプローチがとりづらくなった・・・ということでしたね。
そう。
だからこそ、僕たちは原点に立ち戻り、自社サイトでの情報発信を軸とするために、まずは自分たちのホームグラウンドである「自社サイト」をリニューアルすべきだと考えた。
そうして、僕たちはサイトリニューアルを進めることを決めた。
リニューアルを進める上で、重視したのが、自分たちの「価値」の発信だ。
これまでの自社サイトは、自分たちが提供しているソリューションの価値を十分に発信できていなかった。
なぜなら、自分たちが提供できる価値の言語化が不十分だったからだ。
言葉で説明できないことを、Webサイトには掲載できない。
だからこそ、今回のタイミングで、自分たちの価値をあらためて言語化することにした。
そうして、サイトリニューアルはスタートした。
次のスライドは、今回のリニューアルの手順をまとめたものだ。
僕たちはまず、自分たちの価値を言語化するために「現状分析」を進めた。
僕たちが対象としているお客さまが、どんな課題をもち、どんなソリューションを求めるのかをあらためて言語化する作業。
その後、各ソリューションに対して、自社は他社と比べてどんな強みや弱みをもっているかも言語化した。
もちろん、これらの言語化は、この時点ではあくまでも仮説。
これらの仮説の正しさを証明できなければ、サイトリニューアルのステップを進めることはできない。
ただ、自分たちは経験上、お客さまが抱える課題や、求めるニーズ・ウォンツについてはある程度認識できていると考えた。
もし、それらの仮説が大きく外れているとすれば、そもそもマーケター失格だから。
よって今回は、自分たちが今まさに提供しているソリューション、もしくは今後提供を検討しているソリューションの需要を、アンケート調査を用いて確認することにした。
アンケート調査は「定性調査」「定量調査」を交えたものにした。
結果として、短期間で120名を超える方々がアンケートに答えてくださった。
その回答結果は僕たちが考えていた以上に有益なものだった。
まずわかったことは、自分たちが提供しているソリューション、そして今後提供を検討しているソリューションの需要は問題ないということ。
しかし、ある回答結果が、僕たちに衝撃を与えた。
・・・代表である松尾さんのプレゼンス(存在感)が、考えていたよりもずっと大きかったことですね。
そう、それによって新たな課題が浮き彫りとなった。
僕のプレゼンスが大きすぎる、つまり、僕のイメージが強すぎるため、ウェブライダーの「チームとしての印象」が弱くなってしまっているのではないか、それが新たに浮上した課題だった。
ウェブライダーの事業は多様化が進んでいる。
そんな中、チームとしての印象の弱さが、各事業の印象にも影響してしまうのではないか、という懸念も生まれました。
受託事業の売上を回復させることも大事ですが、それ以外の事業のマーケティングも進めないといけない。
チームとしてのプレゼンスが小さいという問題は、全事業に影響を与える問題だと思います。
・・・というわけで、ここまでが今日に至った流れだ。
あらためて、現時点での僕たちの課題とニーズをまとめると、次のようになる。
■課題
- チームとしてのプレゼンスが小さい
- それによって、各事業のマーケティングに支障が出てくる可能性がある
■ニーズ
- チームとしての発信力を高めたい
- それにより、各事業の価値をこれまで以上に深く伝えていきたい
今日のミーティングでは、この流れで、ステップ2の「マーケティング課題の洗い出し」の中にある「課題の対策」についてディスカッションするわけですね。
さて、なかなかに重い課題を解決しなければいけないわけだけど、重く複雑な課題ほど、シンプルに考える必要があると考えている。
重く複雑な課題ほど、シンプルに・・・。
実は今日は、僕なりにこの課題を解決に導くための提案をもってきた。
その提案をスライドにまとめてある。
皆もいろいろと考えてくれていると思うけれど、まずは僕の案を聞いてもらえないかな。
その上で、僕の提案を「叩き台」だと思って、遠慮なく意見を言ってもらえるとうれしい。
わかりました。
伊藤さん、今日の僕の提案は、うちのコンサルのブランディング案件で用いるフレームワークも使ってる。
もし、内容を補足したほうがよいと判断したときは、補足してもらえるかな。
了解です。
任せてください。
ありがとう。
じゃあ、進めよう。
「機能的価値」と「情緒的価値」
まず、このスライドからだ。
「機能的価値」と「情緒的価値」・・・。
この図は、「機能的価値」の外殻と中心に「情緒的価値」があることを示した図。
世の中の人は、何かの商品やサービスの「機能的価値」に触れる前に、「情緒的価値」に触れることが多いことを示している。
「機能的価値」とは、商品のスペックや使いやすさといった、文字どおり、機能に由来する価値。
先日、皆で一緒に考えたウェブライダーのソリューション、あれはまさに「機能的価値」がベースとなっている。
一方、「情緒的価値」は、商品のつくり手や売り手側の「思い」や「哲学」から伝わってくる価値。
見た目の「雰囲気」なんかも、この「情緒的価値」に含まれる。
世の中の人の多くは、理性よりも感情で動く。
だから、商品やサービスの「情緒的価値」に心が動かされた後に、「機能的価値」を見定めようとするケースが多い。
そして、「機能的価値」を深く知れば知るほど、その機能の奥にある「こだわり」や「価値観」といった「情緒的価値」にさらに触れることになる。
この図はそういったことを表しているんだ。
ある会社さんの紹介記事を見て、その会社さんの価値観に共感したり、社員さんの笑顔を見て、「素敵な会社!」と思うことと同じでしょうか?
