では、昨日のミーティングの続きをしよう。
今日はいよいよ、サイトリニューアルの方針策定、すなわち「要件定義」の日だ。
サイトの「要件定義」とは、そのサイト制作を成功させるために、具体的な運用方針を決めたり、必要な要素を洗い出したりすることである。
たとえば、どういうサイト構成でどんなページをつくるかや、運用体制やインフラ環境はどうするかを整理していく。
そしてさらには、スケジュールや予算を決め、具体的な作業に着手できるような準備をおこなう。
この日の会議室に集まったメンバーは、心なしか、いつもより頼もしい表情をしていた。
いくつものミーティングを経て、数々の思考を言語化し、ようやくサイトの「要件定義」が始まる。
それはいよいよリニューアルの作業が本格的に始まることを意味していた。
今日を迎えるまでに、本当にたくさんの言語化を重ねてきた。
これでようやく、リニューアルの作業に着手できるところまできた。
今日の「要件定義」はその第一歩だ。
すぐに「要件定義」に入っていきたいところだけど、今日も事前に話したいことがある。
それは昨日も話した「価値の伝え方」の話の続きだ。
今日もスライドを用意してきたから、そのスライドを見ながら、まずは僕の話を聞いてほしい。
松尾はそう言うと、スライドを画面に映し、話し始めた。
前回、僕たちは「マーケティング課題の洗い出し」の中で、「自分たちのソリューションが提供できる価値」について話し合った。
今日は、「その価値をどのようにして伝えていくか?」といったマーケティングの施策について掘り下げていく。
そのあとで、いよいよ「要件定義」の話だ。
価値を伝える上で大切なのは、ソリューションの中にある価値を「見える化」し、お客さまがその価値に気付ける状態をつくることだ。
昨日のおさらいにはなるけれど、価値には大きく分けてふたつの価値がある。
「機能的価値」と「情緒的価値」だ。
私たちは、商品のスペックや使いやすさといった「機能的価値」だけで商品を選ぶのではなく、相手の振る舞いや印象といった「情緒的価値」も評価して行動しているというお話でしたね。
そうだね。
人は理性だけでなく、感情でも動く。
だから自分たちが思っている以上に、人は「情緒的価値」を大切にしているんだ。
そしてマーケティングにおいては、これらの価値をいかにして上手く伝えられるかがカギとなる。
そのために、次のようなメソッドを意識しておく必要があるんだ。
■価値を伝えるメソッド
1.機能的価値
- どんな効果(成果)が得られるか、具体的に伝える
- どんなプロセス(過程)を経るか、具体的に伝える
- 論理的に説明できるものは、できるかぎり論理的に説明する
- シンプルでムダのない表現を意識する
- 見やすさ、わかりやすさを意識する
- 数値化できるものは、数値化する
- グラフや図表を用いる
- 実績や事例を見せる
- メリットだけでなく、デメリットや注意点を書く
2.情緒的価値
- サイトに掲載する言葉や文章を、法人格の人柄に沿ったものにする
- SNSやメールなど、社外コミュニケーションで使う言葉を、法人格の人柄に沿ったものにする
- 写真や画像は、法人格のイメージを崩さないように意識する
- 会社の価値観や哲学を伝える
- 第三者(お客さま・競合他社など)からの評価を見せる
たとえば、僕たちが提供するソリューション「オウンドメディア改善のコンサルティング」のケースを考えてみよう。
このソリューションに先ほどのメソッドを用いれば、次のような伝え方になる。
■オウンドメディア改善のコンサルティングの場合
■ソリューションの詳細
- 検索結果でより高順位に表示されるためのリライトのアドバイス
- 記事経由のホワイトペーパーの申し込み数を上げるアドバイス
- SNSでの反応率を上げるためのリライトのアドバイス
- 情報の質量を高めるための切り口の見つけ方のアドバイス
- オウンドメディア全体の技術的なSEOアドバイス
1.「機能的価値」につながること
- 成果が上がる
- 専門的な知識・技術力がある
- 最新のノウハウに詳しい
- 高い論理的思考力・分析力がある
- わかりやすく説明してくれる
- ていねいに説明してくれる
- フットワークが軽い
●見える化のためのアクション
- どれだけ成果が上がったかを見てもらう(事例を見せる)
- 実際のアドバイスが書かれた資料を見せる
- 実際のアドバイスの風景を動画で見せる
- アドバイスを疑似体験してもらう体験会を開催する
- 他社の記事を独自に改善し、その流れを見せる
(※ただし、他社の許可なく公開する行為には注意) - 専門的な知識や技術力の高さの伝わるコンテンツを出す
- できるだけ詳細に、分かりやすく言語化して伝える
- どんなアドバイスをどんな口調で話すかを動画で見せる
- どんなホスピタリティを大切にしているかを伝える
- 仕事で生まれたポジティブなエピソードを伝える
(自社メンバーからの声、お客さまからの声)
2.「情緒的価値」の担保に必要なこと
- 信頼できる
- 良い関係が構築できる
- 関係者各位の士気が上がる
●見える化のためのアクション
- 「お客さまの声」を見せる
- お客さまとの良好な関係を示すエピソードを伝える
- 同業他社からの「推薦の声」を見せる
- 自分たちの頑張りを伝えるエピソードを伝える
- 担当者の人となりが伝わるエピソードを伝える
- 関係者各位の士気が上がったエピソードを伝える
こんなに具体的なアクションに落とし込めるんですね・・・!
そうだね。
ちなみにこのメソッドは、次の6つの手段をベースにつくったものなんだ。
・・・想像してもらう、察してもらう・・・。
良い言葉に注目したね。
この「想像してもらう」と「察してもらう」というふたつの手段も、「見える化」においては大事。
なぜなら、僕たちは過去の体験記憶や前提知識などを用いて、「この機能はこう使うんだろうな」「この会社が伝えたいのは、こういうことなんだろうな」といった想像ができるから。
僕たちにはみんな「想像力」があるんだ。
つまり、お客さまの「想像力」を意識した上で、価値を伝えていくといいということですね。
まさにその通り。
価値を伝える際は、相手の想像力に配慮しておく。
情報を詳細に伝えることは大事だけれど、人は大量の情報を同時には受けきれない。
だから、全部言わなくても伝わりそうな情報は、相手の想像力に任せたほうがいい場合もあるんだ。
ただ、そのためには、相手がどんな前提知識をもっていて、どう想像するかといった予測も必要になる。
それは、相手の頭の中や心の中を想像することでもある。
それが結果的に、相手への寄り添いに変わる。
相手の想像力に配慮するということは、ある種の思いやりでもあるんだ。
自分たちの価値を見える化し、その価値を伝えるためには、そもそも、その価値を見つけてもらうことが大切だ。
ここからは、自分たちの価値を見つけてもらうための方法について話していく。
ちなみに、自分たちの価値を見つけてもらうためのマーケティングを、「インバウンドマーケティング」と呼ぶこともある。
「インバウンドマーケティング」とは、自分たちの商品・サービスに興味・関心をもってくれそうな人に向けて情報を発信し、見つけてもらうマーケティングのこと。
「inbound(外から中に入ってくる)」という言葉のとおり、お客さまが自ら興味・関心をもってくれることを軸に置いている。
「インバウンドマーケティング」には、いわゆる「コンテンツマーケティング」などが含まれ、同種の言葉に「プル型」のマーケティングという言葉がある。
このインバウンドマーケティングを考えていく上では、「自社のお客さまはどこにいるのか?」、すなわち「どこでどう情報収集しているか?」を考えることが大事だ。
お客さまの行動を考える際には、ペルソナを考えた上で、「カスタマージャーニーマップ」というものをつくる方法がある。
「カスタマージャーニーマップ」についてはあとで詳しく説明するので、ここでは、カンタンに使える“あるフレームワーク”を紹介しておくね。
“あるフレームワーク”・・・?
そう。
それは、「6W2H」の行動分析フレームワークだ。
「6W2H」。
「Who」「What」「Why」「Whom」「When」「Where」「How」「How much」という疑問詞の頭文字をとった言葉ですね。
■6W2Hの行動分析フレームワーク
- 1.Who(誰が?)
- ある企業のオウンドメディアの編集長が
- 2.What(何を求めて?)
- 記事のブラッシュアップのアドバイスを求めて
- 3.Why(どういう理由で?)
- 検索順位が落ちてしまい、記事をどうブラッシュアップすればいいかわからないため
- 4.Whom(誰のために?)
- 自社の抱えるライターさんのために
- 5.When(いつ?)
- 検索結果の順位が変動したタイミングで
- 6.Where(どこで?)
- Google検索で
- 7.How(どのようにして?)
- コンテンツマーケティング関連のノウハウを発信している企業のブログなどで情報収集して
- 8.How much(いくらくらいの予算で?)