そうだね。
その体験はまさに「情緒的価値」によるものだ。
そして、この「情緒的価値」を、うちの受託案件に落とし込むと、次のように定義できるんだ。
「この人たちと一緒に仕事をしたい」という心理的な価値・・・!
そう。
一般的に、対企業との取引においては、感情的な「好き嫌い」は関係ないと言われやすいけれど、企業の担当者もひとりの人間。
たとえば、何かのサービスを導入するためにA社とB社の2社を比較していて、両社ともに同じ品質・同じ価格帯のサービスを提供しているのなら、自分が好きな相手と取引をしたいと思うはず。
たしかに・・・。
だから、シンプルにいえば、商品・サービスを提供するときに「機能的価値」にばかり気をとられてはいけないんんだ。
その商品・サービスに、どんな「情緒的価値」を宿すかも考えないといけない。
情緒的価値は、商品・サービスだけでなく、その会社=法人そのものからも伝わるんだ。
その法人が、普段、どんな価値観をもち、どんな言葉を使い、どんな振る舞いをしているか、その姿勢が情緒的価値を生み出す。
つまり、「その法人らしさ」がそのまま情緒的価値になることもある。
じゃあ、その法人らしさはどこから生まれるのか?
その答えは、先日のミーティングでも話した「法人」という言葉の定義の中にある。
“法人とは、その会社に所属するメンバー全員で創りあげる新しい人格”ですね。
そう。
ウェブライダー式に言うと、法人とは、その会社に所属するメンバー全員で創りあげるスーパーヒーローなんだ。
さらにいえば、法人らしさは、そのスーパーヒーローの思考を、どのメンバーがどれくらい担うかによって異なる。
小さな会社の場合、代表の思考が強く反映されている場合が多く、代表の「個人」としての人格と、会社の「法人」としての人格に差異が生まれにくい。
それが良いか悪いかはTPOによって変わるけれど、「法人らしさ」を創りあげていくのなら、やはり、代表の思考だけでなく、所属するメンバーの思考も混ざり合わないといけない。
ただし、代表の考えがまったく反映されないのも問題だ。
それはそれで、他のメンバーの思考をひとつにまとめにくくなるから。
だから、会社によって最適なバランスというのはさまざまなんだ。
うちの場合、内部的には、松尾さんと各メンバーとの思考のバランスは良いと思いますが、外部から見ると、松尾さんの思考が色濃く出ているように見えるんでしょうね。
まさにそうなんだ。
うちのチームとしての価値を伝えるためにも、外部から見たバランスを変えたいというのが、僕の提案の肝でもあるんだ。
では、さらに話を進めるね。
「情緒的価値」とザッポス
先ほど僕は、「情緒的価値」の大切さについて説いた。
そして、その「情緒的価値」は「法人らしさ」、すなわち、法人の普段の「振る舞い」から生まれると。
価値というものは、評価されるからこそ生まれる。
だから、自分たちの普段の「振る舞い」の中で、お客さまが評価してくれる「振る舞い」とは何か?を考え続けることが大切だ。
こういった話をする上で、ぜひ取り上げたい企業がある。
それは、アメリカの通販会社「ザッポス」だ。
ザッポス・・・!
聞いたことがあります。
ザッポスは、靴のインターネット販売を中心に成長してきた通販会社。
感動を生むカスタマーサービスを大切にする企業として、とても有名だ。
ザッポスではお客さまへの対応マニュアルは存在せず、スタッフはお客さま対応において大きな裁量が与えられている。
お客さまが喜ぶためなら、ほとんど何もしていいんだ。
たとえば、商品の在庫が切れていたとき、他社のサイトで同じ商品を探して、他社サイトを案内したスタッフもいるし、7時間半もの間、お客さまとコールセンターで通話したスタッフもいる。
さらには、ピザのデリバリーの注文が来たとしても、近場で注文可能なお店を探して、連絡先を教えるスタッフもいるんだ。
この行動の背景には、実はザッポスが売っていたのは「靴」ではなく、お客さまの「感動体験」だったという理由がある。
すごい会社さんですね・・・。
そして、ザッポスのCEOであるトニー・シェイ氏は、次のようなメッセージも残している。
お客さんは、何をしてくれたかは覚えていないかもしれない。
でも、どんな気持ちにさせてくれたかはけっして忘れない。
(トニー・シェイ氏は2020年11月27日、46歳の若さでこの世を去りました。お悔やみ申し上げます)
“どんな気持ちにさせてくれたかはけっして忘れない”。
これって、ザッポスは情緒的価値をすごく大切にしていたというメッセージですね!