- 10万円くらいで想定しているが、大きな効果が見込めるのなら、多少予算オーバーしてもよい
このフレームワークを用いるだけで、お客さまがどう行動されるかが見えてきますね。
まさにそうなんだ。
そして、このフレームワークは、疑問詞をさらに深掘りすることで、さらに精度の高い気付きが得られる。
たとえば、「Where」という疑問詞を掘り下げてみよう。
お客さまとの接点となる「場所」については、こんなにたくさんの「場所」があることがわかる。
そして、これらの「場所」のうち、とくに大事なのが「他社」起点での接点なんだ。
「他社」起点での接点、まさに前回のミーティングで私が気付いたことでした。
他社起点での露出は、客観性と権威性が上乗せされる。
お客さまの声とはまた違った、信頼性が宿る。
マーケティングにおいては、自社のみの行動で完結するのではなく、他社との連携も視野に入れるとよいと考えていました。
ありがとう、達川さん。
とても大事な視点だと思う。
前回、達川さんが気に入ってくれたフレーズを、あらためてスライドの中でも取り上げてみたよ。
いいですね。
「競合他社は同じ業界で競い合う仲間」というフレーズは、マーケティングを拡張する上でのカギとなると感じています。
競合他社は「敵」ではなく「仲間」なんですよね。
一緒に業界を盛り上げていくパートナーでもある、と。
そうだね。
もちろん、他社さんの中には、うちとは価値観が合わないようなケースもあるかもしれない。
ただ、その会社さんと価値観やサービスの方向性が違ったとしても、お客さまのために一生懸命頑張っているのであれば、「お客さまのことを大切にしたい」という根底での価値観は僕たちと合っているも同然。
そういう会社さんと連携すると、業界を健全に盛り上げるきっかけが作れるし、何より、うちにとっても大きな学びとなる。
だから積極的に交流したいと思う。
他社との交流と一口にいっても、次のようにさまざまな形がある。
うちはこれまで他社と積極的に交流してこなかったので、今回のサイトリニューアルを機に自ら交流してゆければなと考えてる。
ぜひ、交流しましょう。
ちなみに、私としては、「他社の紹介を自社のブログでおこなう」というアプローチがいいのではと考えています。
他社の紹介を、うちのブログで・・・?
はい。
うちのブログで、「この会社さん、素敵だな」と思った会社さんを紹介していくんです。
打算的に考えず、難しいことを考えず、自社のお客さまにぜひ知ってもらいたい、うちの価値観と近い会社さんを取り上げていく。
その記事が増えてゆけば、ウェブライダーという会社からひとつのソーシャルグラフが生まれ、今までにない素敵な縁が広がっていくと思っています。
とても良い案だと思います。
僕だけでなく、メンバー各人からも「こんな会社さんを紹介したい!」という意見を募り、皆の希望が強かった会社さんにコンタクトしていきたいですね。
ぜひ別途相談させてください。
はい!
では、「6W2H」の話に戻ろう。
先ほどは「Where」という疑問詞を掘り下げて、お客さまとの接点に関する視点を共有した。
続いては、お客さまがどのようにして情報を取得するかの「How」、すなわち情報取得手段について掘り下げていこう。
「How」を深く掘り下げると、「Googleで検索」するにしても、どのような類いのワードで検索をするかが見えてきたり、「知人に相談」するにしても、どのような知人に相談するかが見えてきたりする。
こういった「How」すなわち情報取得手段に気付けば、マーケティングにおいては、以下のようなアプローチを検討するとよいことがわかる。
ここで、SNS運用に関する話をさせてほしい。
前回のミーティングで、僕たちは「チームとしての頑張る姿」を発信し続け、それによってチームとしてのプレゼンス(存在感)を高めていこうと話した。
その上で僕は、続けられる情報発信手段とは何なのかを考えてみた。
それが次のスライドだ。
SNS活用、ブログ活用、YouTube・・・。
もちろん、みんなが多忙な中、これだけたくさんのアプローチを続けていくことは現実的に難しいだろう。
だからこそ、僕がまず注目したのがSNSだった。
ズバリ言うよ。
僕たちは、僕たちのチームとしての価値を伝えるため、社内メンバーの頑張りや活躍を個々人が見つけ、発信していくことを大切にしていきたい。
“社内メンバーの頑張りや活躍を個々人が見つけ、発信していく・・・!”
そう。
たとえば、ウェブライダーのメンバーの中でも、僕や赤木さんはSNSの運用を比較的おこなっていると思うんだ。
僕や赤木さんが、次のようなツイートをするイメージだ。
もちろん、ほかのメンバーも、SNSで協力してもらえそうなら、協力してほしいし、SNSでの発信でなくてもいい。
大事なことはシンプルで、“社内メンバーの頑張りや活躍を個々人が見つけ、発信していく”ことなんだ。
その活動を見える化してゆけば、僕たちのチームとしての価値はもちろん、僕たちのブランドも、よりプレゼンス(存在感)を増していく。
チームメンバーが、チームのメンバーの価値を一貫して伝え続ける・・・。
その一人ひとりの行動が線となり、その線が重なり合って、面をつくる。
とても良い案だと思いました!
僕はこれまで経営者でありながら、チームの姿をほとんど発信してこれなかった。
お恥ずかしながら、今回、みんなで言語化するまで、その行動の大切さに気付いていなかったんだ。
それが結果的に、ウェブライダーというチームのプレゼンス(存在感)を小さなものにしてしまった。
これだけ魅力的なメンバーが揃っているチームなのに、僕が発信を怠ったことで、今のような事態になってしまった。
・・・松尾さんだけのせいではないです。
私も広報として、チームに関する発信が足りなかったと思っています。
とはいえ、情報発信は固定されたメンバーだけがしないといけないわけでもない。
ブランドとしての振る舞いが明確に定義されていて、それが社内に浸透されているのなら、誰とは限定せず、皆でチームの価値を発信していけるといいかなと思った。
私もそう思います。
私はSNSで毎日発信しているわけではないですが、私も微力ながら、自分のTwitterやFacebookのアカウントで、皆の頑張りや活躍を取り上げていきたいです。
私も意識します。
みんな、ありがとう!
では、いよいよ自社サイトの細かな要件を決めていこう。
今の自分たちのサイトがより良く生まれ変われるかどうかは、ここで定義する要件が成否を決める。
2020年10月5日以前のウェブライダーの古い会社サイトを見る
(※2020年11月24日時点のサイトは、10月6日に少しだけリニューアルされています)
B to Bを意識した自社サイトのリニューアルでは、次の視点をもっておかなければいけない。
たしかに稟議の過程では、その商品やサービスを提供している会社のことを必ず調べますね。
そうなんだ。
そして、B to Bにおける発注に至るプロセス(過程)をわかりやすく整理した図がこれだ。
この図をもとにして、お客さまが何を求め、どんな場所でどう行動するかを細かく考えてゆけば、マーケティングのプランの精度は上がる。
そこで今回は、広江さん、達川さん、伊藤さん、赤木さんの4人に協力をお願いして、「カスタマージャーニーマップ」もしっかりとつくった。
「カスタマージャーニーマップ」とは、顧客が商品やサービスを知ってから購買に至るまでの、「行動」「思考」「感情」などの変化のプロセス(過程)を「旅」にたとえ、1枚のフレームワークにまとめたものである。
なんだか、私たちの自社案件でも、こんなに細かなカスタマージャーニーマップをつくれていることが感慨深いです。
ははは、そうだね。
僕と伊藤さんは、お客さまのコンサルティングの現場ではカスタマージャーニーマップをつくることが多いけれど、自社の案件では、なかなか時間がとれなくて簡易的なものしかつくってこれなかったよね。
でも、今回は本腰を入れてのリニューアル。
だからしっかり取り組んでみた。
では続けよう。
続いて共有したいのが「KPIツリー」だ。
成果を生み出すには、マイルストーン的な「中間目標」を掲げることが大事。
今回のサイトリニューアルでは、細かくKPIを準備しておく。
「KPI(Key Performance Indicator)」とは、「重要業績評価指標」のことで、最終目標に到達するまでの中間目標を指す。
「KGI(Key Goal Indicator)」とは、「重要目標達成指標」のことで、いわゆる「最終目標」を指す。
これらを踏まえて、今回つくるべきサイトの構成をまとめてみた。
これが今回の「サイトマップ」だ。
そして、このサイトマップ内でつくる各ページで意識すべきことは、「そのソリューションを選ぶべき理由」と「その会社を選ぶべき理由」をできるだけ伝えること。
・・・あの・・・。
そのとき、ディレクターの藤原が不安そうな声で言葉を挟んだ。
藤原はもともと美容業界で働いていたが、今年の5月にWeb業界に転身、ウェブライダーに入社。
怒涛の速度でWebの技術を習得し、今は「クマレル」というサイトの担当として、制作や企画、マーケティングなどを手掛けている。
藤原さん、どうしたの?