そうなんだ。
それでいうと、僕たちウェブライダーも、これまでお客さま対応に力を入れてきた。
お問い合わせの返信文は一通一通大切に書き、お客さまの気持ちに配慮してきたし、お客さまのサイトを分析するときは、サイトを分析するだけでなく、お客さまのビジネスそのものの理解を心がけた。
また、もし自分たちにできないことがあっても、誤魔化さずに正直に伝え、代わりに「こうするのはいかがですか」という代替手段を提示するなど、お客さまと誠実に向き合ってきたと思ってる。
そして、その姿をお客さまも見てくださっていて、ときには「丁寧な対応だった」という評価をいただくこともあった。
そんなウェブライダーの姿とザッポスの姿が重なったんだ。
だからこそ、ザッポスも大切にし続けた「情緒的価値」にあらためて注目しようと思い始めたんだ。
たしかに、振り返ってみると、私たちは情緒的価値をとても大切にしてきたと思います。
・・・ただ、それらの「情緒的価値」を、僕たちは表にほとんど発信できていなかった。
うちとすでに取引してくださっているお客さまには伝わっていたとしても、未来のお客さまには十分に伝わっていなかったのではと思う。
だからこそ、今回のサイトリニューアルのプロジェクトを機に、各ソリューションの「機能的価値」と合わせて、「情緒的価値」も発信できないかと思ってる。
「情緒的価値」を感じてもらうという受け身の姿勢ではなく、「情緒的価値」を発信するという能動的な姿勢も意識していきたいんだ。
「情緒的価値」を発信・・・!
そしてそのためには、「情緒的価値」の源泉となる「ウェブライダーらしさ」とは何か?を解像度高く言語化する必要がある。
その言語化ができれば、ウェブライダーのメンバー全員が、より自信をもって行動できるようになるはずだから。
「ウェブライダーらしさ」を言語化することで、「ブランド」としての行動規範をより明確にするわけですね。
そうなんだ。
ここで「ブランド」という言葉が浮かび上がってくる。
なぜなら、このプロジェクトはもはやサイトリニューアルだけじゃない、リブランディングのプロジェクトにもなろうとしているから。
松尾さんがブランディング案件のフレームワークを用いると言った理由がわかりました。
「何」を発信するかだけでなく、「どう」発信するかが大事と気付いた時点で、このプロジェクトは、リブランディングをも兼ねたプロジェクトになった。
・・・というわけで、ここからはブランディングの話も交えながら、より深い話をしていこう。
ブランディングは、「その会社らしさ」を伝え続けること
「ウェブライダーらしさ」を考えるということは、ウェブライダーらしい「振る舞い」とはどんなものかを考えることだ。
この「振る舞い」を、さまざまな切り口で解像度高く言語化できれば、「ウェブライダー」という法人のブランドとしての行動規範が決まる。
ここで、皆の目線を合わせるために、「ブランド」という言葉をあらためて定義しておく。
「ブランド」という言葉はフワッとした印象や、オシャレな印象をもつかもしれないけれど、次のような意味をもつと考えてもらいたい。
“ブランドとは、その会社・商品・サービス独自の「らしさ=印象」の中で、市場価値が生まれているもの・・・”
そう。
そして「ブランディング」とは、まさに、そのブランドの価値を高めていくための一連の施策を指すんだ。
ブランディングにおいては、一つひとつのクリエイティブも考え抜いてつくられる。
たとえば、ロゴ。
ロゴはブランドの世界観を象徴するシンボル。
うちの会社のロゴも、ウェブライダーというブランドの世界観を象徴している。
このロゴは7年前、2ヶ月かけてつくられたもの。
ウェブライダーという会社の「らしさ」をシンプルにビジュアライズした。
今いるメンバーの多くは、このロゴが生まれた経緯を深くは知らないと思うけれど、このロゴにはウェブライダーならではの「らしさ」が詰まっているんだ。
はい、ウェブライダーらしいロゴだと思います。
未来に向けて力強く疾走するようなイメージや、情熱的な「赤」を用いているように見えて、実は白を少し含んだ一歩引いた感じは、ウェブライダーらしいなと。
達川さん、ありがとう。
このロゴは7年前につくられたロゴだけど、今もウェブライダーとしてのブランドを表現してくれていると感じる。
ただ、このロゴはウェブライダーというブランドを視覚的に表現したもの。
僕は、ブランドを表現する際、次の4つの要素を意識すべきだと考えているんだ。
それは「見え方」「話し方」「動き方」「考え方」の4つ。
「見え方」「話し方」「動き方」「考え方」・・・?