私、Webサイト制作についてはまだ勉強中の身で恐縮なんですが、これだけたくさんのページを短期間でつくれるのかなと心配になって・・・。
以前のサイトリニューアルがうまくいかなかった理由に、皆さんのリソースが足りなかった事情があると聞いていて・・・。
そういうことを考えていたら、少し心配になってしまいました・・・。
盛り上がりに水を差すような形ですみません・・・。
なるほどね・・・。
ナイスな指摘だと思う。
藤原さん、大丈夫だ、問題ない。
ひとまず、ここからのスライドを見ながら、僕の話を聞いてもらえるかな。
きっと、藤原さんだけでなく、みんなにも安心してもらえると思う。
今から話すのは、今回のサイトリニューアルのルールについてだ。
“70%の完成度でも良しとする”・・!?
そう、今回のリニューアルにおいては、使えるリソースや時間が限られている。
サイトの100%の出来を目指していたら、藤原さんが心配しているように、以前のような事態に陥ってしまう。
だから、「出るとこ出る、引くとこ引く」作戦でいこうと思う。
さらには、70%の完成度で公開するからこそ、ブラッシュアップを続けて軌道修正ができるというメリットもあるんだ。
システムや予算はコロコロ変えるべきじゃないけれど、こういった要件定義で決めたコンセプトや仮説は、正しいかどうか何度も見直すべきなんだ。
30%の余白があるからこそ、何度も要件定義に立ち戻れる。
そもそも、Webサイトに「完成」の2文字はない。
更新はサイト公開後もずっと続いていく。
また、以下の方法でコンテンツをつくってゆけば、制作の工数もかなり減らせるはず。
なるほど、コンテンツにおいても「サマライズコンテンツ」を用いるんですね!
サマライズコンテンツ・・・?
「サマライズコンテンツ」とは僕たちの造語で、“要約されたコンテンツ”を指す。
たとえば、「クマレル」のティザーサイトをつくったとき、縦にスライドをズラーっと並べたよね。
あれがまさに「サマライズコンテンツ」のひとつの形だ。
こんなふうにスライドを縦にズラーっと並べる方法もあれば、間にテキストを入れ、スライドとスライドの間の文脈をしっかり言葉で補足するパターンもある。
たとえば、うちがビズリーチさんで書かせていただいた記事や、うちが運営している「Betters」内の一部の記事や「素敵なギフト」内の一部の記事なんかはそうしている。
で、このサマライズコンテンツは、プレゼンテーション動画をもとにつくることもできるから、動画制作とセットにして制作を進められるという利点もある。
動画だと、その担当者の「人となり」なども伝わりやすく、情緒的価値の訴求には有効だ。
そんな利点があるんですね・・・!
ちなみに、藤原さん、気付いていた?
今回のサイトリニューアルのプロジェクトが始まった3週間後に、実はうちの会社サイトがミニリニューアルされているってこと。
えっ!?
ミニリニューアル!?
そう、現時点でのうちの自社サイトは、サマライズ型のLPになっているの。
受託案件の引き合いが減っていたことを危惧していた松尾さんが、10月6日に、取り急ぎのミニリニューアルとしてつくったサイト。
気付いていませんでした・・・!!
本当ですね!
サマライズコンテンツになっています!
今回、松尾さんが自社サイトをサマライズ型のLPにしたことでわかったことがありますね。
ああ、そうだね。
サマライズであっても、情報をしっかり出せば、ソリューションの価値は伝えられる。
現に、このサマライズ型のLPに変えてから、徐々に受託案件の件数は戻ってきています。
以前のサイトだと、情報そのものの質量が悲劇的に少なかったからね。
ビジュアルもどこか軽い印象があったし。
今のミニリニューアルはサマライズという形ではあるけれど、掲載されている情報の質量は以前のサイトよりも多い。
それが結果的に自社のソリューションの価値を今まで以上に伝えられることにつながり、受託案件の回復へとつながっていったんだと思う。
ただし、このサマライズ型のLPはあくまでも暫定的な形。
サマライズという見せ方自体は悪くないけれど、今回つくるサイトは、あくまでもテキストベースで情報をしっかりと出しつつ、要所要所でサマライズを意識していこうと思ってる。
とはいえ、リソースの状況によっては、暫定的にサマライズコンテンツの形式をとるページも増えてくるとは思うけれど。
サマライズにはサマライズの良さがあるし、いわゆる通常のページには通常のページの良さがある。
わかりました。
続けて、皆と相談したいことがある。
とくにエンジニアの宮本さんと広江さんに聞きたい。
それは、更新しやすいサイト設計についてだ。
今回のサイトリニューアルに伴い、僕は以下のようなシステム要件を考えてる。
宮本さん、広江さん、どうだろうか?