そう。
たとえば、デザインにおいてどんなルールを採用するかや、文章を書く際にどんな言葉を使うかや、SNSなどで誰かとコミュニケーションをする際にどんな交流の仕方をするかなど、そういったブランドとしての行動はすべて「見え方」「話し方」「動き方」「考え方」の4つの要素で構成される。
次のスライドは、デザインや文章などにおいて、それら4つがどのように関わってくるかをまとめたものだ。
たとえばイベントを開催する際は・・・、どんな会場を選ぶのか、どんな話し方をするのか、どんなプログラムにするのか、どんな価値観を大切にするのかといったことを考え抜くことで、そのブランドらしいイベントが開催できるということですね。
まさにそうなんだ。
ブランドの存在を意識するだけで、イベントやコンテンツの内容により磨きがかかる。
そして、ブランドに合った「見え方」「話し方」「動き方」「考え方」を考えるために必要なのが「コンセプト」なんだ。
ウェブライダーというブランドが「どんな見せ方をするか」「どんな話し方をするか」「どんな動き方をするか」「どんな考え方をするか(どんな価値観をもつか)」、その答えにつながる「ブランドコンセプト」を考え抜く。
そうすれば、そのブランドを背負う法人、すなわちチームが、どんな行動をとればいいかが明確になる。
行動の「方向性」が決まることによって、あらゆる場面において、チームが積極的に行動しやすくなるんだ。
チームとしての価値を伝える上で、ブランドを考え抜くことって、こんなに大切だったんですね。
ちなみに、ここからさらに大事なことを言うよ。
ブランドとは「らしさ」のこと。
「らしさ」は瞬間的につくられるものではない。
長い期間、積み上げられた行動哲学が「らしさ」をつくりあげる。
だから、刹那的な行動ではなく、継続的な行動、つまり一貫性をもった行動を大切にしないと、ブランドは育っていかない。
“あるタイミングのみ”といった「点」ではなく、時間軸に伸びた「線」を意識した行動が大事なんだ。
また、ブランドは、その法人に所属するメンバー全員でつくりあげるものでもある。
究極的には、その法人に所属するメンバーそれぞれが、ブランドを体現する行動を一貫してとり続けることが大事なんだ。
そうすれば、各人が意識した「線」が幾重にも重なり、「面」になっていく。
面になれば、当然のことながら、そのブランドのプレゼンス(存在感)は跳ね上がる。
たしかに、こうやって図で見ると、「面」のプレゼンスは明らかに高いですね・・・!
そうなんだ。
そして、「面」でのプレゼンスを生み出すためにも、“自分たちが一貫して続けられることは何か?”を考え抜く必要がある。
“自分たちが続けられること”・・・。
そう。
それを考えるために用いたいのが、「Will(ウィル)・Can(キャン)・Must(マスト)」のフレームワークだ。
Will・Can・Mustのフレームワーク・・・!
このフレームワークは、
- 「やりたいこと・なりたい姿」である「Wii」
- 「できること・なれる姿」である「Can」
- 「やらなければならないこと・ならねばならぬ姿」である「Must」
この3つで構成される、言い換えるなら「意志・能力・義務」のフレームワークなんだ。
どんなことも、やりたいと思うモチベーションが大事。
モチベーションがあれば続けられる。
ただし、そのモチベーションも、現実的に成し遂げられる能力がないと、いつしか潰えるかもしれない。
また、やりたいことやできることばかりだと、それを誰も求めてくれない場合、市場価値が生まれないまま。
だから、Will・Can・Mustの重なる領域を意識し、その領域の中で自分たちが一貫して続けられる行動を逆算するんだ。
ただし、個人的には、まずはWillを中心に考えるべきだと思ってる。
モチベーションは、すべてを動かす原動力になるから。
よって、Will起点で行動を逆算していくのもいい。
モチベーションで、人の行動って本当に変わりますものね。
そして、このWill・Can・Mustには、チームとしてのWill・Can・Mustと、個人としてのWill・Can・Mustが存在する。
たとえば、Willに関していえば、チームの一員として実現したいことと、個人として実現したいことが存在する。