そうですね・・・。
この仕様だと、うちが借りているサーバーは10年前に契約したものなので不安ですね。
あと、テストサーバーと本番サーバーの連携が可能な環境を構築するには特殊な契約が必要になります。
なるほど。
ちなみに、テストサーバーと本番サーバーを分けたいのは、今回のリニューアルでは、外部のデザイナーさんたちと連携しながら作業したい事情があるからなんだ。
今回だけじゃない、今後も社内のリソースが厳しい状況がたくさん出てくると思う。
そんなとき、外部のメンバーと効率よく作業を進めていくためには、手軽に用意できるテスト環境が欲しいところ。
あとは万が一、テスト環境のデータがおかしくなった際、バックアップの履歴からすぐにリカバリーできるようにしたいので、バックアップ機能も欲しい。
バックアップといえば・・・。
実は今、バックアップファイルをローカル経由で外部ストレージにアップするなどの手間がかかっていて、しかもバックアップタイミングが手動なんです。
だから、松尾さんが書かれているとおり、これを機に自動化したいです。
だったら、サーバーを乗り換えるしかないですね・・・。
じゃあ・・・。
せっかくだし、CPIサーバーってどうだろう?
CPIさんですか?
たしかにありかも。
うちは今も専用サーバーを借りていますが、今回はCPIさんの共用サーバーがいいと思います。
テストと本番環境との連携が「SmartRelease(スマートリリース)」っていう独自機能で対応できるはず。
ただ、今借りているサーバーより、ちょっと値段は上がりますが。
値段は上がりますが、松尾さんが求める要件はすべて満たしています。
なので、結果的に安くつきます。
おお、たしかに・・・!
・・・ただ・・・。
ただ?
実は今回、うちのサイトリニューアルの過程をCPIさんのサイトで連載させていただくコンテンツが始まりそうなんだけど、そのコンテンツの中で、CPIさんに乗り換えるという展開はあまりにも予定調和っぽく見えないだろうかと思って・・・。
えー!!?
そんなコンテンツを連載することになったんですか!?
この今の会話も載るってことですか!?
まあ、この会話が載るかどうかはさておき・・・。
まだ企画段階なんだけど、せっかくつくるのなら、今までにないようなコンテンツにしたいと思ってる。
うちの社内のディスカッションの細かな言葉のやり取りなんかも載せられたらおもしろそうだとは思っている。
たしかにおもしろそう。
自分たちもそのコンテンツを通じて、今回のリニューアルの流れを振り返れますし、何より、うちのお客さんにも見てもらいたい。
広江さん、ありがとう。
ただ、さっきも言ったとおり、今回のリニューアルでCPIさんに乗り換えるという流れは果たしてどう映るのだろうか・・・と。
そうですね・・・。
けど、そんなの気にする必要ないじゃないですか。
今回の要件にCPIサーバーの仕様は合っていますし。
CPIサーバーの特長というか、ユーザーにとって便利な機能について語れると思います。
もちろん、各会社やユーザーの要件によっては、他社サーバーがいい場合もありますが、うちのような会社サイトを運用する上では参考になると思いますよ。
宮本さんの意見はどう?
はい。
システム要件上、移行すべきメリットは明白なので、何も問題はないかと。
な、なるほど。
このご時世、誰にどうツッコまれるかわからないから、つい色々考えすぎてしまうなあ・・・。
でも、ふたりの言うとおり、CPIさんのサーバーに乗り換えよう。
宮本さん、乗り換えの準備を進めてもらえるかな?
了解しました。
乗り換えで発生するタスクをまとめてみます。
ありがとう!
そうして、この日のミーティングは終わった。
リソースが・・・足りない・・・。
伊藤はプロジェクトのガントチャートを見ながら、思わずつぶやいた。
ついにサイトリニューアルの要件が決まった。
ウェブライダーにとって念願のリニューアルが今、幕を開ける。
果たして彼らは、少ないリソースの中で、自分たちが理想とするサイトリニューアルを無事成し遂げることができるのか・・・!?
次回、大改善!劇的Webリニューアル
第五話「優先事項を決めよ!サイト制作の行方」