この法人と個人の思いが重なれば重なるほど、その法人も個人も、大きなエネルギーをもって行動できるようになるんだ。
ただし、ここでのブランディングは、あくまでも法人のブランドを高めることを指す。
よって、個々が「個人としてのWill・Can・Must」より、「チームとしてのWill・Can・Must」に目を向ける必要がある。
個人プレイをするメンバーばかりの会社は、どうしても法人格としてのプレゼンスが小さくなりがちなんだ。
だから必ず「法人格>個人格」で考える。
そういえば、このWill・Can・Must、半年前のミーティングで、皆で話し合いましたよね。
そう。
あのときは、ウェブライダーの各人のWill・Can・Mustをさまざまな切り口で言語化していき、最終的にウェブライダーの法人格としてのWill・Can・Mustを言語化した。
■ウェブライダーの法人格としてのWill・Can・Must
Will
- ・多くのお客さまに頼りにされたい
- ・自分たちの価値観と合うお客さまと仕事をしたい
- ・新しい価値の伝え方にチャレンジしていきたい
- ・自分たちならではの価値の伝え方を生み出したい
Can
- ・Webマーケティング全般のアドバイス
- ・WebサイトやWebコンテンツの制作
- ・多様な視点でのフィードフォワード
Must
- ・市場で必要とされるマーケティングの知見の習得
- ・成果の上がるサイト制作、コンテンツ制作の研究
このとき、ウェブライダーの「ビジョン」「ミッション」「バリュー」もあらためて言語化したのを覚えています。
「ビジョン(Vision)」「ミッション(Mission)」「バリュー(Value)」とは、マネジメント論で有名な経営学者のピーター・F・ドラッカーが提唱した企業の経営方針のこと。
「ビジョン」とは、ミッションの先にある、将来実現させたい自社の姿。
「ミッション」とは、自社が果たすべき使命。
「バリュー」とは、ミッションを遂行する上での行動基準となる価値観を指す。
ドラッカーは、企業の長期的発展にはこの3つの方針が必要不可欠だと説いた。
多くの企業がこの3つの方針を言語化し、各々の経営の理想型を探求し続けている。
そうだね。
今回のスライドの中にも、僕たちのビジョン・ミッション・バリューを引用しておいたよ。
■ウェブライダーのビジョン・ミッション・バリュー
ビジョン
誰もが誰かにとってのヒーローとなる社会をつくる
ミッション
ウェブライダーの5つのミッション
- 価値を磨く
- 価値を見つける
- 価値を創る
- 価値を伝える
- 価値を守る
バリュー
- 人の価値観に敬意を払おう
- 自分自身と闘おう
- 結果だけでなくプロセスも大切にしよう
こうやってあらためて見返すと、ウェブライダーって、自分たちの行動指針を結構言語化できていますね。
うん、そうなんだ。
・・・ただ、気をつけないといけないのは、こういった決め事は、日々反復して振り返らないと形骸化してしまう。
言語化するだけで満足してしまう会社は多い。
言語化したからには、それぞれの言葉にこめられた「意味」や「文脈」を何度も振り返る。
そして実は、今回の僕たちの課題である「チームとしての価値をどう伝えていくか?」という問いを解決してくれるヒントが、まさにこれらの言語化の中にあったんだ。
問いを解決してくれるヒントが・・・?
そう。
灯台下暗しってやつだ。
そのヒントの中でも、大きなヒントとなった言葉が、ビジョン・ミッション・バリューを考えたタイミングで同時に考えた「パーパス」の中にあった。
パーパス!
「パーパス(Purpose)」とは、その企業が何のために存在しているのか?という存在する目的、つまり「存在意義」を指す。
この存在意義は、その企業が、社会やお客さまに対して、どのように関わっていくか?という関わり方の軸となる。
今、ビジョン・ミッション・バリューだけでなく、このパーパスを言語化し、日々の業務の中で意識して行動している企業が増えている。
ウェブライダーのパーパスは、“価値の伝え方を創出し続け、伝え方の「気づき」を生み出す存在となる”。
このパーパスを考えるために、以前、かなりディスカッションしましたよね。
そうだね。
・・・ただ、これだけ熱量をもって言語化したパーパスだけれど、僕たちは普段の業務の中で、このパーパスを十分に体現できていなかった。
・・・!!
パーパスを体現する上で重要なのは、“存在”という言葉に目を向けることだ。
パーパスは“存在意義”のこと。
この“存在意義”を体現するには、当然のことながら「存在感(プレゼンス)」を示さないといけない。
・・・なるほどです。
松尾さんの言いたいことが見えてきました。
せっかく考え抜いたパーパスも、その存在意義に気付いてもらえないと、自己満足なパーパスで終わる。
パーパスとは、社会とどう関わり、自分たちの存在をどう認識してもらうかという行動目標でもある。
よって、シンプルに言うのなら、パーパスを決めたのなら、そのパーパスをもって、社会と積極的に関わることが大切。
うちのパーパスは、“価値の伝え方を創出し続け、伝え方の「気づき」を生み出す存在となる”でしたよね。
でも、実際体現できていたのは、前半の“価値の伝え方を創出し続け”って部分・・・。
後半の“伝え方の「気づき」を生み出す存在となる”っていう部分は、意識が足りませんでした・・・。
こんなに言語化していたのにね・・・。
広江さんの言うとおり、僕を含めて、ウェブライダーはパーパスの体現が不十分だったと思う。
でも、そのことに皆で気付いただけでも大きな前進だ
パーパスはある種、Will・Can・Mustが凝縮された概念。
それだけのエネルギーをもったメッセージだ。
パーパスに立ち戻ることで、僕たちは何度でもリスタートできる。
話が複雑になってきたので、一旦整理するよ。
まず、ウェブライダーの大きな課題として「チームとしての価値が十分に伝わっていない」というものがある。
今日はその課題を解決するためのアイデアを考える時間だった。
ただ、「チームとしての価値」といっても、その価値とは何かを自分たちが理解しておかなければいけない。
前提として、価値には「機能的価値」と「情緒的価値」という2種類の価値がある。
このうち、「機能的価値」はわかりやすいが、「情緒的価値」は自分たちが気付かぬ間に育っている。
よって、「情緒的価値」を意識することで、自分たちが提供できる価値の全体像を把握できるという話をした。
そしてその「情緒的価値」は、その「企業=法人」の思いや振る舞いから自然と生まれる。
よって、その法人がどんな思いや振る舞いで業務を続けているかがカギになる。
思いや振る舞いは、いろいろな要素が掛け合わされて生まれるもの。
「Will・Can・Must」「ビジョン・ミッション・バリュー」、そして「パーパス」。
これらとあらためて向き合うことで、自分たちが提供できる「情緒的価値」が明らかになると考えた。
自分たちの「情緒的価値」が明らかになれば、「機能的価値」と合わせて、自分たちが提供できる最大限の価値をソリューションに乗せられるはず。
ありがとうございます。
頭の中がスッキリと整理できました。
よかった。
じゃあ、今から、具体的な提案の話に移るね。
皆の鋭い視点で、ぜひ僕の提案を磨いてほしい。
松尾はそう言うと、ホワイトボードに向かって言葉を書き始めた。
先ほど、うちのビジョン・ミッション・バリューを取り上げたけど、僕はバリューの中にあったひとつの言葉に注目した。
それは、“闘い”という言葉だ。
“闘い”・・・!
そう、うちは“闘う法人”としての姿をもっと見せるべきだと思い始めた。
“戦う法人”と、“闘う法人”・・・!
そう。
うちは、誰かと戦って争うのではなく、自分たち自身と闘って、自分たちの商品やサービスの品質を上げていく会社。
・・・!
以前、皆でビジョン・ミッション・バリューを考えたときに、「闘う」という言葉を定義しましたね!
「戦」という漢字の場合、相手を負かすという意味も含まれる。
でも、「闘」という漢字なら、自分自身と闘うという意味になる。
あと、こんな話もしましたよね。
マーケティングの現場でよく使われる「戦略」という言葉は、“戦いを略す”とも読める。
つまり、自分たちの価値を磨き続けて独自のポジションを構築していれば、基本的には戦うことはしなくていい。
そうすれば、不毛な争いに身を置く必要がなくなり、より一層、自分たちの価値を磨いてゆける。
いいね、二人とも。
松尾はそう言いながら、ホワイトボードにさらに言葉を書き足した。
・・・あ・・・!
私、今、ちょっと閃きました。
松尾さんのアイデアと同じかどうかはわかりませんが、パーパスである“伝え方の「気づき」を生み出す存在となる”というフレーズと、“闘う法人”という言葉を掛け合わせると・・・。
私たちが普段お客さまのために頑張っている姿、つまり、何かの知識を学んでいる姿や、今、こんな風にディスカッションしている姿などを見てもらうというのはどうでしょうか?
まさにそれだよ!!!
松尾はそう叫ぶと、ホワイトボードに勢いよく言葉を連ねた。
“頑張っている姿を見せる”・・・。
言葉にするとすごくシンプルだけど・・・。
業務におけるいろいろな姿を、長期にわたって見せるイメージです。
ウェブライダーが抱えている案件は守秘義務があるので、外部公開は難しいと思いますが、うちは自社事業が多いので、自社事業のマーケティングでこんなにいろいろなことを考えています・・・といった裏側を見せたり。
松尾さんが多くのお客さまに提案し続けている、プロセスをコンテンツにする、というアイデアにも紐づくね。
うちが販売している「ウェブライダー式SEO 超集中講座」も、まさにコンテンツ制作のプロセスを商品化したもの。
また、以前アップした、フィードフォワードの風景のYouTube動画も、まさにフィードフォワードのプロセスをコンテンツ化したもの。
まさに、バリューに掲げた“結果だけでなくプロセスも大切にしよう”ですね。
いいね。
私たちならではのプレゼンスの高め方だね。
僕たちの普段の一生懸命さが伝われば「情緒的価値」が生まれそうです。
もちろん、プロセスの中にはたくさんの「機能的価値」もあるはず。
そして何より、このアプローチなら、リソースやコストの心配はほとんどないよね。
自分たちの普段の姿を見せればいいわけだから。
極端な話、編集はほとんど要らないかもしれない。
ただ、普段から胸を張れるような仕事の仕方をしていないと、いざ自分たちの姿を見せたとき、「イメージと違う」と思われて幻滅されるよね。
だから、気は抜けなさそう。
でも、私たちの仕事への熱意は、私たち自身が一番自信をもっているから、大丈夫かな。
はい!
きっと大丈夫です・・・!
え・・・と、ゴホン。
僕がアイデアを言う前に、皆が僕と同じようなアイデアを思い付いてくれた。
この連携プレーこそが、ウェブライダーが伝えていくべき価値のように思えるなあ。
松尾はそう言うと、笑った。
さて、今日はもう時間がリミットに迫ってきたから、明日、またあらためて、今日の続きのミーティングをさせてほしい。
明日は、赤木さんが言った「自分たちの頑張っている姿を見せる」というアプローチをより具体的な施策に落とし込んでいってみよう。
実は僕のほうでも、早速ひとつ、具体的な施策のアイデアが思いついているんだ。
わかりました!
あ、松尾さん。
達川さん、どうされました?
実は、チームとしての価値を伝えるためのアイデアを別に思いつきまして。
赤木さんの案とは別の案を明日提案してもいいでしょうか?
もちろん、赤木さんの案はとてもいいと思うので、実行すべきだと思っています。
私の案はそれとは別に、こういうのはどうかな?というものでして。
明日までに自分の中で整理しておきますので、よろしくお願いします。
お、それは楽しみですね。
個人的に、松尾さんがホワイトボードに書かれていた“競合他社は同じ業界で競い合う仲間”という言葉にインスパイアされました。
素敵な言葉だと思います。
・・・ありがとう!
よし、続きは明日だ。
皆、明日のミーティングもよろしく!
はい!
そうして、この日の全体ミーティングは終わった。
ソファーで一息つく松尾の背後で声がした。
声の主はボーン・片桐だった。
まあな。
皆がこの危機を乗り越えるべく、日毎に思考の精度を上げてくれている。
「自分たちが頑張る姿の見える化」・・・か。
シンプルだが、情緒的価値を伝えるには良いアイデアだ。
ボーンに褒められるのは、不思議な感覚だな。
・・・フッ。
ところで、お前自身も、自分のがんばりを見える化しなくてもいいのか?
え?
お前にヒントをくれた森下に、お礼の連絡をしておくんだな。
ボーンはそう言うと姿を消した。
(たしかに・・・。
2日前の森下さんとのやりとりが、自分たちの価値を伝えていく上での大きなヒントとなった。
ちょうどイベントの打ち合わせもあるし、森下さんに連絡して、お礼を伝えておこう)
・・・なるほどね。
プロセスを見える化することで、情緒的価値を発信することにしたというわけか。
はい。
前回聞かせていただいた話が、大きな気付きになりました。
とくに“なかの人の表情が見える”という言葉は全身に電流が走ったかのようでした。
えらく大袈裟だな・・・。
まあでも、少しでもお役に立てたのなら何より。
・・・。
?
松尾くん、もしよければなんだけど・・・。
このあとZoomで、うちのマーケターの山田さんと話してもらえないかな。
僕が先に山田さんに話をしておくから、松尾くんは山田さんとZoomで話ししてもらうだけで大丈夫。
??
山田さんというと・・・。
ああ、「ホームページを作る人のネタ帳」のブロガーでもある山田さんだよ。
山田さん、ご無沙汰しています!
松尾さん、お久しぶりですね。
実は松尾は山田と面識があった。
山田は「ホームページを作る人のネタ帳」のブロガーでもあり、「アルファブロガーアワード2008」にも選ばれるなど、ブロガー界隈で多くのファンを抱える人物。
松尾もファンのひとりだった。
当時、松尾はTwitterを介して山田と交流しており、山田からはブログの企画として取材を受けたこともあった。
その山田は今、KDDIウェブコミュニケーションズにて、CPIサーバーのマーケティング担当に就き、ブロガーとしてだけでなく企業人としても多忙な日々を送っていた。
山田さんがKWCさんに転職されたと聞いて、驚きました。
こうして久々にお会いできてうれしいです。
いやー、本当に久々ですね。
最後にお会いしたのは、7年前のセミナーだったかな。
たしかに・・・!
対面では7年ぶりに再会ですね・・・!
まあ、このご時世なので、Zoom上での再会にはなってしまいましたが。
どこも新型コロナウイルスで大変ですよね。
僕がいる北海道も予断を許さぬ状況が続いています。
そうですよね・・・。
山田さんって今、CPIサーバーさんのマーケティングを担当されているんですね。
森下さんから聞きました。
そうなんです。
レンタルサーバーのマーケティングって奥が深くて、日々、試行錯誤している状態です。
いやー、本当、マーケティングは奥が深い。
そう言いながら、山田は笑った。
・・・実は松尾さんと話したかったのは理由があって。
松尾さん、今、自社サイトのリニューアルを進めてらっしゃるんですよね?
あ、はい。
このコロナ禍の影響からか、実は受託案件の売上げが少し下がりつつあって・・・。
ただ、このピンチをチャンスと捉えて、本腰を入れて自社サイトをリニューアルしようと動いています。
いいですね!
うーん、そのサイトリニューアルの過程、見てみたいな。
うちのサイトリニューアルの過程・・・?
はい。
ここからは唐突な提案になるんですが・・・。
よかったら、CPIのサイト内で、ウェブライダーさんのサイトリニューアルの過程をコンテンツとして連載してみませんか?
うちのサイトリニューアルの過程をコンテンツに・・・!?
松尾は山田からの不意打ち的な提案に驚いた。
はい。
きっと、サイトリニューアルを検討している方々の参考になると思います。
松尾さんは「沈黙シリーズ」をうちで連載していたからわかると思うんですが、CPIって、レンタルサーバーを提供しているように見えて、実は「お客さまのビジネスを支援する」ということを大切にしているんですね。
レンタルサーバーは、あくまでもお客さまのビジネスを守るための砦。
うちでは、レンタルサーバーの提供だけでなく、お客さまのビジネスの助けとなるような情報も発信していきたいと思っているんです。
でも、実はうちが自社サイトで借りているサーバーって、CPIさんじゃないんです。
古くからのサイトなので、昔に借りた他社サーバーを使い続けていて。
うちが運営している別のサイトはCPIさんを使わせていただいていますが・・・。
自社サイトのサーバーの乗り換えは厳しいかもしれません。
全然大丈夫です。
うちに義理立てて、乗り換えをしてほしくて提案をしているわけではないので。
もし、サイトリニューアルの過程で、うちに乗り換えていただくことが運用的にベスト・・・というふうに判断されたのなら、乗り換えていただいてもいいですが。
とにかく、僕が考えているのは、ウェブライダーさんのサイトリニューアルの過程そのものを、コンテンツとして発信させてほしいということなんです。
プロセスには価値がある。
こんなにワクワクするコンテンツが生まれそうなタイミングを逃したくない。
(“プロセスには価値がある”・・・!
山田さんもうちと同じことを考えている)
・・・わかりました。
自分たちの自社サイトのリニューアルの過程を公開するというのは、なにぶん初めておこなうアプローチなので、正直、どこまでのノウハウを発信できるかわかりません。
ただ、だんだんとクリエイティブ熱が高まってきました。
ぜひ、そのコンテンツ、つくらせてください。
いいですね!
・・・そうだ、そのコンテンツの中で、僕と松尾さんとのこのやりとりなんかも登場するとおもしろそうですね。
うちで連載していただく以上、「なぜCPIのサイトで連載することになったのか?」という理由も添えていただけると、読者の方も変な誤解をせずに、コンテンツを楽しんでくれるでしょうから。
なるほどです。
ぜひそのアイデアはコンテンツに採り入れたいです。
・・・では一旦、うちのメンバーにもこの話を共有してみて、リソースに問題ないかを確認しておきます。
詳細は、その確認がとれたあとにご相談させてください。
わかりました。
いい返事待ってます。
それでは!
そう言いながら、山田はZoomのルームを抜けた。
自分たちのサイトリニューアルの過程をコンテンツにする・・・!
まさに、皆で話した「プロセスの見える化」が動き始めた!
“伝え方の「気づき」を生み出す存在”となれるよう、がんばるぞ!
チームとしての価値を伝えるため、自社のブランド、そしてビジョン・ミッション・バリュー、さらにはパーパスと向き合ったウェブライダーのメンバーたち。
その姿勢が“プロセスを見せる”というアイデアを引き寄せた。
プロセスに宿るであろう「情緒的価値」と「機能的価値」。
果たして、ウェブライダーの面々は、どんな形でそれらの価値を見せるのか?
プロセスという名の、時空をまたぐ価値提案の物語が幕を開ける!
次回、大改善!劇的Webリニューアル
第四話「余白をつくれ!要件定義は二度輝く」
・・・ウェブライダーは、何かが変わり始めているようだな。